人気取りでなく農村の将来像を見据えた農政こそ必要
2010-8-17
今年の夏はことのほか暑い。私も、参院選・参院選後と、地元活動にせいを出してはいるものの、ホームページの更新の方が、少し滞ってしまった。
お盆前のあいさつ回り、新盆のあいさつ回りもすみ、これからは、このホームページもこまめに記事を書いていきたい。
もっとも、ホームページに「現政権に対する怒りの声」を載せるにせよ、「現政権の政策に対抗する政策」を訴える記事を載せるにせよ、国会審議等を見る限り、今の管内閣が、いったいどういう政策を遂行したいと考えているのか、日本をどのような方向に持っていこうとしているのか、さっぱり見えてこない。
民主党が、「政権にしがみつきたい」という権力欲に満ち満ちていることはわかるが、昨年の総選挙でのマニフェストや、今回の参院選での消費税増税の主張は、一体どこに行ってしまったのだろう。
そんな中、今日は、民主党政権により、今年、前年度の予算が6割カットされた「農地改良」の問題について書く。7月20日、私の地元美浦村の木原土地改良区で、土地改良事業の竣工式典が催された。
いわゆる土地改良事業とは、田畑の区画を整理したり、灌漑・排水施設を整備する事業で、毎年国費ベースで、約6000 億円弱の予算が手当てされてきていた。
そして、戦後の農地解放・食糧難を受け、この事業は、数十年の間、コメの増産のため、水田を整備することが主眼とされてきた。
私の地元でも、利根川・新利根川・霞ヶ浦・小貝川などの河川・湖沼近辺の沼沢地が、この事業により、穀倉地帯へと変貌を遂げていった。
ところが、この予算は、昨年、民主党政権になり、このような「水田整備」は過去のものという考え方の下、税金のムダ使いの典型としてヤリ玉にあげられ、農家に直接給付する「戸別所得補償」(5000億円が必要)の財源として、平成22年度、その6割に当たる3600億円が、バッサリとカットされることとなってしまった。
件(くだん)の木原土地改良区の事業も、その完成が危ぶまれたが、平成22年度が最終年度だったことも幸いし、何とか竣工にこぎつけることができたようだ。
さて、この土地改良事業予算、民主党が言うように、本当に「ムダ」なのだろうか。
戦後の圃場整備の結果、現在わが国の水田は、約270万㌶ある。
10㌃当たり平均450㌔のコメが収穫されると仮定すると、1215万㌧の生産能力があることになる。
ところが、日本国民のコメの消費量は年間約800万㌧、すべての水田で主食用米を栽培すれば、膨大な供給過剰が生じてしまう。
このため、これまでの自民党政権も、現在の民主党政権も、主食用米の生産目標を800万㌧程度に設定してきた。
このように、わが国のコメの需給状況を見ると、確かに、これ以上水田を造成する必要はないわけで、極めて素朴に、毎年6000億円の土地改良事業の予算を「ムダ」と考えたくなる気持ちもわからないではない。
ただ、これは将来の農村の姿を踏まえた政策ではない。
私は、これまでも、土地改良予算の分捕り合戦に加担したこともないし、必ず前年並みの予算を確保せよと主張したこともない。
でも、将来の農村の姿を考えたとき、農地基盤の整備は、むしろこれから必要になる分野ではないかと考えている。
このコラムであまり細かく論じるつもりはないが、以下3つの点を指摘しておきたい。
① 農地活用のためには排水機能の再整備が必要
先に、わが国の水田の生産能力約1200万㌧に対し、生産目標亜800万㌧と述べたが、これを休耕・減反により達成しようとすれば、わが国の水田の3分の1に当たる90万㌶の水田が休耕田となってしまう。
しかし、食料自給率が40㌫以下と、先進国でも最低のわが国が、農地を遊ばせておくというのは極めて愚かなやり方だ。
このため、90万㌶の水田で、主食用米以外の作物を作ってもらわなければならない。
水田を水田として利用するという意味では、私はこれまでも、豚・鶏等のえさになる飼料用米、小麦の代用品となる米粉用米などの作付けを奨励してきたが、需要の関係で、やはり限度がある。
このため、現在ある水田を、麦・大豆が栽培できる畑としても利用可能な形にしていきたいのだが、これまでの土地改良事業は、水田造成一本で、二毛作も見据え、水田を畑として利用するために必要な排水機能の整備に欠けていた面は否めない。
今後の農村の姿を考えた場合、農地の活用のためには、排水機能の再整備は必須だと思う。
② 農地集積に適合した耕地整理(あぜ造り)が大切
今、ご多分にもれず、農村は高齢化している。
でも私は、高齢者の方も、やはり現役の農家でいてほしいと思う。
ただ、①に述べたように、今までコメだけを作ってきた高齢の農家の方の場合、1.5㌶の農地のうち、0.5㌶は、コメ以外の作物を作ってくださいといっても、これはこれで負担となってしまう。
このため、私たちは、転作分の0.5㌶は他の農家(若い人・専業)に貸して転作をしてもらい、高齢の農家の方は、残り1㌶でおいしいおコメを作ってもらうといった将来像を描いていかなければならない。
このように、専業の大規模農家と兼業の小規模農家が、ともに協力しながら、農村を支えていくためには、「転作用水田の専業農家への集積」が、1つのキーワードとなる。
でもそのためには、あぜ道の形、田畑の区画を整理しなければならない。
転作すべき0.5㌶が、あっちこっちに散らばっていたのでは、農作業は極めて非効率になってしまう。
そういった意味での農地の区画整理は、決してムダではない。
③ そもそも6割も予算を減らせば農地に水がいかなくなる
これまでに述べてきた事情に加え、土地改良事業の予算を6割減らすというのは、現場のことを勉強していない措置としか言いようがない。
なぜならば、昨年までの土地改良予算のうち、実に約45㌫は、新規事業でなく、これまで整備した施設の補修・維持・管理に使われてきたということだ。
6割カットという今の予算付けの状況が続けば、数年後には、日本の農地に水がいかなくなる。
コメ農家に作付面積10㌃当たり1万5千円のお金を支給する財源を捻出するため、民主党政権は、「土地改良事業」の予算をバサッと切ってしまった。
そのことにより、かなりの日本の農地が耕作不適格地となる可能性のあることを民主党の人たちは知らない。
私は、人気取りでなく、農村の将来像を見据えた農政を構築するため、これからも全力を尽くしていく覚悟だ。