米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除~あきらめてはならない。なすべきことは多い。
2008-10-13
10月11日、米国が、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除することを正式に決定、世間に、「拉致問題の解決への道が、さらに険しくなるのでは」という懸念が広がっている。そして、その翌々日の10月13日、私の地元守谷市で、市会議員の方々が主催する「第3回拉致問題早期解決守谷市民大会」が開催され、横田滋・早紀江ご夫妻の講演があった。
この大会には、私もお招きにあずかり、旧知の横田夫妻と懇談の後、大会の場で、北朝鮮のテロ支援国家指定解除を受け、国会としてなすべきことについて、簡単に報告をさせていただいた。
今回はその内容について書く。
さて、米国では、法律で、「テロ支援国家」の被指定国に対しては、政府が、武器の輸出・販売の禁止などの制裁を行わなければならないことが定められ、さらに、被指定国への国際金融機関の融資について、政府は、反対をしなければならないこととされている。
米国は、大韓航空機爆破事件を理由とし、昭和63年1月、テロ支援国家として指定したが、今回は、拉致問題の解決が見られない中、20年振りの解除となってしまった。(今は国民一丸となって拉致問題の解決に取り組むとき)
マスコミや野党は、今回の米国の措置を、「日本外交の敗北」(讀賣)、「総理がコロコロ変わるからこうなった」(民主党)などと、一斉に政府・与党を非難している。
ただ、米国も、米国の国益に基づいて行動しているわけで、わが国の申し入れは、残念ながら、任意の要請に過ぎない。
このため、米国に、わが国の要請を最大限重視させるためには、
○拉致問題の非人道性について十二分の理解を求めること
○日米同盟の重要性を十二分に認識させること
が必要と思う。
特に後者については、昨年、2ヶ月にわたり、インド洋での自衛隊による給油活動が中断したことは、やはり痛恨だった。
関係者によれば、昨年11月、給油中断期間中に行われた福田総理(当時)の訪米は、それまでの安倍・小泉両元首相の訪米と比べ、歓迎の度合いが、明らかに違っていたという(もちろん「熱烈」とは逆の方向)。
もっとも、拉致問題の解決のためには、過去のことを反省する必要はあるものの、それに拘泥しすぎたり、国内で非難合戦を繰り広げていてはダメだ。
この問題は、与野党が一致して、解決のためには何をなすべきかということを前向きに考えていかなければ、時計の針を先に進ませることはできない。
その意味で、この日の守谷市民大会で、私は、国会としてなすべきことを2つ述べさせていただいた。
(わが国の姿勢がブレてはならない~北朝鮮人権法の活用)
平成18年、私は、「北朝鮮人権法作成チーム」の主査として、「北朝鮮人権侵害問題対処法」という議員立法を作った経験を持つ。
実は、昨年春にも、「米国の指定解除」の報道があり、横田さんら、拉致被害者家族会と救う会が、「わが国独自の方策はないか」と、自民党の中川政調会長(当時)のところに相談にこられた。
そして、チーム主査の私に対し検討の指示があり、「北朝鮮人権法」を改正し、事実上、「日本版テロ国家指定」とも言うべき条項を盛り込む法案とすべきという葉梨私案を作成した経緯がある。
内容は、わが国としては、拉致問題解決への進展がなければ、北朝鮮に対する支援は行わないこととし、さらに、世界銀行、アジア開発銀行等による支援にも反対の意思表示を行うというものだ。
この法案は、民主党との協議を経て、何とか成立にこぎ着けることが出来た。
これを適切に運用し、政府の尻を叩いていくことが大切だ。
なぜならば、問題の解決のためには、まずはわが国の姿勢がブレてはならないし、外交当局が、折衝の中で、強い姿勢をとり続けるためにも、国会や世論の後押しが必要だからだ。
守谷の市民大会では、法律作成に携わった立場として、北朝鮮人権法を活用し、国会としても、政府を後押ししていくことを誓った。
(米国に対する理解の醸成~これからが正念場)
次に、米国に対する粘り強い働きかけの必要性を報告した。
何か報道を見ると、(自国政府を、自虐的に非難したいためか?)米国によるテロ支援国家指定が解除されれば、国際社会が、北朝鮮の支援に回り、わが国が孤立しているような誤ったイメージが流布されている。
でも、これでは北朝鮮の思うつぼだ。
すなわち、国際社会は、北朝鮮による拉致問題の不当性を非難し続けているし、米国も、制裁自体を解除しているわけではない。
というのは、「テロ支援国家指定解除」により、米国政府は、現在行っている各種の制裁措置を「解除することができる」ことにはなったもののが、実は、具体的な制裁措置はなお継続されていることが、案外知られていない。
ここはわが国も、2枚腰3枚腰で、米国の、北朝鮮に対する実効ある制裁を継続させるよう、粘り強い働きかけを行っていくことが大切だ。
私が理事を務める衆議院拉致問題特別委員会では、昨年12月、超党派の理事が、在日米国大使館のシーファー大使に対し、米国のテロ支援指定国家解除に反対する要請を行ったが、残念ながら、その10ヶ月後に、今回の解除ということになってしまった。
でも、それでめげてはいけないと思う。
今後の6カ国協議の進展等もにらみながら、米国による制裁措置の実効性が確保されるよう、我々としても、必要な要請を行っていかなければなるまい。
その意味で、まさにこれからが正念場だ。
(マスコミの方々に望むこと)
それにしても、最近のわが国のマスコミの報道振りからは、「社会の木鐸」というイメージは余り出てこない。
例えば、北朝鮮人権法の重要性などは、もっと報道されてしかるべきだ。それにより、国民は、政府の行う交渉に、より関心を持つことが出来る。
また、テロ支援指定国家が解除された後も、わが国政府として攻めなければならない課題が山積していることを、もっと報道すべきだ。今は、米国を非難するよりも、米国をどう巻き込むかに腐心すべきときだからだ。
私は、日本は「強い国」にならなければならないし、「強い外交」を展開しなければならないと考えている。
しかし、そのためには、絶対に国会や国民の「後押し」が必要だ。
国会の場で、政府や与党を批判するのは大いに結構だが、悪口だけでは「力」にはならない。
また、批判精神旺盛なのは大いに結構だが、「日本はダメな国」式の自虐的報道で発行部数や視聴率を稼ぐのも考え物だ。
マスコミの方々には、拉致問題をはじめ、国民が、事実をしっかりと把握し、前向きに行動するヒントを得られるよう、もっと突っ込んだ報道をお願いしたい。