政府の対応にしびれを切らす~幹事長室緊急提言を策定
2020-7-24
第1 幹事長室緊急提言を策定するまで
(私が感じた疑問)
先のコラムで私は、①仮設でも良いので、新型コロナの感染者が急拡大したときに備え、病床(人員の確保は当然)を準備しておくべき。②経済活動再開の安心のため、自費負担でも良いから、PCR検査や抗原検査を受けることができるようなルートを確立すべき。ということを訴えた。
そして、このことについて、党内の会合でも、ゴールデンウィーク前後から、ずっと発言してきた。
しかし、5月から6月にかけ、感染者数の増加がある程度落ち着きを見せ、超大型の給付措置等を内容とする第2次補正予算も成立すると、政策対応に「ほっと一息」感が見えるようになった。
政府や党の政策議論も、コロナ後の国際秩序形成(「米中新冷戦」?)やデジタルトランスフォーメーションによる新しい経済の構築に移行してしまった。
それはそれで大切なのだろうが、冒頭述べた問題意識を持っていた私自身は、本当にこれで良いのかと、大いに疑問を持っていた。
(幹事長室の動き)
そんな折りの5月下旬、幹事長室(私は、現在副幹事長)で、今後、新型コロナの第2波がおそってきた場合に備え、どのような準備をしておくべきか、勉強会を持とうではないかということになり、私がその事務局を担うこととなった。そして、結果的に、私の問題意識を政策提言に昇華させる場を持つことができた。。
この勉強会は、役所や専門家からのヒアリング及び自由討議の計8回開催し、これを先般、提言としてまとめ、7月21日、幹事長に報告して了承を得た(第2に提言全文を記載)。
その内容は、基本的には、冒頭述べた私の問題意識をブラッシュアップしたものとなっているが、これに加え、運用により現行法の実効性を確保するための方策を提言するとともに、今後法改正を検討すべき項目を提示したものとなっている。
特に、PCR・抗原検査については、既に2月来、検査の抜本的拡充が求められているにもかかわらず、厚生労働省・保健所が疲弊し、国民が期待するレベルの拡充には至っていないのが現状だ。このため私は、民間活力の導入(ただし、PCR=1.8万円、抗原=6千円という値段をしっかり周知し、余りに高額な検査による消費者被害を防止する必要。また、医師が認めた場合は、当然保険適用。)により、国民のニーズに応えることが大切と思う。
また、その形式も、いわゆる霞ヶ関文学の長い文章とするのでなく、箇条書き的に、考え方を示したものとなっている。
さて、7月に入り、東京を中心に、新型コロナの感染が再び急拡大している。
だからこそ、この緊急提言が、早急に実行に移されることを望む。
第2 新型コロナウイルス感染症対策に係る幹事長室緊急提言
Ⅰ はじめに
○ 我が国は、民主的で人権を重視した手法により、新型コロナウイルス感染症の第1波の感染拡大防止に一定の成果。
○ しかし、最近、感染者数が急速に増加し、国民の不安感の払拭や本格的な経済活動の再開には至っていない。
○ そこで、幹事長室においては、今後、経済活動を萎縮させずに、感染症まん延防止を図るために何をなすべきかを議論。
Ⅱ 基本的考え方
○ まずは、特措法、感染症法、検疫法等の法改正を伴わなくても可能な、緊急に講ずべき施策を提言する。
○ 次に、感染の急拡大に備え、民主主義、人権、法の支配等の価値観を共有する諸外国の例も参考に、今後法改正も視野に積極的検討を行う(別紙1)。
○ 万が一、感染が爆発的に拡大した場合でも、国の機能が維持できるような憲法のあり方について、更に議論を深めるべき。
Ⅲ 緊急に講ずべき施策提言
1 特措法の実効性を確保するために
(指摘された問題点)
○ 今回の緊急事態宣言下でも、休業要請等に従わない事業者が散見され、次に宣言が発出された場合、これに基づく措置の実効性の確保が課題。
(1) 要請・指示等の実効性の確保方策
○ 最善は、今後緊急事態宣言を発出せずに感染をコントロールすること。このため、2以下に記した施策を緊急に実施すべき。
○ 宣言発出に備え、今後、政府、自治体、金融機関がコロナ対策の給付、融資等を行う場合、予め、休業要請に従う旨を誓約させるべき。
○ これにより、事業者が休業要請に反した場合、融資の返済義務や給付の返還義務等が生じることとなり、運用により特措法の実効性を確保する。
(2) 国、都道府県等の連携
○ 上記のような実効性確保方策をとるには、特措法の総合調整機能等に基づき、国、都道府県及び金融機関は、一層の連携強化を図るべき。
2 検査体制等の抜本的強化で国民の不安を払拭すべき
(指摘された問題点)
○ 検査の精度、効果、限界等の情報提供が大切。PCRについては、陰性なら経済活動再開の「気休め以上」にはなる。
○ このウィルスは、無症状でも感染力を持っている方がいる。大変やっかいだ。今後も院内感染リスクがある。
(1) 検査の抜本的拡充と官民の役割分担
○ 発熱や咳等の症状がある方が、速やかにPCR検査を受けることができるよう、行政検査の抜本的拡充を求める。
○ 現在無症状者は、濃厚接触者など、保健所等が必要と認めた人を行政検査(無料)。自由に検査が受けられるわけではない。
○ 感染リスクの低い無症状者の検査は、自費の負担(保険点数でPCR検査1.8万円、抗原検査6千円)が必要。現在、受け皿となる民間検査機関は少ない。
○ ただ、精度が比較的高いPCR検査でも、偽陰性及び偽陽性の問題があり、「検査での陰性」=「確実な陰性証明」でないことにも注意が必要。
○ また、検査は万能ではなく、現在陰性でも、今後いつ感染するかも知れないことに留意する必要。
○ その上で、「気休め以上」であっても、経済活動を行う「安心のエビデンス」を求める需要は高く、民間の検査はビジネスとして成り立ち得る。
○ このため政府は、民間検査機関による検査が行われることを念頭に、検査の限界、効果、標準的料金等の注意事項を、確実に周知すべき(別紙2)。
○ また、政府は、民間検査機関による検査の質の確保について、ガイドラインを策定し、国民の安心を確保すべき。
(2) 保健所の体制と機能の強化
○ 今回、保健所の圧倒的マンパワー不足が明らかになった。行政検査の抜本的拡充のため、その体制強化が急務。
○ また、今後の民間検査機関による検査の拡大に備え、保健所は、民間検査機関と連携しつつ、検査の質の確保を図るべき。
(3) 秋冬の「風邪やインフル」の流行に備える
○ 現在、診療所・病院は、感染を恐れ、風邪等の患者の受診が減少し経営も悪化。秋冬の風邪等の流行に向け、行政や診療所等での検査の拡充が望まれる。
○ 風邪等の有症状者が、診療所等の医師の判断と紹介により、民間検査機関で保険適用の簡易な検査を受けられる仕組みも検討すべき。
○ 上記の簡易検査の結果、陽性の方は保健所の措置に従い、陰性の方は診療所等の医師による風邪等の診療を継続するといった方策を確立すべき。
3 「十分な医療体制」で国民の不安を払拭
(1) 平時からの感染症病床の準備
○ 今後新型コロナ感染者が急増した場合の感染症専門以外の医療機関や宿泊施設への収容依頼は、あくまで緊急避難的措置と認識。
○ すなわち、感染症専門以外の医療機関は本来それぞれの患者への対応があり、宿泊施設には、経済活動再開後の宿泊者対応があることに留意すべき。
○ このため、「感染症病床の整備」として、テントや仮設のプレハブ、簡易病床、換気装置、人工呼吸器、衛生用品等の準備を検討すべき。
(2)軽症者・無症状陽性者の収容施設の確保と行動制限
○ 軽症者や無症状陽性者の収容施設の確保は喫緊の課題。感染拡大時には、(1)で準備を検討することとされた仮設の医療機関への措置入院も検討すべき。
○ 自宅待機等が要請された軽症者や無症状陽性者との連絡の確保や行動の把握方策について、今後更に検討すべき。
4 安心して外国との交流を再開するために
(1)出入国時の検査
○ 現在、出国側の国において、検査を行うことが、国際民間航空機関(ICAO)の一般的なルール。
○ 日本からの出国に際しては、無料の行政検査でなく、受益者負担の民間検査機関での検査が想定され、その量と質の確保を図るべき。
○ また、日本への入国については、出国側の国の感染状況や検査体制のレベルは様々であり、今後更に検討すべき。
(2)入国後の感染防止措置の実効性確保
○ 入国後、検疫所長が指定する場所での14日間の待機及び公共交通機関を使わないことの要請が確実に遵守されることが重要。
○ このため、上記要請に従う旨の誓約を入国の条件とすることも検討すべき。
○ さらに、入国時にスマートフォンの位置情報保存や、接触確認アプリの導入を広く推奨する等、実効性確保に向けた方策を検討すべき。
5 「新しい生活様式と働き方」を定着させるために
(0)指摘された問題点
○ 「新しい生活様式」は、「可能であれば」ということで、少しきつめに作った。
○ 「確実に守ることのできる」ガイドラインを示すことが重要。
(1) 必ず守らなければならない「新しい生活様式」とは
○ 専門家の意見では、国民に必ず実行して頂きたい「新しい生活様式」は、1にマスク、2に手洗い、3、4の次に5に社会的距離。
○ それ以外の注意点は、ケースバイケースで、実行が望まれるとの指摘もあり、国民への周知に当たっては、その意味づけを明確化すべき。
(2) 新しい働き方と業種別ガイドラインの定着のために
○ 「具合が悪ければ休む」働き方を定着させる。その際、やむを得ず働かなければならない日雇い、非正規労働者の対応も検討すべき。
○ 「業種別ガイドライン」を遵守しつつ営業する店舗を、消費者に明らかにする仕組みを構築し、その定着を図るべき。
幹事長室勉強会 開催実績
5月29日(金)
〇新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正経緯、課題等について
〇感染症に対する法制度について(感染症法、検疫法)
6月4日(木)
〇諸外国における罰則の実例について
〇諸外国における感染症法や検疫について
〇クルーズ船やクラスター対策における対応について
6月11日(木)
〇新型インフルエンザ等対策特別措置法の課題等について
(講師)国立保健医療科学院 斎藤 智也 部長
6月18日(木)
〇保健所、地方衛生研究所における対応について
(講師)北区保健所 前田 秀雄 保健所長
川崎市健康安全研究所 三崎 貴子 部長
6月25日(木)
〇第2波・第3波に備えた対応
~経済活動を委縮させず、医療提供体制の崩壊を防ぐためのご提言~
(講師)東北医科薬科大学 賀来 満夫 特任教授
7月2日(木)、7月8日(木)、7月21日(火)
〇提言取りまとめに向けて
別紙1
今後法改正も視野に検討すべき項目
1 新型インフルエンザ特措法
○ 必要な措置(休業を含む)の指示・要請の実効性の確保方策
○ 必要な感染防止対策を講じていただいた事業者の推奨方策
2 感染症法
○ 軽症者や無症状陽性者を宿泊所等に収容する場合の実効性確保方策
○ 保健所による感染者との連絡を確保するための方策
3 検疫法等
○ 入国後の待機や各種条件を遵守させるための方策
別紙2