「道路特定財源見直し」は良いチャンス~国民のための道路を造るために

2005-10-4

「道路特定財源」の見直し問題が、ホットな話題となっている。

葉梨康弘の質問に応える岩国議員(H16.4)

9月28日、衆院本会議で、武部自民党幹事長の質問を受け、小泉総理が、年内に具体的方針取りまとめを指示したこと。
10月3日付の読売新聞社説も、「国と地方の財政が火の車に陥るなか、特定財源導入時に比べ、かなり整備が進んだ道路に、これまで通り潤沢な資金をつぎ込む必要性は薄れた。」として、「道路特定財源の一般財源化」を強く支持した。
このように、マスコミでは、年間5.7兆円に上る「道路特定財源」が、「不必要な道路予算」を生んでいるという議論を耳にする。
勿論、本当にそうなら、「特定財源」を放置することは明らかに害毒だ。
でも、物事そんな単純でないことを、私は、昨年4月の私の民主党・岩国議員への質問でも明らかにしてきた。
今日は、そのへんのところを書いてみよう。「国と地方の財源が火の車に陥」っているにもかかわらず、毎年の道路整備は、「特定財源」だけではとても足らず、それと匹敵する額の「一般財源」が投入されていることは、余り知られていない。
平成16年度予算では、道路整備に使われている国や地方のお金は、国費が3兆5,640億円(うち特定財源分3兆4,943億円)、地方費が5兆6,671億円(うち特定財源分2兆2,249億円)の計9兆2,311億円。
このうち、3,578億円は、本四公団の債務処理などのため、国債費などの一般会計に繰り入れられたため、純粋に道路整備に投入された国や地方のお金は、8兆8,733億円。
そして、揮発油税など、この年の「道路特定財源」の税収は、5兆7,192億円だから、国と地方を通じてみれば、道路整備費用として、道路特定財源以外に、平成16年度は、3兆1,541億円の国民の税金が使われたことになる。

実は、本四公団の債務処理(平成17年度は、さらに積み増しして4800億円を計上)が来年度で終わるため、そこで浮いたお金を「一般財源化」できないかというのが、これまでの議論の流れ。
財務省サイドの、「何が何でも国の一般財源を増やしたい」という意気込みを感じはする。
でも、考えて欲しい、確かに毎年、本四公団の債務処理のため、3,000~5,000億円のお金が、国の「一般会計」に繰り入れられてきたものの、国・地方を通じ、同じように毎年、その約10倍の3兆円以上のお金が、「一般会計」から、道路整備予算に支出されてきた。
何故こんなことが起こるのか?
「道路整備」は、特に地方の生活道路について、切実な問題として、住民の要望が極めて強いからだ。
昨年の委員会質問でも取り上げたが、実際、私の住む取手を初め、地方都市には、まだまだ消防自動車も入れないような狭い道路がいっぱいある。
だから、3兆円のお金のほとんどは、地方自治体が、住民の要望に応えるため、苦しい財政事情の中、税金や起債で捻出した貴重なお金。
本四公団の債務処理が浮くからといって、3000~5000億円のお金を、安易に「国の」一般財源化し、社会保障か何かに使うだけでは、財政火の車の中、道路の予算を捻出している地方自治体に申し訳ない。
やはり、もっと根っこの議論が必要ではないか。

私は、「道路族」でも何でもないが、今やらなければならない議論は、「特定財源」か、「一般財源」かの議論ではないと思う。
かつての道路公団民営化改革のときは、高速道路について、必要性等の議論を行ったが、今回は良い機会だから、一般道路についても、わが国に「道路どれくらい必要か」、「それにいくらお金がかかるか(コストの縮減が可能か)」ということを、従来のシーリングなどにとらわれず、徹底的に検証するべきではないか。
そして、その結果として得られた道路整備費用が、なお、現行の「道路特定財源」の税収を上回るようであれば、「道路特定財源」の維持が必要だし、下回るようなら、特定財源を廃止するか一般財源化すれば良いというだけの話。

つかみの話としては、将来の道路整備予算のおおむねの金額が閣議決定され、それに基づいて、道路特定財源などの税率も決まっている。
ただ、具体的な道路の整備についての突っ込んだ議論は、平成14年に新道路整備5ヶ年計画が終了して以降、積残しになってしまったきらいがある。
ここはひとつ、民間の有識者も含め、地域の利権と離れた形で、
○わが国の国際競争力強化のためにはどの道路が必要か
○地球温暖化対策のためにはどの道路が必要か
○単なる舗装率等でなく、生活道路の整備水準をどうするか
などを徹底的に議論することが必要と思う。

そして、その上で、一定の生活道路についての道路構造令の見直しなど、コストの徹底的な縮減を図るべきだ。
また、図ることができるはずだ(このようなコスト見直しの結果、民営化後の新規の高速道路建設費について、相当のコスト縮減が図られたことは記憶に新しい。)。

私自身も、納税者にとって納得のいく議論を、しっかりとリードしていきたいと考えている。