経済危機を突破するために(2)~ふるさとの復活、家族の絆を見直すとき
2009-3-9
今回のコラムは、前回に引き続き、2月22日に、私が龍ヶ崎市で行った講演「経済危機を突破するために」の後段を掲載する。(「比較的強い」はずのわが国の景気が「逆噴射」)
わが国の景気は、実は、昨年9月のリーマンショック後も、世界では、「比較的強い」と思われていました。
例えば、国際通貨基金(IMF)は、昨年11月、その前月に発表した主要国の2009年の成長率見通しを大幅に下方修正し、日米欧ともマイナス成長と予測しました。
これによると、日本はマイナス0.2%、米国はマイナス0.7%、欧州(ユーロ圏)はマイナス0.5%で、わが国は、マイナス成長とはいえ、他の先進国と比べ、金融危機の被害が最も小さいと考えられていたわけです。
これは、わが国の銀行がまだ1つも破綻していないことからも明かな日本金融システムの健全性や、世界的に見ると米国に次いで低いわが国の外需(輸出)依存率などが評価された故と思われます。
ところがそれなのに、2008年10~12月のわが国のGDPは、,年率換算で前期比12.1%減と、米国の下げ幅(6.2%)を大きく上回り、極めて悪い結果となってしまいました。
どうしてわが国の景気が、「逆噴射」してしまったのでしょうか。もとより私は経済学者ではなく、精緻、かつ、学問的な分析を行う能力を持ち合わせてはいませんが、私なりに考えられる理由を、3つほど述べてみたいと思います。
(マスコミの自虐的報道姿勢は大いにマイナス)
1つは、やはりマスコミ報道が消費や投資に与える悪影響です。
日本の外需依存率が世界的に低いにもかかわらず、今、「日本は外需(輸出)がダメになったらお終い」式の報道が蔓延しています。
また、確かに経済・雇用情勢は大変厳しいのですが、日本の失業率は、米国が8%台に乗せたのに、まだ4%台で踏ん張っています。
雇用調整助成金などの政府の施策に加え、日本には、「雇用を守りたい」と考える多くの経営者がいるからです。
ところがマスコミは、悪い点をことさら悪く報道、何か全ての経営者が派遣切りを望む悪魔で、全ての労働者が解雇の危機にさらされ、明日にでも国が滅びるかのような印象を与かねません。
「景気」の本質は、「気」と言います。ヒトが毎日このような報道にさらされれば、「今お金を使うのは愚策」という錯覚に捕われ、消費や設備投資は減退、当然、景気は急速に悪化するでしょう。
(「帰るべきふるさと」の喪失に伴う不安感の拡大)
2つは、多くの国民が、帰るべきふるさとを持っていないこと(「根無し草」=デラシネ)による不安です。
ヒトが、仕事もなく、無一文となってしまったとき、確かに今、生活保護などのセフティネットがありますし、生活の不安を解消するためには、その充実は急務でしょう。
でもそれだけで幸せでしょうか。
ヒトに、「帰るべきふるさと」があれば、我々は、おカミに頼らなくても食べていけます。これは、大きな心の支えにもなります。
実際、昭和恐慌の時、農村は、都市で大量に発生した無産者の受け皿となりました。先の大戦の危機の時、日本の子供たちは、農村に「疎開」し、来るべき日本の復活のため、英気を養いました。
ところが今、残念ながら、農産漁村は荒廃しつつあります。かつての賑わいはなく、帰りたくても帰れないのです。
そこに、金融資本主義、あるいは、加工貿易といった、今までの経済成長のためのパラダイムが崩壊してしまったわけで、国民に、漠然とした不安感が広がるのは、ある意味で当然のことでしょう。
(金融資産の7割を60歳以上が保有)
3つは、高齢化社会の進展に伴う、世代間の富の偏在です。
わが国経済復活のカギは、1500兆円という、巨大な個人金融資産をいかに消費に回せるかということであると言われています。
そして今、その資産の7割は、60歳以上が保有しています。
ところが、60歳以上の皆さんは、子供も独立していることが多く、自分の住宅を建て替えたり、自分の自動車を買い換えたりといった高額な消費へのインセンティブは、必ずしも高くありません。
ところが、子育て真っ盛りで衣食住・教育にお金が必要な子供の世代は、消費をしたくても、お金(金融資産)がありません。
それでは、いつかは相続で子供の世代に資産が移転されるわけですが、昨今の長寿化で、相続事由が発生するときは、子供の世代も60歳に近くなっていたりするため、個人金融資産が消費に回らずに、永遠に死蔵されるという循環が続いてしまいます。
GDPの6割を占める個人消費の抜本的なテコ入れを行うためには、この循環を断ち切ることが絶対に必要です。
以上3つほど理由を挙げさせていただきましたが、マスコミ報道という難物はおくとして、後ろの2つの課題については、政治は、早急に答えを出していかなければならないと思います。
その意味で、国会対策副委員長でもある私は、今は平成21年度予算の早期成立に全力を挙げるとして、並行して、追加経済対策に関する論点をしっかり整理していきたいと考えています。
(お年寄りにも若者にも魅力のある「ふるさと」づくり)
まず、魅力ある農村、「帰るべきふるさと」づくりです。
私は、昨年まで3年連続で自民党の畜産酪農対策小委員長を務め、本年2月には、農業基本政策委員会の主査に就任、いよいよ、「みずほの国」の基礎をなすコメ政策に取り組むことになりました。
私達は、農村の荒廃を食い止めなければなりません。
そのためには、「お年寄りが農業をやれば小遣いくらいは稼げる」、「若者が農業をやれば儲かる」農業を作っていくことが肝腎です。
民主党は、良く、農業者の「戸別所得補償」ということを言いますが、出てきた法案を見れば、何のことはない、国の命令に従って計画生産を行った農家(野菜・畜産を除く)には「生産コスト割れ分を補填」するというだけで、意欲的な「儲かる農業」とはほど遠い内容です。これで農村が再生するとは、とても思えません。
私は、この春までに、現在の補助金体系をしっかりと見直し、わかりやすい形で、「これなら農村に賑わいが生まれる」、「母なる田園を取り戻せる」とイメージできるようなビジョンづくりに取り組んでいきたいと思います。
(「家族の絆」を景気回復の原動力に)
加えて、1500兆円の個人金融資産を、もっと友好に使ってもらおうじゃありませんか。
実は、平成17年までは、住宅取得目的での、親の世代から子供の世代への生前贈与が、550万円まで無税(贈与税)で、しかも、相続財産には合算されませんでした。しかし、この制度は、平成18年の改正で廃止になってしまいました。
これをもっと使い勝手の良い形で復活する、例えば、3世代同居住宅だったら無税枠を大幅に拡大する、そうすれば、確実に住宅の需要は拡大し、社会保障費も節約できることになるでしょう。
いずれにせよ、私達は、こういう分かりやすい施策を打っていかなければなりません。
今私は、このような自分のオリジナルのアイディアを持って、党幹部をはじめとした関係各方面の説得に歩いています。
いずれ時期が来たら、さらに具体的にお話ししたいと思います。
本日は、まず政治が緊張感を持つこと、そして、国民と私達が一体感を持つこと、さらに、現状分析に基づく、分かりやすく、かつ、新しい発想の経済対策を打つことの必要性を述べ、そのために、今、私が取り組んでいる仕事をご報告させて頂きました。
私は、皆さんとともに、命懸けで働いて参ります。
そうすればこの茨城、日本、必ず良くなりますよ。
今後とも変わらぬご支援をお願いしつつ、マイクを、谷垣禎一先生にお譲りいたします。