社保庁を「大掃除する自民党」と「公務員身分温存の民主党」~我々こそが国民の年金を守る

2008-7-17

会議の模様。左は尾辻・社保庁改革PT座長

今、国民にとって非常に関心の高い年金記録問題は、「宙に浮いた年金」の問題に加え、6月には、「厚生年金の入力ミス」が発覚、何か、誰かが計画的に暴露しているかのように、社会保険庁のずさんな業務処理が相次いで明らかになり、まさに泥沼の様相だ。
ただ、不思議なのは、もしも警察官や税務署の職員がずさんな業務処理を行えば、業務処理の責任者である警察署長や税務署長が責任をとり、国家公安委員長や財務大臣は、不祥事の再発防止策を担当するはずなのに、社会保険庁の場合、社会保険事務所長たちがずさんな業務処理の責任をとって辞めたという話は、聞いたことがない。むしろ、ちゃっかり天下りなどしているらしい。
やはり、与党が、政治主導の監督責任を果たすためには、この状況を作った社会保険庁の管理職を総とっかえするしかない。
もっとも、なぜか民主党、社会保険庁のずさんな業務処理の追及の矛先を、自民党や舛添大臣に向けはするが、「社会保険庁の職員」については、辞めさせることなく、「公務員としての身分保障を守れ」という奇妙な主張をしている。これでは何も変わるまい。
7月16日の「社会保険庁ヤミ専従問題対策プロジェクトチーム」、私は、座長として、ある提案を行い、了承を得た。その提案とは、「社会保険庁ヤミ給与支給・受給問題に関する立法措置」だ。
立法措置の内容は、ヤミ給与を受給してきた労働組合の幹部のみならず、ヤミ給与支給に携わった社会保険庁の管理職たち全てについて、今後、我々の年金をさわらせないこととするものだ。
例えば、19人のヤミ給与受給職員(公務員としての仕事を行わずに、税金から給与を支給されていた労働組合幹部)がいたことが明らかになっている東京社会保険事務局について見ると、相当数の本局の課長、社会保険事務所長が、新たな組織である「日本年金機構」から排除されることになる。
このような具体的な提案を行うことにより、我々の年金を守るためには、「年金記録問題をここまでこじらせた社会保険庁官僚を叩きつぶすべき」(自民党)なのか、「社会保険庁を国税庁と一緒にし、職員は、これからも公務員として身分保障を継続すべき」(民主党)なのか、国民の皆さんにしっかりと考えていただくことが大切だと思う。

(いわゆる「ヤミ専従問題」の捉え方)

私は、社会保険庁のいわゆる「ヤミ専従問題」は、労働組合幹部が、「職務専念義務に違反して組合活動に専従していた」といったレベルの問題ではなく、彼らに対し、税金から不正に給与を支給するため、人事配置、給与支給、勤務評定等、ウソにウソを重ね、労働組合と官僚が結託した上、組織的、かつ、計画的に敢行された「ヤミ(不正)給与支給事犯」だと考えている。
その意味で、いわゆる「ヤミ専従問題」という呼称は、問題を、労働組合員の不正のみに矮小化しかねない。
このため、この日のプロジェクトチームでは、今後、「ヤミ専従問題」という捉え方だけでなく、「ヤミ給与支給問題」として、この問題を捉えていくべきであることを提唱させていただていた。

(「ヤミ給与支給問題」の責任を問われるべき社会保険庁官僚)

現在、社会保険庁は、「ヤミ給与受給(ヤミ専従)」が明らかになった労働組合幹部30人についての処分を検討するとともに、管理職についての「監督責任」を問う方向で検討を進めている。
しかし、「ヤミ給与受給」という行為は、実態がないにもかかわらず、日々の勤務指示を行ったこととし、勤務時間を管理したこととし、偽の出勤簿をもとに給与を計算し、「ヤミ給与受給者」であることを知りながら給与関係書類を作成するなど、国民に対する重大な背信行為、すなわち、税金を原資とする「ヤミ給与支給」という一連の行為の集積がなければ起こり得なかったことを、忘れてはならないと思う。
これは、いわば、組織的、かつ、計画的に行われた、国民に対する犯罪行為だ。
その意味で、「ヤミ給与支給」に携わった管理職・社会保険庁官僚は、むしろ、「ヤミ給与受給(ヤミ専従)」職員よりも悪質性が高いのではないか。
これらの社会保険庁官僚達は、単なる監督責任ではなく、上記のような国民に対する背信行為に携わった不正行為や、このような不正が行われている事実を知りながらこれを止めさせるための措置をとらなかった不作為をもって、監督責任などという生やさしいものではなく、不正行為者として、厳正に処分されなければならない。

(「ヤミ給与支給」に関与した官僚に年金業務を任せてはならない)

さて、現在閣議決定に向けた作業が行われている「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」では、懲戒処分を受けた職員は、日本年金機構の正規職員としては不採用とされ、さらに、いわゆる「ヤミ専従」職員やこれに関与した管理職について、「厳正な処分」を行うこととされている。
そもそも、「ヤミ給与支給」に携わった官僚は、
○公務員としての仕事をしていない人間に対し、税金から給与を支給
○公務員としての仕事をしていない人間に対し、公務員としての勤務評定を実施
○公務員としての仕事をしないことを知りながら、公務員として人事配置を実施
するなどの不正行為を行いながら、私が行った聞き取り調査に対しては、異口同音に、「当時はそれが当たり前だった」と述べるばかりだった。
このような体質が、現在の年金記録問題をもたらしたことは容易に推定できる。
「ヤミ給与支給」が、「当時は当たり前」と平然と言う神経を持つ方々にとっては、多分、「人様の年金の無様な業務処理・改竄」は、「これからも当たり前」と、多くの国民が思うに違いない。
彼らについては、厳正な懲戒処分が行われるべきであり、そもそも、このような行為に携わった官僚たちを、今後、年金業務に携わらせてはならない。

(議員立法による日本年金機構法の施行前改正の提案)

以上の考え方を徹底するため、我々のプロジェクトチームは、議員立法による日本年金機構法の施行前改正を提案し、次期臨時国会における法案提出を目指す。
法律とする理由は、
①「ヤミ給与受給(ヤミ専従)」問題に関する厚生労働省及び社会保険庁の再調査の見通しと時期が不透明であり、日本年金機構の採用時までに調査が完了しない可能性があること
②基本計画で「ヤミ給与受給・ヤミ給与支給」についての「厳正な処分」が謳われたが、懲戒処分権は社会保険庁の官僚にあるため、処分がお手盛りとなる可能性も否定できないこと
③日本年金機構に採用された後、「ヤミ給与支給・受給」に携わったことが明らかになった職員について解雇することを定めるのは、法律事項であること
などである。
その具体的な内容は、
○日本年金機構の職員採用に関し、ヤミ給与受給職員などについて、欠格事由を設ける
○過去に、「ヤミ給与受給(ヤミ専従)」職員に係る業務のラインと庶務のラインに在籍した全ての管理職(無過失除く。以下同じ)であった者も、「ヤミ給与支給」に何らかの形で関与していたため、「欠格事由該当官僚」とする。
○過去に、「ヤミ給与受給(ヤミ専従)」職員の勤務評定に関わった全ての管理職であった者も「欠格事由該当官僚」とする。
○過去に、「ヤミ給与受給(ヤミ専従)」職員の人事配置に関わった全ての管理職であった者も、「欠格事由該当官僚」とする。
○日本年金機構への採用後、欠格事由該当であることが明らかに
なった職員は、解雇する。
などだ。
この法案は、「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」を補強し、より実効あらしめることになると、私は確信している。

(自民党こそが国民の年金を守らなければならない)

冒頭述べたように、この法案が成立すれば、例えば東京の社会保険事務局では、相当数の大幹部達が欠格事由に該当することになる。これについて、野党や一部マスコミから、「多数の管理職がいなくなって大丈夫か」という意見もあるようだ。
しかし、彼らがそもそも、今まで「管理職」として機能せず、現在の問題を生みだしたことを忘れてはならない。
今後、「年金記録問題」の解決を図るためには、やはり「ヒト」の問題こそが重要だ。
民主党のような、不良職員も含め、社会保険庁の職員の公務員としての身分を守れとの主張は、まさに「泥棒に追い銭」、年金記録問題は、いつまで経っても解決しないのではないか。
やはり、給与記録や勤務実態管理について、国民を欺いてきた官僚と労働組合を排除し、しっかりと衿を正すことこそ必要だ。
そして、年金記録問題は、新しい血を入れて解決すべきだ。
さもなくば、「年金記録問題の解決」は、まさに「百年河清を待つ」ことになろう。
我々こそが、国民の年金を守らなければならない。