また始まった民主党の「権力しがみつき症候群」~国政を前に進めるため一刻も早い総選挙を
2012-7-22
6月26日の消費税法案の衆議院採決で、与党民主党は、反対57、棄権・欠席15の、計72人の大量造反を出し、7月3日には、そのうち38人の衆院議員と12人の参院議員(いわゆる小沢グループ)が集団離党するに至った。これを受け、民主党常任幹事会は、野田首相の意向を踏まえ、造反・離党の衆院議員を除籍(除名)するとともに、法案に反対したが党に残留した衆院議員には、党員資格停止2か月という比較的軽い処分案を決定したが、法案に反対し、党に残ることを表明した鳩山元首相には、「事実上の離党勧告」とも言われる党員資格停止6か月の重い処分案を決めた。
このように、同じ残留造反組でも、鳩山氏とそれ以外の議員を分断することで、民主党執行部は、次期総選挙までに、あの手この手で、鳩山氏以外の残留組の改心を促そうとしたわけだ。
そして、この処分案を見る限り、野田首相が考える解散総選挙の時期は、今から2か月以上先で、6か月以内というメッセージだったように、私には思える。
しかし、その後民主党の悪い癖である「権力しがみつき症候群」が再発、メッセージ性は、極めてあやふやになってきた。(離党ドミノを恐れ鳩山氏の処分を半減)
党員資格停止処分何ヶ月が妥当なのか、私は論ずる立場にない。ただ、一旦決めた処分案が、一週間も立たないうちに半減されるというのも、大変奇妙だ。
7月9日、民主党倫理委員会は、鳩山氏の処分を軽くすべきとの答申をまとめ、同日の常任幹事会は、鳩山氏の党員資格停止を3か月に短縮することを決定した。
これは、執行部が、小沢グループに続くさらなる離党者を出すことを恐れ、造反組を懐柔するための決定と報じられている。
ただ、この半減措置により、造反組を、鳩山氏とそれ以外の議員とに分断し、「解散総選挙間近」をちらつかせて、個々の造反議員への説得工作を行うことは、極めて困難になった。
(ブレだした野田首相の姿勢)
その後の野田首相、政治生命をかけてなりふりかまわず3党合意にこぎつけ、「民主党内が51:49になろうとも絶対党内をまとめる」としていた衆院段階での気迫が、残念ながら感じなれない。
しかも、残留造反組を、離党や内閣不信任案賛成の行動に走らせないようにするためか、参院審議で、首相自身が、消費税法案の修正に前向きな姿勢を示すに至っては、開いた口がふさがらない。
3党協議は、民主党代表である野田首相自身が「政治生命をかけ」て、自公両党に協議入りを呼びかけ、合意したものだ。
それを、党内融和・政権延命のために修正(反故に)することを示唆するようでは、信頼関係は失われ、法案の成立にも黄信号がともりかねない。
野田首相の「政治生命」とは、一体何だったのか。
また、ここに来て、鳩山元首相や菅前首相よりは常識的と思われてきた野田首相の政権のハンドリングが、おかしくなってきている。
例えば、何故今唐突に、「尖閣列島の国有化」をぶち上げたのか。
やり方を誤れば、東京都の交渉などを妨害するだけの結果になるだけで、このようなぶち上げ方は、民主党特有の口先だけの人気取りの思いつきと言われても仕方ない。
また、1ドル78円台という、超円高が完全に定着してしまったのに、政権からは、「毅然たる態度」の一言も聞こえなくなった。
IMF(国際通貨基金)も、「円は過大評価」と指摘してくれているのだから、政権は、円相場にもっと敏感であって良い。
さらに、原発再稼働問題のハンドリングも、やはりあやしい。
わが国の原発50基のうち、いったいどの原発が最も危険なのか、比較的安全なのか、福島第1原発事故後1年半も経過したのに、公にオーソライズされた専門的な分析結果は、一切明らかにされず、素人の大臣が安全性を判定して再稼働では、多くの国民が不安になる。
ここにきて野田首相、場当たり的な対応が多くなっていないか。
私自身そうは思いたくないが、野田首相が、「権力しがみつき・課題先送りモード」に入りつつあるとすれば、大変な問題だ。
(解散総選挙先送りを狙う?残留造反組)
野田首相が政治生命をかけた消費税法案に反対(造反)し、それでも民主党に残る道を選んだ衆院議員の行動も分かりにくい。
本来なら離党するのが筋だが、法案反対組57人全員が民主党を離党してしまうと、与党は衆院で過半数割れし、いつでも内閣不信任案が可決される環境が整い、不信任案可決・解散総選挙ムードが一挙に高まってしまう。
残留造反組にとっては、早期解散総選挙は困るということだろう。
また、たとえ総選挙に追い込まれても、うまく民主党公認を得られれば、選挙資金は民主党からの助成金(税金)でまかなえるし、何よりも、選挙戦で、「私は消費増税法案に反対しました。皆さまの味方です。」と演説することができるから、公認推薦さえ得られれば、離党してしまうよりも有利という計算もあるのかも知れない。
実際、7月12日、野田首相は、衆院予算委で、「消費増税をマニフェストに明記し、これに反対する候補は次期衆院選で公認しない」と述べたが、党内で反発が強まり、その日のうちにこの発言を撤回するという醜態を演じた。
これでは、残留造反組の思う壺ではないか。
残留造反組の方々も、自らの政治生命をかけて造反されたのだろうから、もっと分かりやすい行動をとるべきだ。
そして、単に「反対」「反対」と連呼するのでなく、増税に頼らず、国債発行も行わず、マニフェストのバラマキ政策を堅持するための財源を確保する方法を、具体的に国民に示すべきだ。
このように、執行部、造反組ともに、民主党の支離滅裂が深刻だ。
消費税法案衆院採決後1か月、民主党の内紛騒ぎで、何も進まない、課題先送りの状況が長期化している。
政治を前に進めるためには、国民の声を盛り上げ、一刻も早い総選挙で、国民の信託を受けた政権を創ることが急務だ。