「ウィルスに年末年始はない」~鳥インフルエンザの大流行
2021-1-4
新型コロナウィルス感染症が、年末年始を控えて、猛威を振るっている。まさに、「ウィルスに年末年始はない」という状況だ。
そして今年は、養鶏・食鳥の世界で、もう一つのウィルスが猛威を振るっている。「高病原性鳥インフルエンザウィルス」だ。
本シーズンはすでに、14県、34農場での感染が確認され(令和3年1月4日現在)、過去最大の約480万羽の鶏が殺処分の対象となっている(国内の飼養羽数の約1.5%強)。
私は、現在、農林水産副大臣として対応に当たっており、鳥インフルエンザの発生を見た香川、宮崎、大分、千葉、岐阜の5県にそれぞれ日帰り出張し、直接知事とお会いし、県当局との連携強化を確認したが、昨年の千葉県は12月24日、今年の岐阜県は1月2日と、まさに、「ウィルスには、年末年始もクリスマスもない」ということを実感した。
まん延の理由は、今後更に専門家による検討が必要だが、今回は、現在の状況と取り組みについて報告する。
本年感染が拡大している高病原性(強毒性)鳥インフルエンザウィルスは、H5N8型といわれるものだが(この型のウィルスが人に感染した例はないので、念のため。)、本年のウィルスの主な特徴を3つほど述べてみよう。
第1に、今年は世界的な流行が見られることだ。既に、シベリヤの野鳥のウィルス、ヨーローパで流行しているウィルスと、日本や韓国で流行しているウィルスは、同じものであることが確認されている。そして、今シーズン、ヨーロッパでも、感染の拡大が顕著で、ウィルスの量自体が例年と比べて多いことが考えられる。
第2に、発生が例年になく早かったことだ。今までの鳥インフルエンザは、北隣の韓国の農場で発生を見た後、11月下旬頃に日本に来ることが多かったが、本年は、韓国で発生する前の11月初めに香川県で発生を見た。鳥インフルエンザ予防のためには、まずは農場主によるウィルス防護措置(飼養衛生管理)の徹底が求められるが、やはり、「韓国で発生しないうちは大丈夫」などとは考えてはならない。
第3に、従前の高病原性ウィルスが、一般に、感染後2日で死に至るのに比して、今回のウィルスは、感染後6日後に病死する性質を持つということだ。このことは、
① ウィルスの侵入が発見しにくい
② 感染した鶏が他の鶏にウィルスを感染させる期間が長い
ことを意味し、他の農場との人の行き来がある場合、他の農場にもウィルスが侵入しやすくなることを意味する。
新型コロナウィルスも、無症状や発症前の感染者を原因としたまん延が指摘されているが、ある意味でそれとパラレルの現象だ。
鳥インフルエンザが発生した場合の対策は、まずは農場内の飼養鶏を殺処分・焼埋却の上、農場を洗浄してウィルスを確実に除去することだが、近隣の他の農場についても、早期に、消毒やウィルス防護措置の徹底を図らなければならない。
その上で、鳥インフルエンザの予防策を徹底することが求められる。とにかく、水辺の野鳥はほぼ鳥インフルエンザに感染していることを前提に、鶏だけでなく、小動物や人を介して持ち込まれるウィルスの、農場内への侵入を阻止することが大切だ。
このような対策には、特に初動の段階では、人海戦術が必要で、農林水産省としても、鳥インフルエンザが初めて発生した都道府県には、即日、副大臣又は政務官が出張し、知事と面談して連携を確認する体制をとっている。
野鳥がシベリヤに帰る来年3月頃までは、まさに年末も年始もない。