社保庁不良公務員の退路を断つ~予算委員会質疑がテレビ中継
2008-10-13
10月6日、衆議院予算委員会論戦(TV中継)が始まった。現在衆議院議員当選2期の私は、保利耕輔・自民党政調会長(9期)、園田博之・自民党政調会長代理(7期)に引き続き、党を代表し、1時間の質疑の時間を頂いた。大変光栄なことだ。
さて、全閣僚出席の予算委員会、しかも、解散総選挙が「分読み」と報道される中、今回の論戦は、与野党の対立軸を明らかにするとともに、与党としても、行政の不祥事等に厳しく対処していることを明確にする上で、極めて重要だ。
自民党の質疑時間は、当初は2時間、保利政調会長が1時間、園田代理が30分、私が30分という割り振りで、10月3日には、3者で話し合って、質疑の役割分担を決めることとした。
すなわち、まず、保利政調会長が、現下の「国難」とも言える米国発の経済危機を踏まえ、今回の補正予算の必要性を訴える。
次に、園田政調会長代理が、民主党が主張する「バラ色」政策の裏付けとなる財源の論拠がほとんどないことを説明する。
そして私が、社保庁など相次ぐ行政の不祥事に対し、実は、民主党でなく、自民党こそが、実効ある対策を推進していることを強調するというわけだ。質疑時間自体は、与野党の協議で、質疑日の前々日である10月4日に、自民党全体で4時間、私の持ち時間も1時間を頂くこととなり、徹夜で、質問構成を大幅に組み替えることとなった。
本日のコラムでは、その質疑のうち、特に社会保険庁改革問題について、麻生総理や舛添厚生労働大臣とのやりとりを書く。
(出先機関の「組織的なれあい体質」)
今までのコラムでも述べてきたが、社会保険庁の出先機関(都道府県社会保険事務局及び社会保険事務所)では、年金の仕事をしないで組合活動に専従しているにもかかわらず税金から給料が支払われる「ヤミ専従」などが、長年の慣行として行われてきた。
そして、これに加え、私たちの年金を「消してしまう」、「標準報酬月額の改ざん(過少申告)」行為に、どうも、社会保険事務所の職員が、これも長年の組織的ななれあい体質の中で、積極的に関与していたらしいことも発覚した。
このような、出先機関の「組織ぐるみ」の不祥事を、今までしっかり監督できてこなかった、社会保険庁本庁、厚生労働省本省、そして政治の側の責任は、私は素直に認めるべきだと思う。
ただ、大臣や本省がいくら頭を下げても、組織的馴れ合い体質の中で、私たちの年金を無茶苦茶にし、それでも「当時はみんながやっていたから悪いこととは思わなかった」と平気でうそぶく出先機関の不良公務員(大幹部も含む。)が許されることはあってはならない。
(出先機関の責任に敢えて触れない民主党~官公労の既得権益)
ところが、今までの民主党の攻め方というのはちょっとヘンで、与党にも報告されていない出先機関の不祥事情報を、「定期的に」暴露し、その責任追及の矛先を、与党の政治家や歴代社会保険庁長官などのみに向け、出先機関の職員の責任は、一切問おうとしない。
それどころか、これは新聞記者に聞いた話だが、民主党の部門会議では、社会保険庁の不祥事について、「(懲戒処分などの)罰を与えると、社会保険庁の職員は正直に申告しないから、不祥事の全貌を明らかにするには、(悪いことをした職員に)罰を与えない方が良い」などといった意見が公然と出されているらしい。
しかも、民主党の会議で、悪事に関わったことを告白すると、なぜかその人が、マスコミから英雄視されるような、これまたヘンな傾向もある。
これでは、真面目に働いてきた社会保険庁の職員がバカを見てしまう。
やはり、社会保険庁の出先機関で、たとえ、民主党の選挙応援母体である公務員労働組合の力が強いとはいえ、そこに勤める不良公務員の責任は、しっかりと追及して、居座らせないようにしていく視点は、極めて大切だ。
(全容解明には内部調査ではダメ~舛添大臣とのやのとり)
さて、社会保険庁の不祥事について適切な対策を講じるためには、「ヤミ専従」や「標準報酬月額改ざん」問題、また、今後さらに発覚するかも知れない不祥事について、その全容を解明していくことが必要だ。
ところが、これらの問題は、積年のうみとも言うべき、「組織的なれ合い体質」の中で、まさに「長年の慣行」として行われてきたもので、社会保険庁の内部調査に任せていては、「犯罪者が犯罪者を調べる」ことになりかねない。
ところが民主党、例えば「標準報酬月額の改ざん」問題で、「全職員調査」を行わない舛添大臣は「後ろ向き」と批判している。
でも、本当にそうだろうか。
どこの世界に、「あなたは改ざんをやりましたか」と聞いて、「ハイ」と答える職員がいるか、言い訳の機会を与えるだけで、それこそ、「無罪放免にします」とでも言わない限り、内部調査には限界がある。民主党は、そのへんを狙っているのかと疑いたくもなる。
しっかりした実態解明のためには、やはり、しっかりとした外部の専門家(法律・捜査)チームを組織し、年金を「消された」被害者、さらに、その事業主と手順を踏んだ突き上げ調査を行い、積極的に改ざん行為に関わった社会保険庁職員の氏名をあぶり出していくことが大切と思う。
この日の質問で、私は、舛添大臣に対し、外部チーム編成の必要性を指摘、舛添大臣から、その発足について、明解な答弁を引き出した。
(不良公務員を居座らせるな~麻生総理とのやりとり)
ところで、社会保険庁に在籍時、懲戒処分を受けた職員については、平成21年に、新たに発足することとなる「日本年金機構」への不採用が決まっている(閣議で決定済み)。
ただ、最近、彼らが、「厚生労働省の国家公務員として居座るのでは」という疑念が、多分厚生労働省の役人をリーク元として、マスコミの間に広がっている。
国家公務員法上、勤務する組織(この場合は社会保険庁)がなくなる場合、「分限免職回避の措置」(肩たたき、民間への就職あっせん、配置転換等)を行った上で、それでも残った職員は、免職(分限免職)することができることになっている。
ただ、「回避の措置」と称して、不良公務員を、例えば厚生労働省内で簡単に「配置転換」させれば、彼らはほくそ笑むだけだ。
やはり、まずは肩たたき、そして民間への就職あっせんで、例外的に、民間も是非欲しいというような職員の中から、公務員として残す者がいるのかどうかを検討するのがスジだと思う。
この点を総理に質したが、当初の答弁は、「配置転換等の分限免職回避の措置を行うが、犯罪行為に関与したような職員は当然分限免職にする」という、極めて不十分なものだった。
この答弁案は、アトで聞くと、厚生労働省の役人が書いたとのこと。さもありなん。そもそも、犯罪行為に関与した職員は、懲戒免職にすべきだし、この答弁をそのまま許したら、たとえば、ヒトの記録をのぞき見しまくりの勤務懈怠職員などの問題職員が、まずは配置転換(公務員身分存続)の対象になってしまう。
答弁案の表現自体は結構強い調子だったのだが、内容は、今述べたように、何とも役人的な姑息なもの。私にはピンときた。
そして、我々与党議員として、緊張感を持って、国を誤らないようにするため、麻生総理に、こんな答弁をさせてはならない。
だからこそ私は、与党議員としては異例の、再質問、再々質問、再々々質問を行い、
「公務員としての配置転換は軽微な処分についての例外的な措置で、基本は分限免職」
「民間への就職あっせんをしても、民間からも魅力がないととられるような職員はやはり問題であるため、問題職員は免職処分にする」
「労働組合からの訴訟リスクは受けて立つ」
という、本来の麻生総理らしい答弁を引き出した。
これで社会保険庁の不良公務員の退路は断たれた。
国民目線に立って政治を考えていく場合、私は、与党としても、これぐらいの緊張感が必要と考えている。