民主党「SFマニフェスト」の不思議~これは「ほとんど犯罪に近い」(与謝野財務相)
2009-8-1
7月27日、来るべき総選挙に向け、民主党マニフェストの全文が公表された。このマニフェストは、与謝野馨財務相が、「空想と幻想の世界で遊ぶのは楽しいが、それによって国民生活が保障されるという錯覚を与えることはほとんど犯罪に近い。」と評したものだが、全文を読むと、与謝野氏の評価の通りの、「SFマニフェスト」だと思う。
民主党マニフェストは、「子ども手当年31.2万円あげます」、「高速道路無料化します」、「高校無償化、私立高校生に月1~2万円あげます」、「ガソリンの暫定税率下げます」、「消費税は上げません」等々、これでもかという位、幻惑的政策を羅列する。
その所要額も、毎年の国の総予算の3分の1に匹敵する、16.8兆円という巨額なものだ。
ただ、「うまい話」には、「眉唾」がつきもので、7月27日に発表された民主党マニフェストは、まさにそのことを証明した。やはり、民主党が政権につけば、「日本丸」は沈没せざるを得なくなるようだ。1デタラメな「財源論」
民主党政策のアキレス腱は、「バラマキ」政策の財源が「デタラメ」ということ。書き出せばきりがないが、いくつか例を挙げる。
(1)「『埋蔵金の活用』で毎年4.3兆円?」はあてにできない
民主党は、国の行う外国為替や財政投融資の「運用益」を財源にするいう。
しかし、外国為替の場合、円安なら運用益が出るが、円高なら運用損になる。
昨年までは円安だったため、運用益が出ており、民主党はこれをあてにしているようだが、今年は円高傾向で、昨年までのような運用益は見込めず、財源としてあてにするのは大いに問題だ。
(2)「『時限的減税』の見直しで2.7兆円増税?」は大愚策
民主党は、時限的減税(租税特別措置)を見直し、2.7兆円を増税、今後も基本的に時限的増税は行わないという。
これでは、現在のエコカー減税など、景気回復のための思い切った時限減税は廃止となり、経済をますます悪くしてしまうこととなろう。
(3)「人件費2割削減で1.1兆円の財源?」は彼らには無理
民主党は、この夏の公務員ボーナスカットを主導した私の活動を、「政治的圧力」と批判、また、「連立相手」である社民党は、そのそも、公務員の首切りや給与カットに絶対反対だった。
結局、彼らには、国家公務員の給与カットは無理で、人件費2割削減というのは、極めて疑問な「財源」だ。
(4)「『天下先への補助金削減』で6.1兆円?」は数字の魔術
民主党は、「天下り先法人」への補助金12兆円の半分程度をカットできるという。
ただ、例えば、私学助成金3千億円の配分を担う「私学振興・共済事業団」というのがあるが、その役員に、2人の文部官僚が天下り、2千万円ほどの給与を得ている。
天下り先への補助金カットで、助成金3千億円の例えば半分を削減したら、多分全国の、ほとんどが私学は倒産してしまう。
勿論天下りは根絶すべきだ。
しかし、天下りを止めてカットできるのは、とりあえず、役員2人分の人件費2千万円で、補助金千億円以上をすぐにでも削減できるとする民主党の主張は、「数字の魔術」の絵空事に過ぎない。
以上4点だけでも14.1兆円の偽装の疑いのある財源(16.8兆円の85%)となるが、この他にも、公共事業の2割カットなど、民主党財源論は、無理な財源のオンパレードだ。
とても、まともな政党が主張すべき政策ではない。
2矛盾を露呈した「バラマキ」・「無責任」政策
さらに、民主党「マニフェスト」の全容が公表され、民主党の、「バラマキ」・「無責任」政策の矛盾も明らかになってきた。
(1)「高齢者世帯増税」を踏み台にした「子ども手当」
民主党は、中学生以下年30万円超の「子ども手当」の財源の一部を、「配偶者・扶養控除廃止」で賄うという。
これは、高齢者夫婦世帯には明かな増税で、高校生以上の子どもを持つ世帯にも、明かな増税だ。
私は、そんな受けを狙うより、現行の児童手当の拡充が筋と思うが、何故それでは不十分なのか、民主党は、政策の見栄えを良くするため、何故高齢者世帯増税などのむごい主張をするのか、彼らのマニフェストには、一切の説明がない。
(2)社保庁不良職員の公務員身分維持を謳う「マニフェスト」
民主党は、「社保庁と国税庁の統合」を公約、来年1月には非公務員化される社保庁職員の公務員身分の維持に血眼になっている。
社保庁職員が公務員として生き残れば、公務員の身分保障に守られ、年金改竄などの悪事を働いても、解雇されることはない。
私は、社保庁の不良公務員は、本来、解雇すべきと思う。
しかし、民主党は社保庁労組と結び、私たちの年金を台無しにしてきた不良公務員を生き残らせ、これからも年金を食い物にするかも知れない時限爆弾を、「マニフェスト」の中に巧妙に盛り込んだ。
(3)「戸別所得補償」と言いながらFTA締結で農村は崩壊へ
民主党は、「日米自由貿易協定の締結」をマニフェストに盛り込んだ(同時にWTO交渉早期妥結も盛り込まれた。)。
これにより、民主党政権下では、コメが自由化され、米価は1俵6千円程度(カリフォルニア米相場)となることが決定した。
これに対し、民主党が提示した補償金額は総額1兆円、これをコメ農家にだけバラマイても、農家の手取りは、1俵最大1万1500円で、昨年の手取りより千円減収、明らかな損だ。
民主党の公約は、膨大な税金を投入し、都市住民の叱責を受けながら、かつ、農村を徹底的に疲弊させるという、極めてお粗末なマニフェストと言わざるを得ない。
(4)「マニフェスト」の名に値しない安全保障政策・国家観
民主党のマニフェストのどこを読んでも、全世界から評価され、日米関係の大きな支えとなっている自衛隊の「インド洋給油活動」には触れていない。
ヤメルとか、ヤメナイとか、報道によると、結局連立相手の社民党に配慮し、ヤメルことになったとのことだが、こんな大切なことを「マニフェスト」に書かないで何のための政権公約か。
思うに、民主党の「マニフェスト」は、「バラマキ」や「政権とり」にはご執心だが、国を支える気概がない。
その証左に、民主党のマニフェストを読むと、国の姿を形作る憲法のあり方について、民主党が、護憲の党なのか、改憲の党なのか、全く判然としない。同じ政党人として嘆かわしい限りだ。
この他、高速道路の無料化など、問題点を書けばきりがないが、これくらいに止めておく。
ただ、以上の述べたように、今回、民主党が提示した、「バラマキ」・「無責任」政策は、私は極めて問題だと思う。
結果として、国民生活にとって、プラスになる代物ではない。
今回の民主党のマニフェストは、いみじくも、民主党が、「政権を担う政党」として優れているのではなく、「選挙互助会政党」として優れているだけであることを明らかにしたように思う。
私は、民主党の「マニフェスト」を読み(SFとしては面白かった)、日本の将来のためには、やはり、我々自民党が、しっかりとしなければならないということを痛感した。