自民党は、「権力亡者」と同じ土俵に乗ることはない

2011-6-19

政治不信の声を開けとめ、私の考えを説明するところから議論が始まる

6月2日、衆議院で、菅内閣不信任案が否決された。
しかしその後、菅氏の「一定のメドがついたら若い世代に引き継ぐ。」という言葉の解釈を巡り、永田町の関心の焦点は、震災対応そっちのけで、「総理は何時辞めるのか」に移った感がある。
今、地域で多くの方の声を聞いていると、このような国会の有様に、「国会議員は何をやっているんだ」という怒りの声が、日に日に高まっていることを実感する。
そして、その矛先が、最近では、野党である自民党にも向けられつつあることは、肝に銘じなければなるまい。
多くの方から聞く声は、「国会審議やテレビの国会討論を聞いていても、自民党も、『菅辞めろ』の一点張りで、この国難の時期にもかかわらず、生産的な議論がない。」というものだ。
このような声を聞くと、改めて、菅直人氏という、異常な権力亡者を相手にすることの難しさを思うし、国民のことを考えると、このような人物と、同じ土俵に乗ってはならないなと、つくづく思う。

(「菅おろし」は民主党にしかできない)
現在、民主党は、衆議院で圧倒的多数を握っている。
総理大臣を選出し、辞めさせることができるのは、憲法上衆議院だけだ。
だから、「民主党」が一枚岩ならば、数に劣る野党勢力がどんなにまとまったところで、総理が自ら辞めない限り、これを強制的に辞めさせることはできない。
6月2日の不信任案採決の折は、民主党は、分裂一歩手前まで行った。
しかし、民主党の議員、ほとんど例外なく、自らのことを考えると、このタイミングでの解散総選挙はやりたくない。
冷静に考えれば、菅直人氏が好きな人も、嫌いな人も、選挙だけは避けたい。
だから、何か訳の分からない玉虫色の「退陣表明?」で、解散総選挙につながりかねない不信任案を葬り去ったことは、ある意味で至極わかりやすい。
しかし、民主党議員がまとまったのは、「解散総選挙回避」という一点のみで、その後は、決着が玉虫色だったため、被災者そっちのけで「辞めろ」、「辞めない」の大騒動となり、現在に至っているのはご承知の通りだ。
そして、自民党も一緒になって、「菅辞めろ」と叫んできたわけだが、参議院で与野党が逆転しているとはいえそこは野党の限界で、菅直人氏の露骨な居座りに、なすすべもないのが現状だ。
私自身、時期は明言せずとも退陣を表明した総理は、諸外国から全く相手にされないため、一日長くその職にとどまれば、それだけ国益が損なわれると考えている。
ただ、野党として菅氏を辞めさせるすべがない以上、同じ土俵で騒ぐことなく、「菅おろし」は、民主党内の政争好きの皆さんにお任せした方が良いと、私は思う。

(「死に体総理」は相手にせず、民主党にはできない復興構想を)
では、自民党は、菅政権の延命に手を貸すべきかと言えば、答えは明らかにノーだ。
自民党はあくまで野党であり、既に「菅直人氏では震災復興はできない」ことを理由に、内閣不信任案に賛成している。
ただ、その一方で、震災復興自体は、しっかりと前に進めなければならない。

実は、自民党も、すでに、政府と民主党に対し、震災復興のため、約600項目に上る提案をしてきたのだが、その大半は、政府や民主党が受け入れを拒否、これまで、予算や法律は、大した与野党協議も経ずに、突然国会に提出されるという有様だった。
こんな姿勢ではとても協力できないと言うことで、今回の内閣不信任案提出となったわけだが、不信任案も否決され、菅内閣の政治姿勢は、たぶんどんな薬をつけても変わることはあるまい。
ここは、これまでの「提案」から一歩進め、自民党は、法律案なら条文までそろえた「対案」を作成した上、その丸呑みを求める姿勢に転じるべきと私は思う。

例えば、東京電力による賠償スキーム。民主党が唐突に出してきた案は、東電の整理はせず、ただし、存続会社が、国が一旦肩代わりした賠償金を何十年・何百年かかっても返し続けるというもの。
確かにこの案は、今の東電には甘い。ただ、将来、「借金を返すために存続した会社」に入社しようという有為の若者を確保することは難しくなり、電力事業の将来に暗い影を落としかねない。
また、将来返さなければならないなら、賠償金の査定も厳しく、遅くなりかねず、被災者の補償の面も心配だ。
私はとして、東京証券取引所の社長が言われるように、東京電力を何らかの形で整理し、損害賠償は、国が責任を持って行った方が良いと思う。
このような点も含め、しっかりした対案を作り、問題の多い政府与党の案を成立させるのでなく、政府に対案の丸呑み迫れば良い。

もう一つ例を挙げれば、原発の再開要請。
菅政権は、むしろ中期的課題である「再生利用可能エネルギー促進法案」を今国会に提出し、延命を図った上、太陽光・風力などの発電に力を入れていることをアリバイづくりに利用し、検査中の原発の再開要請に踏み切った。
私は、原発を闇雲に再開するなとは言わないが、新たな安全基準が不透明な今回の要請は、かえって混乱を引き起こすだけだと思う。
自民党も、このような姑息なアリバイづくりに荷担することなく、新たな安全基準を徹底的に議論し、しっかりした対案をつくるべきだ。

(「言い訳の天才」への質疑は時間の無駄)
それにしても、菅直人氏の露骨な権力居座り、多弁を弄する言い訳による自己正当化は、総理として、「希有」な才能で、歴史に名を残すことは間違いない。
もとより、自民党は野党だ、「菅辞めろ」の旗を降ろす必要はない。
でも、「言い訳の天才」と「言い合い」をしていても生産性はない。
ここは、いくつか具体例も述べたが、民主党の震災対応の具体的な問題点と、民主党の無能力を国民の前に明らかにし、しかるのちに「対案」への国民の理解を求める戦術をとっていくべきではないか。