戦術・戦略なき民主党政権は「滅亡」への道を自ら選択?~日米同盟と憲法問題に思う
2010-10-18
私は、8月からほぼ毎週、中山太郎前衆議院議員・元外相を座長とする「憲法円卓会議」(於:衆議院議員会館)に参加している。私自身が法案提出者となり、国会答弁でも汗をかいた「憲法改正国民投票法」は、その成立・施行からすでに3年5ヶ月を経過した。
しかし、法律成立直後に民主党が参議院での多数党、後に政権党となってしまった。
その民主党の意向で、両院に設置することとされた「憲法審査会」は今に至っても結局開かれず、国会での憲法論議は、完全にストップすることとなり、今に至っている。
本来国会議員は、目先のバラマキ政策についてでなく、国のあり方について、しっかり語るべきで、円卓会議は、そんな思いをもった前・現議員が参加した超党派の会議だ。
その意味で、今の民主党のやり方は、国会議員としての見識を疑わざるを得ないが、今回の尖閣列島の問題などが起こると、民主党の戦術・戦略のなさに、改めて、背筋が寒くなるような危うさを感じる。○憲法の制約の下で国民を守るため「日米同盟の深化」が必要
現在、わが国の戦力保持・武力行使には、憲法上の制約がある。
これまでの政府の解釈を踏襲すれば、自衛隊は、「戦力」ではなく、原則として「武力行使」はできないこととなる(もっとも、当然別の解釈もあり、私はそのあいまいさこそが問題と考えている。)。
ところが、わが国をとりまく情勢は、決して穏やかではない。
中国は東シナ海での覇権を目指し、北朝鮮は拉致問題解決の動きに反発、さらに、ロシアと韓国とわが国の間には領土問題を抱えている。
しかし、抑止力としての「自衛隊による武力行使」が極めて制約されている以上、わが国周辺地域の平和と安定のためには、米国の存在を「抑止力」とすることで、近隣諸国からの不当な要求を未然に防いでいくことが大切だ。
自民党政権下、米軍再編・普天間基地移設の交渉が、極力感情的になることを避け、時間をかけて行われたが、このような丁寧な折衝は、日米相互の信頼関係醸成に大きく寄与したと言う。
また、9.11同時多発テロで、24人の邦人犠牲者を出したわが国が、憲法の制約の枠内で、インド洋での給油活動のために自衛隊を派遣し、テロとの戦いの戦線に加わったことが、米国はじめ国際社会の信頼を高めたことも、良く知られている。
このように、自民党政権下、確実に「日米同盟の深化」が図られた。
そして、平成14年には、北朝鮮当局が、拉致事件が自らの犯行であったことを公式に認め、平成20年には、日中両政府は、東シナ海ガス田の共同開発で合意するに至る。
もっとも、当時、民主党はじめ野党からは、「日米対等でなく米国依存」との批判もあったし、口の悪い方からは、「日本はアメリカにしっぽを振っている」と揶揄されることもあった。
ただ、「対等でない」というような批判は、まさにためにする批判と思うが(現実にわが国は、インド洋給油活動等で、米国当局から、「尊敬」に近い「信頼」を勝ち得たと聴いている。)、国民と国土の安全やわが国の国益を守るためには、現段階では、「日米同盟の深化」が、やはり唯一の道なのではなかろうか。
○並行して「憲法」の国民的論議が必要
現行憲法の制約と現在の東アジア情勢という条件下では、「日米同盟の深化」以外にわが国の国益を守る方策はないと思う。
しかし、未来永劫、わが国の安全保障を、1つの同盟国のみに委ねることができるという考え方は、さすがに虫が良すぎる。
主体的に安全保障を考えることのできないような国は、いずれ滅びてしまう。
だからこそ「憲法」の議論が必要だと私は思う。
もっとも私は、憲法の議論により、日本を「戦争のできる国」にしようと考えているのではない。
安全保障の問題について言えば、どのようなケースについては自ら守るのか、どのような事案については他国と協同する道を選ぶのか、そのためにどれくらいの物理的力を持たなければならないのか、そしてその結論は、わが国周辺地域の「抑止力」として適当か等々、自らの主体的意思でシミュレーションを行い、どのような「憲法上の制約」を設けることが必要、かつ、妥当かということを、徹底的に議論することが、極めて大切要だと思う。
このような議論を尽くした上での「アメリカ頼み」なら合点もいくが、現在の民主党政権のように、「アメリカ依存脱却を口にしながらのアメリカ頼み」では、国際的信頼を勝ち得ることはできないし、なによりも、国益を守ることができない。
だからこそ私たちは、自民党政権下の平成19年5月、「憲法改正国民投票法」を成立させ、いよいよ国民的議論をスタートさせようというところまで漕ぎつけた。
当面は「日米同盟深化」の戦術を選択、そして並行しての憲法議論、その中で、「憲法上の制約」の必要性・妥当性を検証し、今後の安全保障の絵姿をつくり、最終的には国民の判断に委ねる。
このような2段階の戦略が、少なくとも私たちにはあった。
○戦術・戦略なき民主党政権は「滅亡」への道を自ら選択?
ここまで読んでいただければ、多くをかたらずとも、民主党政権の存在が、いかに国益を害しているかということがご理解いただけよう。
インド洋から撤退し、普天間問題で幼児的なワガママばかりを言い、日米同盟の劣化を招いただけでなく、沖縄県民の心をもてあそんでしまったのは、どこの誰だったのか。
両院の憲法審査会を封印し、国民が、自らの進路を決定する道を閉ざしてしまったのはどこの誰だったのか。
これでは、中国が、ロシアが、わが国の足元を見て、理不尽で居丈高な主張を繰り広げるわけだ。
戦術・戦略なき民主党政権は、「滅亡」への道を自ら選択しているとしか思えない。
私はこれが、「日本の滅亡」でなく、「民主党の滅亡」のみであって欲しいと、心から祈っている。