不良公務員を排除し私達の年金を守る~日本年金機構法改正案を提出
2009-4-24
4月24日の衆議院事務総長室。私は、与党・日本年金機構改正検討プロジェクトチームの座長として、日本年金機構法改正法案を衆議院に提出した。
私が、社会保険庁不良職員の不祥事の調査に携わってから、約1年越しの仕事だ。
今回のコラムでは、この議員立法提出に至った経緯を書く。
社会保険庁で、いわゆる「ヤミ専従」、すなわち、正規の許可を受けないで労働組合活動に専従していたにもかかわらず(したがって、年金の仕事はしていない。)、偽って税金から給与を受け取っていた問題が発覚したのが、昨年の3月。
社会保険庁の発表によると、その数は、平成9年から16年にかけ、ヤミ専従をしていた労働組合幹部は、30人に上った。
私は、この問題の発覚を受け、当時の伊吹幹事長の特命で、「ヤミ専従問題」の調査に当たらせていただいてきた。
そして、調査を進めれば進めるほど、とんでもない実態が明らかになってきた。私達は、数次にわたり、調査チームのリーダーとして、社会保険事務局や社会保険事務所の職員から、直接事情聴取を行った。
昨年のコラムでも書いたので、簡単な記述に止めたいが、典型的な例では、「ヤミ専従」の労働組合幹部は、月に1度、出勤簿に押印するために出勤するだけで、他の日は労働組合活動に専従する。
そして、この労働組合幹部に対しては、管理職が給料関係の書類を偽造し、基本給だけでなく、超過勤務も支払われる。
さらに、毎年の勤務評定では、ヤミ専従の労働組合幹部に、特別昇給の対象となるA評価がつけられるという例もあった。
このように、この「ヤミ専従」の問題は、単に、違法に給料を受け取っていた労働組合幹部の問題だけでなく、違法に給料を支払ったり、超過勤務をつけたり、勤務評定を行ったり、さらに、人事配置を行うという、多くの管理職も巻き込んだ、まさに「組織ぐるみ」の違法行為であるという状況が浮き彫りになり、私自身、その病根の深さに驚いたことを覚えている。
そして、判明しているだけの組合幹部30人一人当たり、勤務懈怠を容認していた上司、給与記録を偽造していた上司、勤務評定記録を偽造していた上司など、多分10人位の管理職がかかわり、税金を詐取し、給与として、組合幹部に支払っていたことが容易に想像できた。
このような人達は、やはり年金業務から排除していかなければならない。
このため、昨年5月、私が座長になって、自民党・社会保険庁ヤミ専従問題対策プロジェクトチームを設置、これらの人達を、平成22年1月に発足する「日本年金機構」に採用しないことを内容とする日本年金機構法の改正法案の検討に入った。
このような動きを踏まえ、昨年7月、政府は、ヤミ専従だけでなく、およそ懲戒処分を受けた職員の全てを日本年金機構に採用しないことを骨子とする「基本計画」を閣議決定、私たちも、一時、法律までは必要ないのではという判断に傾きかけたのも事実だ。
しかし、昨年秋になって、2つの問題が出来する。
1つは、社会保険庁にヤル気があるのかないのか良く分からないが、いわゆるヤミ専従の問題1つを取ってみても、その調査や処分が、遅々として進まないということだ。
まあ、「ヤミ専従」の問題は、社会保険事務局や社会保険事務所の幹部も巻き込んだ組織ぐるみの犯罪的行為だから、人事・服務規律関係の調査の責任者となるはずの、都道府県社会保険事務局の総務課長自身が、ヤミ専従問題の首謀者である可能性も高く、自浄能力が期待できない事情も分からないではない。
だからかどうか分からないが、ヤミ専従問題で懲戒処分を受けたのは、現在までで、労働組合幹部は29人だが、管理職は10人と、異様に少ない。
ただ、「泥棒が泥棒を調べる」式のサボタージュで、このような給与記録の改竄行為をウヤムヤにしてしまっては、私たちの年金の改竄もウヤムヤになる可能性が高く、やはり看過することはできないと思う。
2つは、昨年秋になり、社会保険事務所ぐるみとも噂される標準報酬月額の改竄の問題が明らかになるなど、社会保険庁に、これからもどのような過去の悪事が出てくるのか、全く予想できなくなってしまったことだ。
来年1月の日本年金機構の設立までに悪事が発覚し、懲戒処分を受けた職員は、先の閣議決定により、日本年金機構に採用されることはない。
しかし、悪事を隠して採用された職員は、何のお咎めがないことにもなりかねず、著しく均衡を失することになってしまう。
このようなことを背景に、私は、昨年10月、社会保険庁ヤミ専従問題対策プロジェクトチームを再開、具体的な検討を進めてきた。
そして、本年2月、
○いわゆるヤミ専従については、ヤミ専従職員の直属の上司や給与を支払っていた上司等(事情を知っていた者に限る)も、日本年金機構職員として採用できないこととする。
○日本年金機構は、職員の採用後でも、社会保険庁在籍時に懲戒処分事由となる行為を行ったことが明らかになった場合には、その職員を解雇する。
などを内容とする法律案骨子の策定にこぎ着けた。
さらに本年3月、自公両党で、与党・日本年金機構法改正検討プロジェクトチームを設置して私が座長に就任、法律案の詰めを行った後、この日の国会提出となったわけだ。
この法律案で、「欠格事由該当職員」とされるのは、今のところ、およそ200人弱と推定され、1万7千人の社会保険庁の職員総数からすれば、「まあそんなところか」と言ったところだろうが、この200人の中には、相当の上のクラスの管理職も含まれる可能性があることから、組織の綱紀粛正には、かなりのクスリになることが期待できよう。
このように、この日、昨年来私が取り組んできた「社会保険庁の不良公務員の排除」の第1ステージをクリアしたわけだが、いよいよこの法律案の成立に向け、国会論戦に臨まなければならない。
賛成なのか、反対なのか、野党の対応は全く不明だが、年金記録問題の解決を期するためには、やはり不良公務員の排除は必要で、国民の年金を守るため、野党の方々からも当然ご賛同を得られるものと期待している。
いずれにせよ、私は、筆頭提出者として、国会の場で、しっかりとした説明を行っていきたい。