外国人地方参政権付与は拙速を避けよ~今国会での強行は国の将来を危うくする
2010-1-14
報道によると、1月11日午前、鳩山総理と民主党の小沢幹事長は、18日から始まる通常国会で、永住外国人(91万人)に地方参政権を付与する法案を、政府提案として提出し、成立を期すことを確認したという。別の報道では、鳩山総理は、「これはまさに愛のテーマだ。友愛と言っている原点がそこにある。」とし、日韓併合100周年に当たる本年の法案成立に意欲を示しているという。
もとよりこの問題については、憲法違反を問題視する意見や、これを推進すべきといった意見など、多くの意見がある。
そして、昨年9月まで自民党と連立政権を組んできた公明党は、従来から外国人地方参政権付与に熱心に取り組んでおり、政府・民主党には、どちらかというと消極的な立場の自民党と、公明党とを分断したいという思惑も見え隠れする。
しかし、私は、今のタイミングで、外国人参政権付与を強行することは、国の将来を危うくしかねないと、本気で心配している。昨年9月に発足した民主党政権、総理大臣が「宇宙人」というニックネームを楽しんでいるのはご愛敬としても、「日本」や「日本人」を第1に考える発想が希薄で、どこか「無国籍的」な雰囲気を漂わせているように感じるのは、私だけではあるまい。
永住外国人への地方参政権付与の問題にしても、(最近では、韓国籍の特別永住者は帰化される方々も多く減少しており(42万人)、むしろ中国籍などの一般永住者(49万人)がふえているらしい。)当然、韓国だけでなく中国も歓迎するだろう。
でも、今この法案を強行することは、わが国の将来に禍根を遺すことになる。
私は、外国人への参政権の付与は、憲法違反の疑いもあり、しっかりした憲法論議が必須と考えている。
ただ、色々な議論を尽した上でなら、永住外国人の方々に、将来にわたって、政治参加の道を全く閉ざされるべきとまでは考えていない。
また、地域コミュニティの一員として、積極的に活動なさっている永住韓国人の方々も、少なからず知っている。
だから、国政への参加は無理としても、生活に密着した地方参政権くらいは付与すべきと主張する方の心情も、理解できないことはない。
しかし、今というタイミングは、まさに、その「地方」のあり方が大きく変わりつつある時期であることを忘れてはならない。
平成12年の地方分権一括法で、「国から地方へ」という、いわゆる「地方分権改革」が始まり、地方自治体は、国と対等の存在として位置づけられた。
さらに、平成18年に始まった第2次地方分権改革では、国と地方の役割分担の問題にも踏み込むこととなった。
そして、これと並行して、「道州制」の議論も本格化し、自民党内などから、国の仕事の大半は、「道州」が担うべきという提言がなされるようになった。
そして、本年、「地方主権」を掲げる民主党政権は、国と地方が対等の立場で協議を行う法案を提出するという。
このように、一口に「地方」と言っても、この数年、その役割は大いに変容しつつあり、現在、具体的な議論を重ねている真っ最中と言って良い。
「地方」は、単に生活に密着した身近な執行事務以上に、自ら企画し、仕事をしなければならなくなっている。
そして、教育の内容も、刑罰も、その他の諸制度も、地方が「主権」を持つ存在として主体的にこれを担っていくことになれば、「地方参政権」の行使は、「国政への参政権」の行使よりも、もしかしたら、わが国の将来に決定的な影響を及ぼすこととなる可能性がある。
現在の閉塞状況を打破し、わが国の将来を確実なものとするためにも、今、地方分権改革や道州制の議論は避けて通れない。
これはどの党が政権を担うこととなっても同じだ。
そして、将来の地方制度の絵姿も決まっていない段階で、「友愛」だか何だか知らないが、拙速に、憲法上も問題のある永住外国人への参政権付与を強行することは、かなり危うい。
やり方によっては、なし崩し的に、日本国籍以外の外国人に、日本の将来を決定していただく事態にもなりかねない。
まず議論を尽くすべきだ。
「自公分断」という政治的な思惑は分かるが、そのことで、わが国の将来を誤ってはならない。