民主党「子ども手当」の増税シミュレーション~マスコミは何故報道しないのか

2009-8-15

民主党マニフェストの問題点を指摘

去る8月9日、地元利根町で、私の励ます会が開催された。
話題は、民主党マニフェストのいい加減さ。
もっとも、このへんのところを、マスコミは、全く報道しない。
所得制限をかけることなく、中学生以下の子どもに毎月2万6千円をバラマクという「子ども手当」も、5.2兆円と言われる所要額の財源は、ほとんど明示されていない。
これでは、絵に描いた餅だ。
さすがに民主党も、まずいと思ったのか、その財源の一部(それでも4分の1程度に過ぎない。)を、現在1.3兆円が減税(消費税の0.7%に当たる)されている配偶者控除と扶養控除を「廃止」し、増税により捻出することを打ち出した。
ただこれについても、マスコミは、一体いくら位の増税になるのか、報道も、計算もしようとしない。
仕方がないから私がシミュレーションしてみた。1給与40万円、大学・高校生を持つ夫婦→年20万円増税

例えば、給与額面40万円で、大学生1人、高校生1人の2人の子どもを持つサラリーマン世帯の場合、配偶者控除や扶養控除が廃止になった場合、どれくらいの増税になるだろうか。

以下は、国税庁HPの確定申告書作成コーナーを活用させていただき、私が試算した。

ボーナスを、夏季2月、冬季2.5月の4.5月とした場合、この方の年収は、660万円。
これから、収入の約8%に当たる厚生年金保険料52万8000円が差し引かれ、課税対象の年収から控除されることとなる。

さて、現在は、配偶者控除及び扶養控除が認められているため、この夫婦の所得税額は、年間14万6700円。
したがって、このサラリーマンの手取りは、約36万円となる。

ここで、配偶者控除と扶養控除を廃止した場合、この夫婦の所得税額は、33万8900円と、年間約20万円の増税となる。
ちなみに、各月の給与手取りは、約34万7千円、配偶者控除・扶養控除が遭った場合と比べ、少なくともご主人の小遣いは吹っ飛んでしまうことになる。

そして、この世帯は、多分、大学生、高校生といった、最もお金のかかる子どもたちを抱えてているわけで、年20万円の増税には耐えられまい。

2月20万の年金で暮らす老夫婦→年2万円の増税

また、月20万円の厚生年金で暮らす70歳の老夫婦の場合はどうか。
市町村により異なるが、仮にこの夫婦が毎月1万円の介護保険料・健康保険料を納めていたとしよう。

この場合、扶養控除があれば、所得税額は年間1万6千円で住むが、扶養控除が無ければ、所得税額は年間で3万5千円、約2万円の増税、しかもこれらは、年金から天引きされる。

民主党は、長寿医療制度について、今までの国民健康保険よりも、実質的負担が軽減される場合が多いにも関わらず、年金から天引きされることなどを「お年寄りいじめ」と主張した。
もとより、長寿医療制度には、相当デリカシーに欠ける面があったことは、率直に反省すべきだが、70歳の老夫婦が、今までよりも毎年2万円も多い税金を、年金から天引きされるというのは、長寿医療制度どころではない、お年寄りいじめそのものではないか。

3でも、これらの増税で賄えるのは、所要額の4分の1

もっとも、「子ども1人当たりの手当年31万2000円が捻出できるなら、お年寄りも、これ位の我慢はすべき」という方も、あるいはあるかも知れない。
しかし、1や2に述べた「痛み」で捻出できるのは、1.3兆円で、民主党の言う子ども手当の完全実施のために必要な5.2兆円の、わずか4分の1を賄うことができるに過ぎない。
前回のコラムでも述べたように、民主党が並べ立てている財源のほとんどは、「偽装財源」で、まともに相手はできない。

もしも民主党の言う「子ども手当」を実施するため、確実な財源を手当てしようとすれば、我々は、1及び2に述べたような「痛み」に4倍する「痛み」を覚悟しなければならない。

私は、このような事実をしっかり伝えることこそ、マスコミの責任だと思う。
マスコミには、各党の政策の矛盾点、あるいは良い点を、客観的な数字をもとに試算をして、国民に分かりやすく説明することが求められよう。
「できるかどうか良く分からないけれども、某政党が言っているのだから、できるかも知れない」式のいい加減な報道は、国民を欺く行為を幇助することになりかねない。