総務会「北朝鮮人権侵害問題対処法案」を了承~「圧力カード」出そろう
2006-4-1
3月31日の自民党総務会。私が検討チームの主査として作業を進めてきた「北朝鮮人権侵害問題対処法案」について、全会一致で了承を得た。
議員立法の作成責任者としての総務会説明は、昨年の「探偵業新法案」(昨年提出するも衆院解散で廃案となったが、今国会での成立を期すべく、現在民主党に協力を要請中。)に次いで2回目。
このほか、一昨年の「児童買春・ポルノ禁止法の改正」及び、昨年の「偽造・盗難キャッシュカード法案」では、私自身が提案者として国会答弁をしているので、都合4本目の議員立法案となる。
ただ、今回の「北朝鮮人権侵害問題対処法案」は、実体法である他の法案と違い、どちらかというと、メッセージ法的な色彩が強い。
それでも、こと拉致問題などの人権侵害問題については、北朝鮮当局に日本国民の正確なメッセージを伝えるとともに、日本政府にも、ポジティブな施策展開を促していくことが極めて重要だ。
以下、了承を得た法案の内容について書いてみる。2月16日付のコラムで、法案の骨子について記したが、当然のことながら、大筋で、大きな変更があるわけではない。
ただ、検討の過程で、よりブラッシュアップを図ることができた。
以下、法案に定められた具体の施策について述べることとする。
まず第1は、北朝鮮当局による人権侵害に関する啓発や実態解明について、国の責務と地方公共団体の責務を明確にしたこと。
特に、国の責務として、「拉致問題の解決」を明定し、拉致問題を絶対に風化させない意思を示すとともに、この問題の解決なくして国交正常化なしとする日本国民の姿勢を、法律の上でも明らかにすることにした。
第2は、具体的な啓発運動を集中的に展開する期間として、12月10日から12月16日までの1週間を、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」としたこと。
12月10日は、1948年のその日に、世界人権宣言が採択された「世界人権デー」であり、12月16日は、昨年のその日に、国連総会で、北朝鮮の人権侵害を非難する決議が採択された特別の日で、偶然の符合ではある。
第3は、政府に、北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する年次報告の作成を義務づけ、国会に報告させるようにしたこと。
このような年次報告書の作成は、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」における各種施策のとりまとめとあわせ、現在内閣官房に置かれている拉致問題の担当部局に、北朝鮮の人権侵害問題に対処するための、独自のルーティーン業務を付与することになる。
これにより私は、政府の施策が、さらに活性化することを期待したい。
また、年次報告の国会への報告を契機に、国会において、拉致問題等について、より活発な議論が行われることが望まれよう。
第4は、北朝鮮当局による人権侵害の被害者に対し、適切な施策を講ずるための国際連携の強化やNGOとの連携を定めたこと。
もとより、この法律のコアは、北朝鮮当局による日本人に対する人権侵害だ。
しかし、昨年の国連決議も踏まえると、わが国は、国際社会と連携し、脱北者などに対する適切な施策を講じていくことが必要だ。
このため、被害者に対する適切な施策を講ずるため、外国政府、国際機関、NGOとの連携についての規定を置くことにした。
第5は、北朝鮮当局による人権侵害状況に改善が図られない場合に、政府に対し、必要に措置をとることを求めたこと。
もとより、この法律で、内閣の専権事項である外交権を制限することはできない。
もっとも、私たちは、この法案で、とるべき措置の例示として、色々な思いを込めて、いわゆる経済制裁2法も明記した。
政府に対しては、効果的な経済制裁を行うための国際的な働きかけも含め、緻密なシミュレーションに基づく戦略的な措置を期待したい。
2月8日に日朝協議が決裂して以来、政府においても、内閣官房を中心に、北朝鮮に対する「圧力カード」についての検討が行われてきた。
与党側としても、今日の総務会による法案了承は大きな前進だ。
こうして、政府・与党の圧力カードが出そろったことになる。