経済危機を突破するために(1)~政治・行政への不信の払拭を
2009-2-23
2月22日、谷垣禎一元財務大臣・党政調会長を、守谷、取手、龍ヶ崎にお招きし、街頭演説と講演会を開催した。今回のコラムでは、講演会における私の発言要旨(前段)を掲載してみたい。演題は、「経済危機を突破するために」だ。
みなさんこんにちは、地元選出の衆議院議員、葉梨康弘です。
さて今、「百年に一度の経済危機」と言われています。
ただ、私は実のところ、余りこの表現は好きではありません。
百年前の日本は、現在よりもずっと貧しい国でした。
それが先人の努力により、今や、大層豊かな国になりました。
今回の危機で、先人の努力と成果を失わせるほど、私は日本がヤワな国であるとは考えていません。
日本は、世界に誇るべき伝統と歴史を持っています。
わが国は、今回の世界同時不況から最初に立ち上がる国にならなければならないと思います。そして、その資格は、十分にあります。
もっとも、現下の経済・雇用情勢は、かつてない厳しさです。
私たち政治家は、緊張感をもって、命懸けで、ことにあたっていかなければなりません。
その意味で、現在の内閣・自民党に、緊張感に欠ける、無様な言動があったことは、率直におわびしなければなりません。
しっかり正していかなければなりません。
(政治や行政が襟を正す必要)
さて、現下の経済危機に対処するためには、国民が一体感を持って、難局に対処していくことが何よりも必要です。
しかし今、政治や行政に対する不信が蔓延しており、それがマスコミによって増幅されつつあります。
これでは、「みんなで危機を乗り切ろう」という気運が盛り上がろうはずがありません。
今一度、その原点に立ち戻らなければなりません、そして、そのためにも、政治や行政は、襟を正さなければなりません。
こういった観点から、私自身が今取り組んでいる課題を、本日は、2つほどご報告致します。(社会保険庁の病弊を一掃~信賞必罰で年金の安心を確保)
1つは、年金の安心確保のための社会保険庁の病弊の一掃です。
私たちの年金は、65年間、社会保険庁という組織の中に積もり積もった病弊により、徹底的に毀損されてしまいました。
標準報酬月額の改竄という「消された年金」の問題、45分働き15分休憩の「お茶のみ天国」の中で発生した「宙に浮いた年金」の問題、さらに、いわゆるヤミ専従の問題、枚挙に暇はありません。
これらを、民主党の皆さんは、時の総理大臣や厚生労働大臣の責任として攻め立てますが、今の舛添大臣はまだ在任1年半、大臣自身が年金記録を消すことなどできようはずがありません。
もとより監督責任もありましょう。でも、根っこの問題が、親方日の丸の事務執行体制にあることはいうまでもありません。
だからこそ、今後、組織をしっかり監督し、年金の安心を確保するためには、信賞必罰、職員の総入れ替えで臨まなければならないのではないでしょうか。
わが党では、私が座長になって、これまでの社会保険庁で改竄行為や不正給与支給行為にかかわった官僚や労働組合に所属する職員たちを排除する議員立法を策定するため、プロジェクトチームを立ち上げ、作業をすすめてきました。
本来は昨年秋の臨時国会への提出を考えていましたが、当時は、今にもすわ総選挙という状況の中準備が間に合いませんでした。
議員立法の提出は、今国会会期中の3月には是非間に合わせたいと考えています。
そして、今まで、大臣と歴代長官のみに攻撃の矛先を向け、不正な事務処理を行っていた労働組合員の擁護に回ってきた民主党の方々にも、是非賛成して頂ければと思っています。
(国会議員・公務員が身を削る覚悟を示せ~官民給与格差の是正)
2つは、公務員と民間の給与格差の早急な是正です。
民間では、昨年の冬のボーナスも、4%程度カットされました。
私は、景気回復のためにも、今年の春闘で、賃金や雇用のカットは避けていただきたいと思うのですが、企業業績も大変厳しく、どうも、厳しい結果も予想されています。
この場合の問題は、民間で賃下げ等が行われた場合、これが公務員の給与に反映されるのが相当遅れてしまうということです。
その年の春に民間で給与カットが行われた場合、8月に出される人事院勧告を踏まえて法律を策定、法律の成立が11月中に間に合えば、公務員の給与は、12月のボーナスからのカットとなります。
でもこれが最も早い調整パターンです。
もとより「それでも遅いくらい」という批判もありましょうし、そもそも、このような措置には、官公労(労働組合)が強硬に反対しています。
すなわち、平成21年度の給与は、前年度に成立した法律で決まっているから、12月のボーナスでも下げるのはまかりならないという論理です。
現に、平成14年に同様の措置をとったときは、官公労から、この措置を「違憲」とする訴訟が提起され、現在最高裁で係争中です。
こう考えると、官公労を支持母体とする民主党が、(それでも遅い)12月のボーナスカットに応じる保証はありません。
だから、下手をすると、公務員は、民間では賃金カットが行われているのに、平成21年度いっぱい、高い賃金を享受することにもなりかねないのです。
こんな状態が許されるのでしょうか。
「おカミ」がいい思いをしていて、「国民のみなさん一緒に頑張りましょう」では、言葉が空疎に響くだけです。
このため、去る2月12日、私が座長になって、「国家公務員給与の検討に関するプロジェクトチーム」を立ち上げました。
今次春闘の結果を踏まえ、国家公務員の給与も、民間がカット基調であれば、人事院勧告を先取りし、(最終的には人事院勧告と調整するとしても、)遅くともこの夏から、民間並に、概算的にカットしようという議員立法を検討していくこととしています。
このような措置については、官公労は、当然、「違憲」を主張してくるでしょう。
でも私は、民主党の方々が、政局でなく国家国民のことを考えるのであれば、我々の法案に、支持母体である官公労のしがらみにとらわれず、当然賛成して頂けるものと、ひそかに期待しています。
勿論、これに加えて、私は、国会議員の歳費も、連動して(公務員以上に)カットすべきと考えています。
もとよりこの点についても、細田幹事長、武部党改革実行本部長などに説明し、その了解も得ています。
私は、国会議員自身が、今述べたような施策を自ら考え、実行に移し、命懸けで仕事をすることが必要と考えています。
国会議員は、国民のための存在です。
そして、私は、国民の一体感を育み、日本の底力を最大限に発揮できるよう、微力ではありますが、全身全霊を傾けて参りたいと思います。