公務員と民間の給与格差の早急な是正を図れ~新たなプロジェクトチームを立ち上げ
2009-2-12
2月12日の自民党本部。「総務部会・国家公務員の給与等に関する検討プロジェクトチーム」の初回会合が開かれ、私が座長に就任した。
これまでのホームページにも記したように、私は常々、民間の経済情勢、雇用情勢が厳しさを増す中、国会議員や国家公務員も、給与面でも、(もとより下げすぎる必要はないが)身を削る覚悟が必要だと訴えてきた。
そして今回、このような主張を検討する場として、正式に、今回のプロジェクトチームが立ち上がったわけだ。
加えて、昨年秋以来、景気後退は、急速なスピードで進んでいる。
このことを反映し、例えば、昨年の冬のボーナスは、労使交渉を行った662社を対象とした調査によると3.67%の減となり、その後の景気の悪化で、今期の春闘でも、さらに厳しい結果が予想されている。
このようなときに、公務員の給与が現状維持で良いのだろうか。
勿論、現行の仕組みでも、民間の給与と公務員の給与の格差の是正を行うことは全くできないわけではないが、(もとより法律が成立すればの話だが、それでも)是正には、後述のように相当な期間を要するという問題がある。
私自身は、景気回復のため、民間の人員削減や賃金カットは、必要最小限度に抑えるべきという立場だが、立場は立場として、民間の給与が急激に落ち込み、社会的な不安さえ広がっているのに、国家公務員の給与が長期間手つかずというのでは、国民の理解は得られないと思う。(官民給与格差の早急な是正の必要~短期的課題)
現在の国家公務員の給与の決め方はこうだ。
○毎年春に民間の労使交渉が妥結した後、人事院が、常勤50人以上の事業所を対象に、給与の官民格差に関する調査を行う。
○この調査結果を受け、8月中旬に、政府に対して「人事院勧告」が行われる。
○政府は、この「人事院勧告」を受け、次の年度の国家公務員の給与に関する法律を策定、国会に提出する。
まあ、通常の場合はこれでも良いのだが、民間の妥結水準が前年と比べ大きく変動した場合、「給与の官民格差」(勿論、公務員の方が高い場合もあるが、民間の方が高い場合もある。)が放置された状態が、1年間続くことになる。
特に、公務員の給与の方が著しく高い場合は、やはり問題であり、過去にも、給与に関する法律が施行された後の冬のボーナスを減額するなどの措置がとられたことがあるが、そもそも、民間の給与は春からカットされているのに、公務員給与の減額が、早くて年末からという状態は、決して好ましいとは言えまい。
しかも、今のような流動的な国会情勢の中では、給与に関する法律が、冬のボーナスの支給前に成立する確実な保証はない。
すなわち、平成14年の不況時に、国家公務員の給与については、給与に関する法律が成立した後の冬のボーナスからカットした例があるが、このときは、民主党の支持母体である官公労は反対を表明、「このような措置は違法・違憲」として訴訟を提起した。
となると、現在参議院で多数を占める民主党が、すんなりと賛成というわけにもいくまい。
もとより、綿密な調査に基づく人事院勧告とは、何らかの事後的な調整を図ることは必要だろうが、春闘の結果等を踏まえ、国家公務員の給与も、人事院勧告を先取りし、今通常国会ででも、議員立法によりあらかじめ概算的に調整し、官民格差の解消を図ることについて、制度的な検討を行うことも大切だ。
このプロジェクトチームでは、まず、このような短期的課題を取り上げていかなければならない。
(国民目線で適正な給与水準を検討~中期的課題)
ただ、問題は、今述べたような官民給与格差の早急な解消という点だけではない。
今、国の財政も厳しいが、地方の財政も非常に厳しい。
そんな中、地方自治体の中には、人事院の地方自治体版である人事委員会の勧告を受けながら、これを下回る給与水準を設定している所も相当数ある。
例えば、平成20年4月1日現在、1858の地方自治体(都道府県及び市区町村)のうち、人事委員会勧告を下回る形で、何らかの時限的な給与削減措置を実施している自治体は、1139団体と、全体の61.3%に上っている。
その多くは、管理職以上の給与カットを行っているようだが、管理職以外の全ての職員について、やむにやまれず給与カットを行っている自治体も、330団体と、全体の17.8%を占め、地方自治体の涙ぐましい努力が感じ取れる。
このように見てくると、一方で、雇用に不安を感じる民間の勤労者や、財政危機のため人事委員会勧告に満たない給与しか受けられない地方自治体の職員がいるのに、ひとり国家公務員のみが、人事院勧告を金科玉条にしていて良いのかという議論が出てくるのは当然だ。
もとより、人事院勧告制度は、公務員に労働基本権が認められていないことによる「代償措置」であり、これを無視することはなかなか難しいが、それでも、地方自治体が同じく労働基本権の認められていない地方公務員の給与を緊急避難的にカットしていることとの均衡も考えていかなければなるまい。
さらに、今後、国民とともに、消費税を含む税制の抜本改革の議論を進めるに当たっては、税金のムダ遣いの一掃が必要条件であり、そのためにも、「天下りの根絶」と並んで、「国家公務員の給与の水準の適正化」は、避けて通れない課題だ。
私は、何も公務員バッシングに加担しようとは思わない。
しかし、国民が、「公務員は良い思いをしている」という思いを持ち続けているようでは、政治や行政に対する信頼が得られようはずがない。
今後、聖域を設けることなく、国民目線に立って、国家公務員の適正な給与水準について、しっかりと検討を進め、本年予定される総選挙の前には、党としての方向付けを明確にしていきたいと思う。
(追記)
プロジェクトチームの立ち上げ後、今通常国会での議員立法を検討していることを細田博之幹事長、武部勤党改革実行本部長及び石原伸晃公務員制度改革委員長に報告した。
その際、国家公務員一般職の給与・賞与の調整について法案を提出して議論する以上、国会議員の歳費も避けて通れない課題であることについても意見を交換した。
そして、国会議員の歳費の減額調整についても、今国会で結論を得なければならないという共通認識を得たことも付言しておきたい。