拉致問題解決への国際理解の醸成を~誤解を招きかねないアルカイダへの甘い姿勢
2007-12-19
12月5日の衆院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会。冒頭、「米国の『北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除』の動きに反対する決議」を採択、その後の一般質疑で、私が質問に立った。
外務省や法務省に対する質疑の中で、私は、2001年の9.11テロが、北朝鮮当局による拉致問題同様に、我が国の法律上も、日本人に対する犯罪行為に当たることを明らかにしていった。
私が取り上げた、「外国人による国外犯」の問題は、マスコミや、一般国民の間では、以外と知られていない。
このため、Q&A形式を交え、質疑応答の内容を紹介してみよう。
Q「9.11テロ当時、ニューヨークの世界貿易センタービルにいくつの日本企業が拠点を置き、何人の日本人が働いていたのか。」A「約20社の日本企業があり、約350人の日本人がいた。」
Q「ある建物を狙って飛行機を衝突させることにより建物内の人間を殺害する行為はどのような罪に当たるのか。」
A「一般論として、殺人罪が成立する。」Q「今、9.11テロのように、外国人が、外国で、日本人に対し殺人を犯した場合、日本の法律で犯人を裁くことができるか。」A「2003年の刑法改正で、犯行地が外国で、犯人が外国人でも、被害者を日本人とする殺人罪については、刑法の適用があることになった。一般論として、裁くことができる。」
Q「9.11テロにおいては、何人の日本人が殺害されたのでしょうか。」
A「直接遺体が確認されたのが13名。米国の裁判所で死亡宣告されたのが11名。」
Q「この24名以外にも、多くの方が、現在も非常なトラウマで苦しんでいる。その意味で、テロはなお続いている。
2003年の刑法改正は、今仮に9.11テロがあれば、我が国は我が国の国民を守るため、ビン・ラディンを日本の裁判所に引っ張り出すということを宣言した法改正でもある。
さて、拉致被害者の中にも、外国で拉致された方がいる。
現在17名と認定されている拉致被害者の中には、どうも外国人が外国で拉致行為を行ったと思われるケースがある。
このようなケースは、日本の刑法で裁けるのか。」
A「一般論として、2003年の刑法改正によって初めて裁くことができるようになった。」
たとえ、2003年以前には裁くことができなかった拉致行為についても、私達は、国民の意思として、今も厳しく臨んでいる。
そしてその意味では、9.11テロも全く一緒のはずだ。
このことを踏まえた上、私は、委員会の場で、次のような主張を行った(議事録から抜粋・補筆)。
「このように、拉致問題と同様に、日本人を被害者とする他の国際テロ行為については、我が国としても、憲法の範囲内で、毅然とした態度をとっていくのは当然のことと思います。
北朝鮮当局による拉致問題の非人道性は、決して、36年に及ぶ日本による植民地支配や、北朝鮮の貧困を理由として許されるものではありません。これは明らかな犯罪行為だからです。
同様に、アルカイダ及びこれを支援するタリバンによる日本人を含めた殺りく行為の非人道性は、植民地支配や貧困を理由として許されるものではありません。これも明らかな犯罪行為だからです。
もしも我が国が、同種のテロ行為に対する態度に、ダブルスタンダード(二重基準)を持つこととなると、国際社会から、何か特定の国に特定の感情を持っているから、片方にだけ厳しいと評価されかねない、このことを私は危惧します。
日本の国会では、野党の方から、平気で、「テロは貧困が生み出した、敵対でなく民生支援」を、そういった意見が出されています。
そういう意見を持つ方も、なぜか北朝鮮に対してだけ極めて厳しい態度をとり、「(ビン・ラディン一派には民生支援をし、)金正日は日本の法廷に引っ張り出せ」と言われる。このようなダブルスタンダードは、国際的な常識からは、明らかにおかしいことです。
私は、北朝鮮、アフガンの問題、両方ともに厳しくあるべきであると思います。
そうしなければ、諸外国の間に、我が国は、イスラムのテロで国民が殺されても黙っているのに、北朝鮮のテロで国民が誘拐されたら、極めて厳しい態度をとる。これは、特殊な感情的要因で、朝鮮にだけ厳しく出ているのではという、誤解を生みかねないのです。
そして、私たちは決して、「拉致問題は日本帝国主義が生み出した」、あるいは、「経済制裁よりも民生支援を」といった考え方にくみすることがあってはなりません。
今日も傍聴に来られております拉致被害者ご家族の心情を思うとき、国際社会において、しっかりと北朝鮮当局を指弾していくためにも、日本という国が、テロ行為への態度にダブルスタンダードを持つかのような誤解を招くことは、絶対に避けるべきです。
他の国はそんなことはありません。例えば、イラク戦争では米国に非協力的だったフランスも、自国民が殺された9.11テロに関する国際的オペレーションには、積極的に協力しています。
自国民の命を守ることは、米国追随とは別次元の問題で、その意味で、フランスの、テロに対する態度は首尾一貫しているのです。
そして、アルカイダとタリバンは、現在、なお健在です。
アルカイダは、今も、米国だけでなく、国連、西側社会、さらに日本船も含め、襲撃予告、殺人予告等を発し続けています。
このような状況下、我が国が、インド洋におけるアルカイダに対する監視活動への参加を止めることは、日本は、「24人の日本人、さらに、数千人の米国人の殺戮された国際的犯罪行為」を容認する、「テロ容認国家」に変貌してしまったと評価されかねません。
現在、我が国は、17人の日本人拉致被害者を公式に認定し、その全てが帰還していないことから、「米国は、北朝鮮のテロ国家指定を解除すべきでない」と強く主張していますが、この体たらくでは、その説得力や迫力は、相当減殺されたものとなるでしょう。
私は、我が国が、拉致問題も含めて、国民が被害者となった犯罪行為について毅然として立ち向かい、国民の生命を命がけで守っていく国家であることを示す意味でも、インド洋における給油活動の再開を強く望みます。
給油新法の早期成立は、我が国が国際社会に対し、日本人が被害者となった国際的なテロ行為に毅然たる態度で臨み、かつ、国際的連携に熱心であるという、非常に前向きのメッセージなのです。
そして、これが、国際社会に対し拉致問題の解決に向けた理解と協力を求める大きな力になると確信します。」