有権者の問いかけにどう応えるか~今後求められる「きめ細かで斬新な政治手法」
2014-12-12
12日間の衆議院議員総選挙の選挙運動期間も、早いもので12月13日が最終日で、14日には、国民の審判の結果が明らかになる。運動期間を通じ、私が体感的に感じたことは、多くの国民が、この2年間、少しは明るくなったと感じているものの、まだまだ実感にまでは至っておらず、個別の問題について、不安を抱えているということ。前回コラムに書いたコメ問題などは、その典型例だ。
私は、今後、個々の国民が感じている「心のとげ」を取り除く、「丁寧な政治」を実現していきたいと思う。
そこで、運動期間中、実際に聴いた声を素材に、私がこれまで考えてきたことと、今後やらなければならないことを書いてみた。○「消費税が上がるのは仕方がないけれど…」の声
ある駅で早朝の駅立ちをしていたら、主婦の方から、「応援していますが、やっぱり消費税は上がってしまうのですね。」と声をかけられた。
私は、「社会保障のためには仕方ないのですが、これから2年間、私たちは、しっかりと給料を上げる努力をします。」と答えた。
彼女は、「給料が上がれば消費税も仕方ないかなと思います。賃上げを頑張って。」と言って再び通勤の波に戻って行かれた。
短い会話ではあるが、これは、正鵠を得た議論だ。
昨年10月、日本労働組合総連合会は、2014年春闘の統一要求を、賃金ベースアップ1%、定期昇給維持と決定した。
当時私は、財務大臣政務官をしていたが、この決定については、かなりの違和感を持った。
何故なら、2013年4月、日銀の黒田総裁が、物価上昇率の目標値を2%に設定し、さらに2014年4月には、消費税が5%から8%になることが決まっていたわけで(非課税品目等もあり物価押し上げ効果は2%程度)、これを踏まえれば、4%のベア要求をしても当然なのに、なんと弱気な、と思ったからだ。
財務省の官僚も、当然表向きの話では言えないが、労組の消極姿勢にいささか違和感を持っていたようだ。
その後の政労使交渉で、むしろ政治の側が賃上げに熱心だったのはご案内の通りだ。ただ、要求側が弱気では、当然のことながらそれ相応の結果しか出ない。
結果、賞与のプラス分を勘案すると結果は異なるものの、2014年の基本給ベースの実質賃金は、消費増税の影響を差し引き、前年比実質マイナスとなった。
これが年度上半期の消費低迷の大きな要因だ。
もとより私は、本年度上半期の消費低迷を連合のせいにするつもりはない。
ただ、これからの政治は、企業(使用者)だけでなく、労働組合にも働きかけ、豊かさの実感を広げていかなければならない。これを来年、再来年と続けていけば、必ずや庶民の懐は潤うはずだ。
今、そういうきめ細かさが求められている。
○「都会の若者が農業で働くためには…」の声
都市部のスーパー前で街頭演説をしていたら、終了後、20代と思われる男性から、「1ついいでしょうか、若者に、働く場を作ってほしい。」と声をかけられた。
私が、「求人増に加え、正規雇用をもっと多くしましょう。」と応じると、彼は、「私は、本当は、会社員として農業をやってみたい。」と言う。
そこで、「しっかりした農地保全の措置を講じた上で、心に留めていきます。」と応じ、握手をして別れた。
実はこの問題、今すでにホットな話題となっている。
すなわち、農業を成長産業化するためには、経営体として、株式会社が主体となる方が、より利益を追求できることはある意味で当然だ。
しかし、株式会社の意思決定権は、株主(農業者以外?)が握っているため、その株主が「儲からない」と判断し、彼らが破綻したり撤退した場合、わが国の食糧安全保障に不可欠な「農地」が荒れ放題となる可能性も付きまとう。
このため今、株式会社が農業に参入する場合は、農業者の株式持分を半分以上にすべきではないかなどの議論があり、なかなか結論が出ない。
私は、本年夏、財政制度審議会の委員の方との懇談会の折、「持ち分比率も問題かもしれないが、例えば、金融機関破綻時の預金保険機構のように、進出企業の拠出により、農業に進出した株式会社が破綻ないし撤退した場合、農地の原状回復を行う機構を作るといった発想もあって良いのではないか。」と考えを述べ、多くの方から、「斬新で面白い発想」との評価して頂いた。
「成長産業としての農業」、「若者が飛び込みたくなる農業」を創ることは、わが国の将来にとって、喫緊の課題だ。そのためには、より斬新な発想を、現実の政策としていく努力が大切だ。
選挙戦での支持固めは勿論大切だが、今回の選挙運動では、今までの「風」が支配した選挙と比べ、多くの方から、より具体的な声を聴くことができたように思う。
私は、このような有権者の問いかけにしっかりと応えていかなければならないと思う。