史上初「ボーナス減額の臨時の人事院勧告」~与党公務員給与PTの活動

2009-5-1

与党・公務員給与PT座長として

4月30日、私が座長を務める与党・国家公務員給与検討プロジェクトチーム。
人事院から、民間における夏季一時金(ボーナス)の支給状況に関する特別調査の概要を聴き、この調査を踏まえ、夏季一時金減額のための臨時の人事院勧告を翌日にも行う方針との説明を受けた。
そして、人事院は、5月1日、国家公務員の夏季ボーナスを約1割減とする、史上初の臨時の減額勧告を行った。
私は、この2月に、自民党内に公務員給与に関する検討プロジェクトチームを立ち上げ、さらに3月には、これを与党プロジェクトチームに衣替えし、民間の動向とあわせ、国家公務員の夏季ボーナスを概算的に減額する議員立法を検討してきた。
ただ、私はもともと、本来ならば、政府が迅速に対応し、政府提案で、公務員のボーナスを減額すべきという立場だが、人事院による民間給与調査等には、やはり、手間と時間がかかるのも事実。
そこで、間に合わないときのことを考え、我々は、議員立法の準備を並行して進めてきたが、人事院も作業を急ぎ、何とか政府提案の法律提出が間に合うギリギリのタイミングでの勧告となった。
ただ、このような人事院の姿勢が、一部官公労から、「(私たちの)政治的圧力に屈した」と批判されているらしい。まず、自治労、日教組、全逓等の官公労が参加し、民主党の支持母体である連合系の公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)。

4月6日、人事院が、民間の夏季一時金(ボーナス)の特別調査を行うに当たり人事院側と交渉を持ち、その場で、
①2月下旬から与党の動きが報道されており、人事院としての独立性、第3者性はどこにあるのか。
②なぜ夏の勧告ではいけないのか。どうして今調査を行うのか。厳しさは民間の各種調査で明らかであり、人事院が調査するのは与党がいろいろ言い出したことに対応するためではないか。
③公務員給与をめぐっては、社会的に厳しい評価があるが、感情的になっている面があることは否めない。それに与党やマスコミが便乗するという動きに人事院が乗ることは危険だ。
などと質している。(公務労協HPより)

さらに、公務労協は、ボーナス減額も睨んだ特別調査の動きが、国だけでなく、地方公務員に波及することにも警戒感を示している。
すなわち、公務労協に置かれた「公務員連絡会地方公務員部会」は、4月8日、都道府県や政令指定都市等で、国における人事院と同じ役割を担う人事委員会の全国組織に対し、「人事委員会として、例年と異なる民間企業における夏季一時金に関する調査を行わないこと。」とする申し入れを行っている。

次に、日本共産党との結びつきが強いとされる全国労働組合総連合(全労連)について見てみよう。

全労連傘下の日本国家公務員労働組合総連合会(国公労連)は、4月6日、書記長名で、「民間企業の夏季一時金に関する人事院の特別調査実施にあたって」と題する談話を発表。
その中で、私たちや人事院の動向を次のように批判した。
「本日、人事院は、景気の急速な悪化の中、民間の夏季一時金が例年になく厳しい状況にあるとして、国家公務員の本年6月期の一時金減額の『暫定勧告』を念頭に、民間調査を実施する旨を表明した。
民間夏季一時金が大幅に減額される中で、政府・与党などに国家公務員の6月期一時金の減額を検討する動きがあるが、そのようなことは、労働基本権制約の代償措置を無視するかつてない暴挙であり、絶対に許すことはできない。同時に、人事院がこうした政治的な動きに迎合して特別調査を行うことも断じて認められない。」

表現のニュアンスこそ異なるが、マア、彼らにとっては、私が始めたプロジェクトチームの活動が、「暴挙」であり、「政治的圧力」と受け止められているようだ。

しかし、従来のコラムでも述べてきたように、私の主張は、決して「公務員バッシング」でもないし、「人事院軽視」、さらには、「政治的圧力」でも何でもない。

第1に、公務員の懐にとっても、「激変緩和」が必要ということ。
27日の「労務行政研究所」発表によれば、今年夏のボーナスは、上場会社で約10万円の減、冬のボーナスも同様の可能性がある。
本年の人事院勧告が、通例通り夏になされるとすれば、次の総選挙で、官公労の絶対的支持を受けた政党が多数をとり、人事院勧告を無視することとなればうやむやになる可能性もあるが、まともな政党が政権をとれば、国家公務員の冬のボーナスは、夏冬分の減額で、大変な減額となる可能性がある。
これでは公務員もかわいそう、住宅ローンの返済も滞ってしまう。
だからこそ私は、夏のボーナスからの調整を主張してきた。

第2に、この夏からやらなければ、人事院だけでなく、政治の側も、責任を果たすことができない可能性があるということ。
次の総選挙後の政治情勢がどうなっているか、私には分かりかねるが、この秋の臨時国会で、突然、「冬季のボーナスを、夏冬分を合算し大幅に減額します」といった法案を提出して、11月30日(給与法は、12月1日までに施行されなければ冬のボーナスを変更できない)までにすんなり通るだろうか。
法律が通らなければ、公務員には夏も冬も、ボーナスが満額支給されることとなる。これでは国民の納得は得られまい。

第3に、「政治的圧力」というが、人事院の機能を尊重することは必要と思うが、政治家が、公務員の給与について物を言ってはならないかのような考え方を、私は取るべきではないと思う。
私たち国会議員は、全国民の代表者であり、特に国家公務員に対しては、株主ないし使用者に当たる。
だからこそ彼らの給与をどうすべきか、賞与をどうすべきか、私たちが発言をするのは、当たり前のことと考える。
確かに4月14日の総務委員会、私は、谷人事院総裁に対し、夏季ボーナスについて、早期に臨時の人事院勧告を行うよう要請した。このときの要請は、人事院としても重く受け取っていただき、しっかりした判断を下していただいたと思うが、私には、当然のことながら、人事院に「圧力」を加えることができるような政治的な力はない。

もとより色々な考え方はあろう。
しかし、私は、国会議員や国家公務員は、民間の方々とも痛みを共有し、現下の難局に立ち向かっていく、そういった姿勢こそが、今求められているのではないかと思う。