次の予算は国民の意見を聞いた上で編成すべき~早期解散総選挙の必要性
2012-8-20
永田町は、民主・自民・公明の3党党首会談で、「近いうちに国民の信を問う」ことで合意し、8月10日に消費税法案が成立したものの、国内外に難問が山積しているにもかかわらず、開店休業状態が続いている。与党国会対策委員会が、国会を先に進めようという明確な意思を示さない中、8月17日に、野田内閣は、来年度予算(90兆円規模)の「概算要求基準」を閣議決定してしまった。
2009年のマニフェストも破綻し、何をしでかすか分からない政権に、90兆円もの予算編成をさせることは、極めて大きな問題だ。
私は、自民党が有利だから早く総選挙をすべきと主張しようとは思わない。
しかし、少なくとも、次期補正予算、次期当初予算の編成方針については、各政党がその中身を示して、解散総選挙を通じて国民の意見を聞き、国民の信託を受けた政党が、責任を持って予算編成を行うべきと思う。
以下具体的に述べてみよう。(実効性のある景気対策の実施こそが喫緊の課題)
わが国は、既に約1000兆円もの借金を抱えている。
そして、平成24年度予算での基礎的財政収支(新規発行国債総額から元利払い金を差し引いたもの)の赤字は、交付国債分も含め、約25兆円で、これは、わが国の借金が、毎年毎年、25兆円ずつ増えていくことを意味する。
私は、このような放漫財政の体質を作ってしまったかつての与党の責任は、率直に認めなければならないと思う。
具体的には、政権交代前の自民党による最後の当初予算編成(麻生内閣)となった平成21年度予算では、基礎的財政収支の赤字は約13兆円だった。
リーマンショックなどの事情があったにせよ、自民党政権が、毎年毎年13兆円ずつ借金が増えてしまう財政の体質を作ってしまったことは事実だ。
ただ、政権交代後の民主党政権は、3年間で、13兆円の赤字を25兆円に拡大させてしまった。
民主党政権は、さらに毎年毎年12兆円ずつ借金を増やす財政体質を作ってしまったわけだ。
このように、大変荒っぽく言えば、25兆円の基礎的財政収支赤字のうち、13兆円は自民党の責任、12兆円は民主党の責任というところか。
そして、財政赤字の解消は、歳出削減の努力を行いつつも、タイミングをはかった上、いつかは増税によって賄わなければならない。
今回、自民党と民主党が、総税収12兆円に当たる消費税増税で合意したのも、それぞれの与党時代の財政運営に、それぞれの党が責任を感じたからこその合意と言えるかも知れない。
ただ、法案にも規定されているが、国民への負担を強いる消費税の増税は、経済を好転させた上でなければ、わが国経済に大きなマイナスとなってしまう。。
だからこそ、今政治がなすべきことは、デフレからの脱却に全身全霊を傾け、経済成長を確保するため、実効性のある景気対策を実施することだ。
その手法において、自民党と民主党は、180度異なる。
(全く異なる自民党と民主党のお金の使い方)
一部マスコミは、「消費増税で合意したから、自民党も民主党も差がなくなった」といった言い方をするが、これは、明らかに短絡的ないしは意図的な曲解だ。
確かに、自民党が13兆円は赤字体質を作ってしまい、民主党は12兆円の赤字体質を作ってしまったわけで、この状態を何とかしなければならないという1点では合意したかも知れない。
もっとも、この「1点合意」に反発して民主党から大量の離党議員が出たが、彼ら自身、民主党政権時代に12兆円の赤字体質を作ってしまった責任や、マニフェスト総崩れの責任を、どのように感じているのだろうか、また、ことここに至っても、お金はわいて出てくるから減税すべきとでも主張するのだろうか?具体的な所見を聞いてみたいと思う。
さて、「1点合意」はなされたものの、どのように景気を良くしていくか、どのようにわが国を運営していくかという大局的な戦略で、自民党と民主党は180度異なる。
ここでは景気対策について述べてみよう。
2009年の総選挙で、民主党は、「政権交代こそが最大の景気対策」と訴え、有権者に直接現金を給付することで個人消費を拡大し、景気を回復させるとした。
また、これと連動して、わが国の成長戦略も、従来は供給(企業)側への対策や外需(輸出)を重視し過ぎてきたとし、個人消費を初めとした内需拡大を目指す方向に舵を切った。
結果景気は良くなったか?答えは否。
こども手当など、直接の現金給付の多くは貯金に回り、その財源となして公共事業や土地改良事業への投資がカットされ、ますますお金が世の中に回らなくなった。
さらに、外需重視政策の転換は、投資家に謝ったメッセージを与え、超円高の遠因ともなり、企業は悲鳴をあげることとなった。
このような政権が予算編成を行って、果たして有効な景気対策を推進することができるのだろうか。
しかも、「近いうち」に解散総選挙があるとなれば、民主党政権は、政権維持あるいは選挙で負けすぎることを防ぐため、票に結びつきそうな有権者への直接給付(バラマキ)を予算の中に盛り込んでいくことは必定だ。
これでは、壮大な税金のムダ使いが行われることになっしまうし、今わが国財政に、それだけの余裕はない。
自民党の景気対策は、民主党とは明らかに異なる。
基本的に、企業活動を活性化させ、従業者の所得を増やすことに重点を置く。
一部マスコミは、「自民党は、『国土強靱化計画』を作り、10年で200兆円の公共事業、また利権体質に逆戻り」など、これも短絡的ないし意図的な誤った解説を垂れ流している。
私たちは、このような情報操作に惑わされてはならない。
200兆円といっても、約半分は民間投資、それ以外の公共投資も、約半分は地方の事業で、国の公共事業費(現在でも10年間で60兆円程度)が大幅に膨らむわけでもなく、利権を目指そうにも目指しようがない。
私たちは、民間投資を促進させるための税制の特別措置(民主党はこのような特別措置には反対)などについてのノウハウを総動員し、国民の生命を守ることが出来る国土を作ることにより、景気の浮揚につなげていくことを考えなければなるまい。
このように、自民党と民主党のお金の使い方は、180度違っており、一緒に予算編成を行うことなどできるはずがない。
冒頭述べたように、私は、早期解散総選挙が、自民党にとって有利だから、直ちに国民の信を問えと主張しているわけではない。
実際、昨今の各マスコミの世論調査結果は、自民党にとってもかなり厳しい結果が出ている。
ただ、どこの政党が勝つにせよ、次期補正予算、次期当初予算で、どのような景気対策を打つのか、どのようなお金の使い方をするのか、解散総選挙を通じて国民の意見を聞き、その上で、国民の信託を得た政権が、大胆に政策を遂行していくことこそが、今求められているのではないか。