野田新首相がなすべきこと(1)~国民目線の財務大臣を任命し、大規模3次補正で震災対策に一定のメドをつけよ

2011-8-31

街頭で震災対応予算措置の酷さを訴える

8月30日の衆議院本会議、民主党の野田佳彦氏が、第95代内閣総理大臣に指名された。
丁度2年前の平成21年8月30日、総選挙で自民党が大敗北を喫し、民主党政権が誕生してから、鳩山氏、菅氏に続く3人目の民主党総理の誕生だ。
総理大臣が1年ごとにころころ代わる日本政治の現状は、さすがに海外からもあきれられているが、その一方で、わが国は、3月11日の東日本大震災からの復興という大きな問題に直面している。
ところが、政府の震災対応はまさに後手後手、被災地の方々から失望(絶望)を買っているのが実情だ。
野田新首相には、当面は、菅政権の下で遅れに遅れていた3次補正予算(震災対策のため、10兆円を超える規模が必要と言われている。)の編成に全力を挙げ、早急にその成立・執行を行って頂きたい。
これは、与野党問わず国民の願いだ。(阪神・淡路大震災時と比較した今回の震災対策予算)

さて、今回の東日本大震災における震災対策予算編成が、「遅れに遅れている」と書いたが、具体的なタイムスケジュールを、平成7年の阪神淡路大震災時と比較してみよう。
まず、どれくらいの復興費用が必要になるか考える上でのベースとして、両震災の被害額について述べると、阪神淡路大震災が約9兆6千億円(国土庁(当時)試算)、東日本大震災が約16~25兆円(内閣府試算)となっているが、東日本大震災の場合は、この被害額に原発関連のコストが加算され、全体額はさらに巨額になるため、悪い想定である25兆円程度は覚悟しておくべきと考えたほうが良いと思う。
このため、このコラムでは東日本大震災被害額については、約25兆円の試算を採用する。
さて、阪神淡路大震災時は、1月17日の発災後、
・2月6日(19日後)に予備費(148億円)使用を決定
・2月28日(42日後)に平成6年度第2次補正予算成立(震災関連1兆223億円)
・3月22日(64日後)成立の平成7年度当初予算から1300億円を震災関連に充当
・5月19日(121日後)に平成7年度第1次補正予算成立(震災・防災・地方交付金計2兆2571億円)
といった予算措置が講じられ、発災後約4か月で、総被害額の36%に当たる3兆2942億円が国の予算により手当てされ、加えて、比較的財政力の強かった兵庫県、神戸市なども、地方単独の予算措置が講じられた。
さて、東日本大震災の場合、被災地の自治体は、当時の兵庫県や神戸市とは比べものにならないほど財政力が弱いところが多く、4か月で総被害額の36%を国の予算で手当てした阪神淡路大震災時よりも、迅速、かつ、手厚い措置が必要なことは言うまでもない。
ところが、現状を見ると、3月11日の東日本大震災発災後、
・3月28日(17日後)までに予備費(355億円)使用を決定
・5月2日(52日後)に平成23年度第1次補正予算成立(震災関連4兆153億円)
・7月25日(136日後)に平成23年度第2次補正予算成立(震災関連1兆9988億円)
と、総額こそ6兆496億円と阪神淡路大震災時を上回るものの、発災後約4か月半以上を経過したにもかかわらず、総被害額の24%をカバーしているに過ぎず、阪神淡路大震災時の対応と比べると、スピード的にも、ボリューム的にも、明らかに不合格だ。
政権に居座り、震災対策を引き延ばしてきた菅前総理も大いに問題だが、菅内閣で予算編成に当たった当時の野田財務大臣の責任も、しっかりと問われなければなるまい。

(大規模な第3次補正予算で震災対策に一定のメドを)
阪神淡路大震災当時、復興対策として、平成6年度から平成11年度までの6年間で、震災関連の国の予算として5兆169億円が投じられ、これに加えて、兵庫県も、8年間にわたり、総額4兆4672億円の震災関連予算措置を講じたという(兵庫県による)。
その合計額は、9兆4841億円となり、阪神淡路大震災の総被害額約9兆6千億円にほぼ見合う予算が投じられたわけだ。
東日本大震災からの復興を考えた場合、おそらくは、この数年間で、国・地方の合わせて、総被害額(25兆円程度)に見合う予算措置が必要になってくる。
ただ、先にも述べたように、被災地の自治体はおしなべて財政力が弱い。阪神淡路の時と比べれば、国の負担割合がぐっと高くならざるを得ないことは十分予想できる。
加えて、東日本大震災では、原発対策費用や高台への移転に伴う宅地造成費用が必要となる。
このように考えると、ざっくり言って、25兆円程度と推定される被害総額と同じくらいの国の予算措置が必要となるわけだが、今のところ手当てされたのが6兆円に過ぎない。
その差額約19兆円をどう埋めていくかと言うことが問題だ。
しかも、阪神淡路の教訓を踏まえ、一刻も早い復興を図るためには、数年と言わず、年内に決着をつける位の覚悟が大切だ。

7月6日、自民党は、早期の震災対策・復興を進める観点から、17兆円規模の第3次補正予算を編成すべきとの提言を行った。
これが実行されれば、発災後1年以内に、震災による総被害額に見合う予算措置を講じることができるわけで、阪神淡路大震災の教訓も踏まえ、よりスピード感とボリューム感のある施策を実施することが可能となり、震災対策にも、「一定のメド」をつけることができるはずだ。
野田新総理に、このような自民党の提案をしっかりと丸呑みして頂ければ、遅れていた震災対応も、スピードアップすることは間違いなく、「私が総理になっても支持率は余り上がらないでしょう。だから解散はしません。」という野田氏自身の言に反し、内閣支持率はウナギ(どじょう?)上りにアップすることは必定だ。

野田新総理が組閣に当たってまずなすべきことは、「前任者よりも国民目線を持った」財務大臣を任命し、震災対応に一定のメドをつけるのに必要な規模の第3次補正予算を編成、成立させ、被災地の方々に暖かい手を差し伸べることだ。
それならば自民党も、心から協力すべきと思う。

賢明な読者は、例えば17兆円といった大規模な補正予算が成立すれば、今後の国会で、次の震災対応予算について議論する緊急性が低くなることをご理解頂けると思う。
菅政権は、(わざと?)小出しの補正予算を提出することで、「震災対応があるから。今解散総選挙はできない。」という常套文句を繰り返してきた。
野田新総理からは、この常套文句は聞きたくない。
3次補正、是非大規模に行って欲しい。