暫定税率切れ長期化の「負の部分」~地方経済への深刻なダメージ
2008-4-17
4月10日の衆議院総務委員会。TV朝日が、ガソリン税関係の報道で、誤った事実を放送していた問題や、暫定税率切れの長期化が、地方経済に深刻な影響を与えつつあるということを、きっちりと質疑で明らかにして欲しいという幹事長室からの依頼を受け、質問に立った。
TV朝日の報道の問題については、別の機会に譲ることとして、今日は、暫定税率切れが長期化することによる「負の影響」について書いて見たい。
さて、暫定税率の歳入(収入)を盛り込んだ国の予算は、3月28日に成立したが(民主党は反対)、実は、都道府県や市町村の予算も、全て3月中に成立している。
そして、都道府県や市町村の予算は、ほぼ例外なく、地方分の暫定税率の収入(軽油引取税等)などを折り込んだもので、各会派は、その収入を県民から頂くこと(暫定税率を維持すること)を前提しなければ、とても賛成しようのない代物だ。
ところが、少なくとも都道府県レベルでは、ほとんどの民主党の議員は、歳入歳出予算案に賛成票を投じ、「暫定税率の維持」を支持しているというヘンなことが起こっていた。私は、質問に先立ち、自民党の県連や公開資料等を通じ、平成20年度の各都道府県歳入歳出予算案についての、各会派の賛否の状況を調べてみた。
「暫定税率は地方分も含め不必要」と言いつのっていた民主党のことだ、当然、ガソリンや軽油などの暫定税率を支持を前提とした予算案に対し、都道府県レベルでも、反対の意思表示をしているものと思っていた。
ところが、民主系会派で、反対票を投じたのは、北海道、宮城、千葉、大阪、奈良、島根、佐賀、長崎、宮崎の10道府県のみ。
アトの37都府県の民主党は、なんと暫定税率の維持を支持していた。
参考までに申し上げると、共産党は、全都道府県で反対票を投じており、まあ、これはこれで納得できるが、民主党の対応は、不可解極まりない。
この日の委員会では、前日の党首討論で、福田総理が、「民主党は、誰と話をすればよいのか全く分からない」と指摘されたことを引き、国と地方の関係においても、民主党の意思決定が分裂状態にあることを明らかにさせていただいた。
私自身は、わが国の将来のために、「健全な政権交代」は必要と考えている。
しかし、「誰と話せば良いのか分からない」、「日銀総裁も含め何でもダメ、尻拭いは与党がしろ」、「国と地方の意思決定が分裂状態」といった現在の民主党は、「権力を持ちたい」というスケベ心は分かるが、正直申し上げて、「公党」としての呈をなしていない。
「政権交代」を「健全」なものとするためには、その受け皿は、現在の「民主党」であってはならないような気がする。
まあ、それはさておき、国において、歳入関連法案や、地方に補助金を交付する根拠となる道路財源特例法案の審議が滞っているため、多くの民主党地方議員も賛成した予算案について、執行を保留せざるを得ない動きが加速している。
具体的には、本年4月1日現在で、都道府県のうち、道路関係事業予算を執行保留としている団体が25、道路関係事業を含む普通建設事業予算を執行保留としている団体が4、普通建設事業予算以外の経常的経費を含め執行保留としている団体が7と、合計36の団体が何らかの事業の執行を保留している状況だ。
また、平成19年度期首(4月)、国は、都道府県に対し、2兆1266億円の補助金を配分したが、本年は、その大半を占める地方道路整備臨時交付金を配分する根拠となる法律が成立していないため、平成20年4月に、前年の21分の1に当たる1035億円を配分したに過ぎなず、地方にお金が回っていない。
建設業界の肩を持つわけではないけれども、これでは地方経済が干上がってしまうのは明らかだ。
事実、建設業の倒産件数は、平成17年3783件、平成18年3855件、平成十九年4018件と増加しており、全法人数の約18%を占めるに過ぎない建設業が、倒産件数の約30%を占めるに至ってしまった。
しかも、平成18年には、351人の建設業経営者が自殺している。
ガソリンが下がったと喜んでばかりはいられないわけで、それに伴う予算執行の遅れは、地方経済に、極めて深刻な事態をもたらし、仕事自体が無くなってしまうことも、容易に想像できよう。
また、私自身は、先のコラムでも述べたように、ガソリン・軽油税などが、「特定財源」であるか、「一般財源」であるかというのは、必ずしも本質的な問題ではないと考えている。
もとより、納税者への説明の仕方は考えなければならないが、福田総理が、平成21年度の「一般財源化」を表明されたことにそれほど違和感はないし、それならば、むしろ、(道路関係等の地方債への償還にアップアップしている)地方への配分をより厚くするなど、今後、前向きに、抜本的制度改革を考えていくべきと思う。
でも、少なくとも本年度予算については違う。
すでに国の予算も、地方の予算も成立してしまっている。
「特定財源」と言う言葉が残っているとはいえ、歳入・支出関連法が成立しなれければ、成立した予算自体が執行できないわけで、本年度については、絶対に成立させなければならない。
そして、執行保留が長期化すれば、予算を前提として事業計画を立てていた地方民間経済への大変な打撃となり、倒産、夜逃げ、それ以上の不幸な事態を惹起しかねない。
民主党が修正協議に応じればそれで良し(可能性は極めて低いが)、そうでなければ、たとえそのときは不人気施策であっても、我々は、国民生活と地方経済を守るため、粛々と、衆議院で再可決をし、その後に、翌年以降の一般財源化の法制を検討していくのが筋ではないか。
そして、これが責任政党の努めではなかろうか。