第1回再犯防止キャラバンに参加
2015-3-24
私は、3月15日(日)と16日(月)、上川法務大臣の名代で、第1回再犯防止キャラバンの長として、福岡県福岡市及び北九州市を訪問、現地の矯正施設の視察や、関係者との意見交換を行った。現在、「世界一安全な国日本」を、世界にアピールするに当たり、この、「再犯防止」が、キーワードとなりつつある。
先のチュニジアにおけめ痛ましい事件をひくまでもなく、「治安」というインフラを確立することが、外国からの観光客、投資などを呼び込むために、極めて重要なことは論をまたない。
わが国の犯罪情勢は、交通業過を除く刑法犯認知件数が、平成14年は戦後最悪の約300万件となるなど、一時急速に悪化したが、関係者の努力もあり、その後は減少に転じ、昨年は、認知件数が一時期と比べ半減するなど、一応の落ち着きを取り戻している。
その結果、例えば、英国のエコノミスト誌が、わが国の国別平和度ランキングを、アイスランド、デンマーク、オーストリア、ニュージーランド、スイスに次ぐ世界6位とするなど(2013)、「結構良い線」をいっているという印象だ。
ちなみに、日本に続くのは、フィンランド、ルクセンブルク、カナダといった国々だ。
ただ、本格的な人口減少社会を迎えたわが国が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、外国からの投資や観光客等を、これまで以上に積極的に呼び込むために、「良い線をいっている」以上に、「世界一の安全」ということを、是非ともアピールしたいところだ。
このような観点から、わが国の犯罪情勢をつぶさに見てみると、例えば、検挙人員に占める再犯者の割合が、平成19年は28%だったものが、平成22年は43%となったほか、刑務所入所者に占める再入者の割合も、6割から7割を占めるなど、残念ながら上昇傾向にある。
このような再犯者の問題を解決しなければ、なかなか「世界一の安全」を確立することは難しいわけで、平成24年7月には、犯罪対策閣僚会議において、「再犯防止に向けた総合対策」が決定され、さらに、昨年12月、同会議において、「犯罪に戻らない、戻さない。」という宣言を決定、現在、再犯防止対策が、国家的にも極めて大きな課題となっている。
もっとも、このような再犯防止対策を進めるに当たっては、刑務所や少年院といった矯正施設内における処遇に工夫を加えるだけでは、不十分だ。
すなわち、施設を出所した少年や高齢者を社会が受け入れるためには、保護司などのほか、教育、福祉などの関係機関・団体との連携が不可欠であるし、年長少年や成人の出所者を社会が受け入れるに当たっては、関係自治体や、彼らを雇用する事業主との連携も当然必要となる。
また、雇用という点について言うと、矯正施設からの出所者等が、早期に安定した仕事につけるようにしていくことは、非常に重要だ。再犯防止につながるだけでなく、生産年齢人口が急激に減少する中、社会のニーズに適合した訓練を施された出所者等が、少しでも成長に貢献できるようにしていくことは、一般論として言えば、わが国の成長にも寄与することとなる。
このように、先述のように、「世界一の安全」を経済成長の基礎的インフラとして売り出していくためには、その切り札である「再犯防止」と就労支援施策の充実は、避けて通ることはできまい。
さらに、出所者等の就労支援施策を充実させることは、わが国が、「再チャレンジ可能な社会」であることを、国内外にアピールする、象徴的な意味も持つことになろう。
今回の「再犯防止キャラバン」は、このような最新防止施策の重要性を訴えるとともに、関係機関・団体に対し、今までの取り組みに深甚なる謝意を表するとともに、意見交換を行い、さらなる協力要請を行うなどのため、大臣、副大臣、政務官が手分けをして各地を訪問しようということで企画されたわけだ。
第1回を福岡市と北九州市としたのは、指定暴力団工藤会の問題で、両地域が治安上の大きな問題を抱えていることもあり、自治体の皆様や県民・市民の皆様が、再犯防止施策に大きな関心を持たれているなどの理由による。
実際私も、有意義な意見交換をさせていただいたが、関係者の皆様の熱意に触れ、国としても、さらに何ができるのか、しっかりと考えていかなければならないということを実感した次第だ。
今後も、鋭意取り組みを進めていきたい。