委員長として生産者・消費者に直結する政策をとりまとめ~畜産・酪農対策小委員会
2006-3-11
3月9日の畜産・酪農対策小委員会・農林部会・総合農政調査会合同会議。3月3日から8日までの小委員会での議論を踏まえ、平成18年度の畜産・酪農についての具体的な政策について私から報告、了承を得た。
私たちが毎日飲む牛乳やバターなどの乳製品は、最近その消費が低迷し、供給過剰が大きな問題となっている。
また、食肉価格も、米国産牛の輸入停止の影響もあり、従来に比べ高値が続いており、消費者からは、「高すぎる」という声も聞く。
加えて、例のせき柱混入問題で、改めて「食の安心・安全」への関心が高まっている折、国産の牛肉・豚肉・鶏肉の安全対策の強化も緊急の課題だ。
財政事情は大変厳しいが、畜産・酪農対策小委員会では、平成18年度において、これらの課題に対処するための具体的な政策を決めた。まず、年間約800万トン生産される牛乳の問題。
実は、飲用乳消費は、昨年の525万トンから、今年は505万トンと、大幅に減る見込みだ。
だから「生産調整」が問題となるが、これは以外と難しい。
なぜならば、雌牛を殺さなくてはならないからだ。これは、酪農家にとっては身を切られるような痛み。
飲用が減った分は、加工乳(脱脂粉乳・バター)やクリーム等(生クリーム・発酵乳・チーズ)向けにふりむければという議論もあるが、ことはそれほど簡単ではない。
実は、政府が飲用乳以外の加工乳向け生乳に補給金を、クリーム等向け生乳に奨励金を出している関係で、加工乳向け生乳等の生産限度は、国が決める。
補給金制度等は、飲用に比べ、加工乳やクリーム等向け生乳の単価が低いために設けられているものだが、財政上の制約で、当然、生産限度量は、それほど増やせるものではない。
しかも、脱脂粉乳やバター自体、在庫が過剰になってきている。
このような厳しい情勢の中、農水省の懸命の努力もあり、
○加工乳向け生乳(補給金対象)の数量は対前年比2万トン削減
○クリーム等向け生乳(奨励金対象)の対前年増加枠を5万トンに設定
することで、需要の見込まれるクリーム等向けの生乳生産を増やし、飲用乳需要減少により全体としては減産となるものの、その幅を最小限度に抑える対策を講ずることができた。
しかし、喜んでばかりはいられない。「奨励金」の財源は、「畜産業振興基金」という、牛肉輸入自由化前の国家貿易による輸入肉売買差益等を貯めた、いわば過去の貯金で、これを取り崩しての対策だから、「恒久的対策」と安心はできない。
だからこそ、我々は、今後さらに、輸出(新たに予算化)を含めた飲用乳の消費拡大に取り組むとともに、奨励金などにできるだけ頼らないようにするための生産基盤の構造改革を進めていかなければならない。
次に、食肉の問題。
わが国の畜産が、消費者から見放されないで生き残っていくためには、やはり、手頃な価格の食肉を安定的に供給し、かつ、良い品質の安心・安全な食肉を提供していくことが必要だ。
小委員会では、安定的供給のための畜産農家の経営対策についても議論した。
加えて、安心・安全の確保のため、しっかりした記録を整備するなど、適切な牛肉のせき柱除去工程を持つ事業者には、必要な奨励金を交付するなどの措置を講じた。
また、家畜伝染病が発生した場合のセフティネットである、「互助基金」(国が半額を補償し、伝染病にかかった家畜を早期に淘汰、伝染病の拡大を防ぐもの。)を大幅に積み増すなどの対策をとった。
ここに紹介したのはほんの一部だが、自民党では、このように、生産者・消費者に直結する具体的な政策を決めていく。
今回その渦中で仕事をさせていただいたことは、大変ありがたかった。ご指導いただいた谷津総合農政調査会長、松岡農林幹部会座長代理、西川農林部会長に厚く御礼申し上げると共に、役所に何泊もした農水省の皆さんにも、心からねぎらいの言葉をかけたい。
でも、これからが大切だ。関連対策報告の最後、私は、畜産・酪農団体の皆さんに次のような異例の要請を行った。
「生産者団体の皆さんに申し上げる。
政治家に頼めば何とかなるという考えは持たないでほしい。
それよりも、皆さん自身が、真剣に、消費拡大・構造改革に取り組むことが大切だ。
そういう努力を、我々はしっかりバックアップする。小委員会も適宜開催していく。
ともに汗をかき、知恵を絞りながら、強い農業基盤の確立のため頑張っていきましょう。」