「標準報酬月額」の改ざん~またまた社会保険庁の不良公務員を許すな
2008-10-8
また、社会保険庁にメガトン級の不祥事が発覚した。「標準報酬月額」の改ざん問題だ。
サラリーマンが加入する厚生年金、年金保険料は、事業者と本人(本人の分は給料から天引き)が折半し、事業者がまとめて社会保険事務所に納入する。
年金保険料は、給料の10数%と多額に上るため、事業者の中には、経営が苦しくなると、納入額を節約しようという不心得者も出て来勝ちだ。
さて、節約するにはどうしたら良いか。
分母である給料月額を、実際よりも少なく申告すれば、納めるべき年金保険料も少なくなる。
ただ、これは従業者にとっては大変迷惑な話で、給料から天引きされた年金保険料の一部は、事業者に「横領」されてしまうわけだし、年金を受給する段階になって、支給される年金額は、正規に年金保険料が支払われていた場合よりも、少なくなってしまう。
これが、いわゆる「消された年金」、あるいは、「標準報酬月額改ざん」の問題だ。
今回、この改ざん行為に、社会保険庁の職員が積極的に関与したのではという疑惑が浮上したわけだ。私は、現在、社会保険庁改革ワーキングチームの中に、「社会保険庁ヤミ専従問題対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、その座長として活動している。
そして、社会保険庁で、仕事をしないで労働組合活動をやっていただけで、税金から給料を受け取っていた、いわゆる「ヤミ専従職員」や、その上司である官僚たちについて、今後、年金業務からお引き取りを願うための法案づくりを進めてきた。
実は、この問題の独自調査を行い、法制化の作業を進めれば進めるほど、「社会保険庁はとんでもない組織で、まだまだ私たちが知らない不祥事が出てきかねない」という思いが強くなってきた。
私は、社会保険事務所の実際の担当者から、何回も、秘密会形式で、事情聴取(取り調べ?)を行った。
その結果、
○現場の「社会保険事務所」には、まず、「労働組合の幹部は仕事をしなくて良い」という完全ななれあい体質があること。
○仕事をしない職員に対して給料を支払うためには、上司は、出勤簿や給与関係の書類等を偽造しなければならないが、「長年の慣行」という認識で、彼らは、このような犯罪に近い行為を行うことを、全く悪いことと考えていない。
といった事実が明らかになってきた。
まあ、自分たちの給料の記録を改ざんして、組織ぐるみで、税金から給料を詐取する位だから、他人の記録を改ざんしたり、他人の記録について、でたらめな事務処理を行ったりするのは、彼らにとっては朝飯前なのではと思わざるを得なかった。
まだまだ不祥事が発覚しそうな予感もした。
そうしたら、案の定というべきか、今度は、社会保険庁職員が、年金保険料の徴収率を上げるため、事業者に対して、「標準報酬月額の改ざん」を教唆したのではという疑惑が浮上したわけだ。
これがどうも、社会保険事務所の中では、暗黙の了解の下に行われていたことを疑わせる報道もある。
舛添要一厚生労働大臣が、10月3日に明らかにしたところによれば、「標準報酬月額の改ざん」が疑われるような、不自然な給与の引き下げが、約100万件に上るという。
これに対しては、まず、「被害の回復」が必要で、現に年金を受給している方を手始めに、片っ端から、「報酬額の過少申告」が行われていたかどうか調査を行うことが大切だ。
そのため、高齢者の方向けには戸別に訪問して相談も必要だし、早急に、年金加入者に情報を提供し、「過少申告」があったのかどうか、確かめていただくことも大切だ。
ただ、このような努力と併せて、改ざん行為に積極的に関与した社会保険庁の職員やその上司をどうするかという問題がある。
やはり彼らには、私たちの年金業務から、おひきとりを願わなければならないと思う。
このため、10月2日の社会保険庁ヤミ専従問題対策プロジェクトチームでは、私から、ヤミ専従への関与者に加え、
○標準報酬月額等の改ざんに積極的に関与したと認められる社会保険庁の職員
○その上司であった社会保険事務所長や徴収課長経験者
を、新たに設立される日本年金機構に採用せず、採用後に関与が判明した場合は解雇することを内容とする法案を検討すべきことを提案し、了承を得た。
このように、私たちは、年金業務に携わるヒトを大幅に入れ替えることによって(民主党は入れ替えに反対)、国民の年金を守っていかなければならないと考えている。
ただ、このような欠格事由を明定したとしても、しっかりとした調査が行われなければ全く意味がない。
しかし、これらの行為は、社会保険庁の組織的ななれ合い体質の中で、長年の慣行として行われてきたと考えられるだけに、社会保険庁の内部調査によって、実態解明を行うことは到底無理だ。
そこで、この日のプロジェクトチームでは、法案の検討の提案に加え、舛添厚生労働大臣に対し、「標準報酬月額改ざん」問題の徹底究明、社会保険庁とは別個の調査チームの設置、積極的な刑事告発を求める要請書を採択した。
要請書は、10月3日、私から直接、舛添大臣に手交、大臣もこれに応え、10月6日には、早速、調査チームの発足を見た。
このような地道な努力の積み重ねで、私たちは、国民の年金を守っていく。