野田首相は、もっと大事な問題で「捨て石」になるべき~葉梨康弘の具体的提案

2011-12-8

現政権はもっと被災者と国民のことを考えろと訴える

12月3日夜、野田佳彦首相は、都内のホテルで開かれた中小企業経営者との会合に出席し、当面の政策課題として、消費税率引き上げ、TPP交渉参加、安全保障の三つを挙げ、「自分の代で、捨て石になってけりをつける」と語ったとのことだ。
財務省言いなりの野田首相が、消費税引き上げにご執心なのは良くわかるし、最近ではアメリカの言いなりの野田首相が、TPP交渉参加にご執心なのもよく分かる。
でも、個人的思いは別として、一国の総理なら、今目の前にある明らかな国難に対し、「捨て石になってけりをつけ」て欲しいと思う。
今目の前にある国難とは、言うまでもなく、東日本大震災にかかる震災復興、そして、民主党政権になってこじれにこじれてしまった普天間問題だ。
発言を聞けば、野田氏には、震災復興や普天間問題にけりをつける考えがないようにも思えるが、今回のコラムは、民主党に対する批判ではなく、ではどうすべきか、私なりの提案を行わせて頂きたい。○「安全保障」など抽象的表現でなく、目前の「普天間問題」のけりをつけるべき

野田首相が「捨て石となってもけりをつけたい」問題の3つ目は、「安全保障」ということだが、そもそも、野田首相は、「憲法改正は自分の内閣の課題でない」と表明するなど、「安全保障全般の問題」(自衛隊の位置づけ、集団的安全保障のあり方の議論等がその肝となる。)に余り熱心でないように見える人物だった。
でも、野田首相本人が、本心としては熱心でなくとも、民主党政権になってこじれにこじれてしまった普天間問題については、是非、「捨て石になる覚悟」で「けりをつけ」て欲しい。
これをやって頂くなら、私たちも知恵を出そう。
この問題について、私個人の考えは、自民党政権下、沖縄県民との真摯な対話の上に積み重ねてきた「辺野古移設」という方向性は、やはり大切にすべきと思う。
ただ、だからといって野田政権が強引に推し進めようとしている環境アセスメント申請の年内提出や来年6月頃と報じられている辺野古地区埋め立て許可申請書提出には首をひねらざるを得ない。
なぜならば、ここまで沖縄県民を愚弄し、普天間問題をこじらせ、日米関係を既存した過去及び現在の民主党政権首脳から、反省も、謝罪の言葉も聞こえてこないばかりか、事ここに至ってもなお、首相自らが、沖縄県民を愚弄し続ける現職防衛大臣を擁護するという信じられない事態が続いているからだ。
野田首相に、もしも普天間問題の捨て石となる覚悟があるならば、沖縄県民の心をもてあそび、問題解決を困難にした鳩山元首相のもとに出向き、「一緒に責任をとりましょう。だからこそ、今すぐ議員辞職して下さい。その上で私と一緒に沖縄県民に謝りに行きましょう。謝罪のために何日かかったって良いではないですか。」と迫るとともに、遅きに失したとはいえ、明らかに資質に欠ける一川防衛大臣を罷免することをお勧めしたい。
このような捨て身の努力も行わず、問題をこじらせた民主党首脳を擁護するばかりで、ひたすら野党の協力を求める今の野田首相の姿勢は、まさに自己保身そのものということになる。

○臨時国会を閉じず、1丁目1番地の震災復興にけりをつけるべき

野田首相が、「捨て石になってもけりをつけたい」という問題の中に、「震災復興」が入っていなかったことには、正直唖然とした。
これでは、被災者の皆さんが本当にお気の毒だ。
11月21日、第3次補正予算が成立し、「震災復興」に「一定のメド」がついたという思いがあっての発言だったのかも知れないが、それにしても、野田首相自身が、12月1日、震災被災者の二重ローン対策などを盛り込んだ第4次補正予算の編成を指示した直後の発言で、震災復興に触れてもらえなかったことは大変寂しい。
でも、その真意が、最近明らかになってきた。
12月8日、政府・民主党は、12月9日までの臨時国会会期を延長しないことを決定した。
震災復興のための第4次補正予算の編成を指示しておいて、その提出は来年以降に先送りということだ。
ひどすぎる。
国会を延長すれば、閣僚の資質がないことが明らかになった一川防衛大臣や山岡国家公安委員長の問題で、野党からの集中砲火を浴びることとなり、野田首相の求心力低下は必至ということで、これを避ける狙いがあると報じられている。
明らかにものの考え方が逆だ。
被災者のことを考えるならば、震災復興のための第4次補正予算を指示したならば、可及的速やかに、すなわち年内に、予算案を提出すべきで、野党の追及を恐れて国会を閉じるべきではない。
今の野田首相は、被災者のことでなく、自分と民主党のことを考えているようだ。
野田首相には、政権発足の1丁目1番地である震災復興にけりをつけるため、臨時国会を閉じず、勿論野党からの攻撃にもひるまず、第4次補正予算を、可及的速やかに成立に導くことを強くお勧めしたい。
12月9日で、本当に臨時国会が閉じてしまったら、野田首相が自己保身だけの人であったことを天下に示すことになってるわけだ。

私は勿論、民主党政権を支持するものではないが、一国の総理が、自己保身のかたまりということでは、国民の1人として寂しいし、悲しい。
だからこそ、野田首相には、鳩山元総理への説得を命がけで行い、この国会を大幅に延長して、堂々と震災復興の議論をして頂くことを、心からお願いする。

そして、それができないような民主党政権は、一刻も早く打倒されなければならない。