「自民党でなければ何でも良い」がもたらした経済無策~新政権に求められる公平で総合的な景気対策

2012-12-2

週末の街頭活動を続ける

12月16日投開票の今回の総選挙は、大きく冷え込んでしまった我が国の経済をどのように再生させていくかということが、大きな争点となる。
リーマンショック後の世界同時恐慌や東日本大震災で大きく落ち込んだ我が国の経済は、麻生政権(当時)による経済対策や、東日本大震災後の復興需要により、数字の上で、本年上半期まで、プラス成長基調を示してきた。
しかし、本年後半、長引く円高や政府の経済無策の影響で、深刻な景気後退に直面している。
総選挙後の新政権には、これを打開するための思い切った景気対策が求められる。
私は、民主党政権による経済無策は、「自民党でなければ何でも良い」(エニシングバット自民党)の思い込みがもたらした面が多いのではないかと考えている。自民党政権当時、当時野党であった民主党は、その経済政策を、「政官業の癒着」をもたらすとして、厳しく糾弾した。
その主張をひっさげて政権についたため、いきおい、自民党が行ってきた景気対策を、踏襲することができなくなってしまった面があるのではないか。
そのことが、政策の自由度を狭くし、結果として、有効、かつ、総合的な景気対策を行うことができなかったのではないか。
これを、税制と財政政策の面から見てみたい。

景気対策として有効な時限的な税の特別措置

自民党政権時代、景気対策の中で、「租税特別措置」という手法がとられることが多かった。
これは、例えば、ある分野での投資や消費が落ち込んだとき、その分野についての税金を、3年や5年といったように、期間を限って減免しようというものだ。
このような措置により、減免期間中、より多くの消費や投資がなされることが期待され、緊急の景気対策として、大変有効な手法ということができるわけだ。
ただ、反面、「租税特別措置」は、結果としてある事業分野を優遇するという側面を持つし、また、税制の体系を、極めて複雑なものとすることも否めない。
野党時代の民主党は、この点を「政官業癒着」として攻撃した。
そして、政権をとってからも、景気対策としての「租税特別措置」には、余りに無関心すぎたように思う。
「税制」という有力な景気対策の手法を、自ら放棄するのは、現在の景気の状況を考えると、非常にもったいない選択だったと思う。

設備投資促進のために計画的財政出動が必要な場合も

自民党政権時代、道路整備や国土計画について、「5カ年計画」や「総合計画」といわれるものが策定されることが多かった。
これは、社会的インフラの整備についての計画を示し、その裏付けとなる財政措置を行っていこうというものだ。
もっとも、このような「計画」を作ることが、弊害を生んだことは、率直に認めなければならない。
かつて、「道路整備5カ年計画」の策定時、建設省の廊下は、地方自治体や業界団体の陳情団であふれていたという。
そして、 このような長期計画が、「財政の硬直化」を招いたことは、紛れもない事実だと思う。
野党時代の民主党は、この点を、「政官業の癒着の温床」として攻撃し、政権をとってからも、長期的な社会インフラ整備の絵姿を示すことに、極めて消極的だった(八ッ場ダムの一件での迷走ぶりを見れば一目瞭然)。
しかし、民間事業者の観点に立って言えば、公共発注について、もしかしたら来年はゼロになってしまうという不安定な状況の下では、例えば社員を増やそうとか、工場を作ろうとか、重機を買おうといった設備投資へのインセンティブはなかなか生まれてこない。
すなわち、もしも1年限りかも知れないとなれば、人手はアルバイトや派遣を充て、新たな設備投資もせず、材料は在庫を充てるということになりかねず、これでは景気回復につながるはずもない。
景気回復のためには、企業の設備投資が決定的に重要だ。
「計画的財政出動」という有力な景気対策の手法を自ら放棄することは、現在の景気の状況を考えると、極めてもったいないことだと思う。

ここまで述べてきたように、私は、自民党政権時代の経済政策に、決して弊害がなかったというつもりはない。
ただ、その弊害を除去するために必要なことは、民主党政権が行ってきたように、「租税特別措置」や「計画的財政出動」といった政策手法を排除するのということではないと思う。
そうではなくて、政治に携わる者が襟を正し、国民と共に悩み、苦しみ、その理解を得ながら、あらゆる政策手法を駆使していくことが大切なのではないかと、私は思う。