11月16日、イブ・ゲナ前憲法院総裁。憲法院は、3権の上に位置すると言われる機関で、83歳のゲナ氏も、数次の閣僚経験を有し、今も、アラブ研究所理事長として現役で活躍。rn憲法院は、各般の国政選挙を含め、選挙についての異議申し立てを受け付ける。ただ、そのときの判断は、オーストリアでも同様だったが、「不正行為があった場合、それが結果に決定的影響を及ぼすか否か」というもの。rnそして、技術的部分の憲法改正については、歴史を踏まえた「バランス感覚」の問題として、「議会でやればよい」という立場。rn私にとっては、本日が最後のアポ。翌17日には、帰国の途についた。rn総じて、国民投票制度の技術的な側面は勿論、「民主主義とは何か」という、哲学的な問題についても考えさせられる旅だった。rnそして、「憲法改正国民投票制度」は、わが国にとって、歴史上初めて、「直接民主制導入」を行うものということができ、独立の問題としても、大変大きな政治的課題となり得るということを痛感した。
11月16日、ウィヨン・フランス下院法務委員長。rnブルジョア民主革命発祥の地フランスは、もともと議会の国。「右翼」、「左翼」という言い方も、もともとフランス議会の議席配置から発した。rnフランスにおける国民投票は、このように、「男性を女性にすること以外何でもできる」と言われた議会に対抗するため、時の権力者(ナポレオン3世、ドゴールら)が利用してきた節もある。rnこのため、第3・第4共和制時は、国民投票は、憲法改正の場合のみに限定されていたという。rn手続法と政党間の協議のルールをしっかりと定めておくことの必要性を痛感した。
11月15日、ゴンザレス政権の副首相を長く務め、また、1978年憲法の制定にも参画した「歴史上の人物」でもある、ゲラ・下院憲法委員長。まあ、スペイン政界のご意見番といったところか。rnNATO残留を決めた国民投票(1986)でも、与党の運動を指揮、投票前の圧倒的不利(離脱)の予想をひっくり返すなど、いかにも修羅場で剛腕を発揮してきた印象。rn1978年憲法で、上院を地方の代表と規定、諮問的国民投票を行うか否か、海外派兵を行うか否かの国会承認を下院のみで足りる(両院の意見が異なっては困るため)とした制度設計にも深く関与したとのこと。rn他の識者と異なり、「政治家」としての意見を聴くことができ、大きなインスピレーションを得た。rn
11月14日、1500人の職員を擁する欧州最大の弁護士法人の総帥・ガリーゲス西日財団理事長。勿論、本人も高名な法律家。rn国民投票は、北米的なキャンペーン合戦にすべきでないという認識がベースにある。rnそして、「民主主義は、全ての国民の一致ではない。意見の違いがあっても共存する制度である。」ということをベースに、国民投票の過程においては、できるだけコンセンサスを広げる努力をしていくことが大切で、政党間協議や各種団体におけるディベートを重視する立場。rn総じて、スペインにおいては、他の識者も含め、rn○ 1930年代の内戦の悪夢が、話し合いを重視するという教訓となっていることrn○ フランコ独裁政権の経験が、国民投票を独裁者の道具としてはならないという意識につながっていることrnがあるのかな。という印象だ。rn
11月14日、スペイン下院議長表敬を申し込んでいたが、議長が出張中、代わりにアポをとった副議長は予算審議の本会議が延びて会議場を出られず、副議長補佐(国会議員)と面談。rnスペインも、女性第1子による王位継承を認めるため、憲法改正(国王に関する改正は国民投票を伴う)の必要に迫られている。rnそのためにも、主要政党による議会内のコンセンサスと、国民に対する意識の醸成が必要という発言があった。rn特に、国王に関する憲法改正に係る国民投票の投票率が余り低くなると、王政の正統性に問題を生じかねないため、国民意識の高揚が必要という発言には、なるほどと思った。
11月14日、週末にスイスからスペインに移動し、いよいよ第2週目の調査開始。rn上院のシンクタンクである政治憲法研究所のフンコ所長。rnスペインでは、議席数に応じ、政党に対してTVのスペースが割り当てられる由。また、フランコ政権時代も国民投票は行われており、78年憲法も、当時の国民投票法に基づき実施されたという。rnまた、国民投票については、「重要ではあるがあらゆる問題の解決にはつながらない」ものであり、「複雑な政治課題を簡単な問にして聞くことは、投票結果を操作できる可能性もある」ため、「議会における主要政党間の合意こそ重要」との指摘が印象に残った。
11月11日、国民投票法制の「世界的権威」であるリンダー教授の「講義」を受ける。rnそもそも今回の2週間にわたる調査、何か大学に再入学したかのようで、久しぶりにきちんとノートをとった。今日はその極めつけ。rn「国民投票が、独裁者に利用されたり、人気投票にならないようにするためにはどうしたらよいのか」という私の質問に対し、「国民に対する問いかけの仕方の問題だ。(国会が国民投票の必要性を判断するにしても、)国民投票に付す案件は、国民自身の問題意識から出たものでなければならない。」けだし至言と思った。
11月11日、ホッツ内閣府長官と会談。rn彼女は、日本で言えば、衆議院事務総長を長く勤めた経歴の持ち主。rn話を聞いていると、「直接民主制」は、3つの民族と4つの公用語を持つ、「人工国家」=「スイス」という国のアイデンディティーそのものという印象を強く持った。
11月11日、スイス司法省で、マーダー局次長らから国民投票手続きの実務を聴く。rn放送メディアが中立でなければならないことは、スイスでは憲法に規定されており、これが、実定法上、出版メディアとの規制を異にしているという説明。もっとも、わが国でも、放送メディアについては放送法が、その公平性を規定しており、紙のメディアについては法律上明文の規定がないことを考えると、まあ理解できるという印象だった。rnいわゆる郵便投票については、数票から数百票の不正は、言葉は悪いが折り込み済みという感じで、要は、結果に影響を及ぼさない程度の正確さをどう確保するかということに腐心しているようだった。
11月11日、チューリッヒからベルンに向かう高速のSAで、今月27日投票の国民投票運動ポスターを見かける。rn「遺伝子組み替え技術開発凍結」という案件(一般国民からの発議)に対し、「それは進歩ではない」と大書し、NOを呼びかけるもの。rnただ、投票日まで2週間以上あるせいか、また、国民投票に付された案件が比較的おとなしいせいか、国民投票運動ポスターは、注意しなければ目に付かないという感じだった。rn