究極の年金保険料流用を許すな~社会保険庁「ヤミ専従」問題を追及

2008-4-18

組織ぐるみの年金保険料流用を許すな

4月14日の衆議院決算行政監視委員会。
25分間の時間をいただき、社会保険庁職員が、年金保険料から給与を受け取りながら、年金関係の業務を行わず、組合活動に専従していた、いわゆる「ヤミ専従」問題を追及した。
労働組合活動に専従する組合幹部は、本来、休職の許可が必要で、休職中の給与は、国(年金保険料)でなく、組合が支払らわなければばならない(休職期間は、退職手当の勤続年数には、不算入)。
その「ヤミ専従」が、平成16年まで、東京社会保険事務局だけで、常時10人ほどいたというから、開いた口がふさがらない。
また、調べていけば行くほど、その手口も巧妙、かつ、組織的で、「究極の年金保険料流用事件」の実態が浮き彫りになってきた。
この日の質疑では、この問題について、現在までに私がつかんだ事実を明らかにした上、刑事告発も含めた徹底究明を求めた(http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=38965&media_type=wb&lang=j&spkid=7004&time=00:08:09.6)。ヤミ専従問題が発覚した発端は、昨年10月、総務省に置かれた「年金業務・組織再生会議」が、社会保険庁に対し、職員の過去の服務規律違反(ヤミ専従等)について調査を行うよう依頼、社会保険庁が、内部調査を始め、本年3月中に取りまとめられ予定の調査の中間報告に、相当数の「ヤミ専従職員」の存在が明らかにされる見通しとなったことだ。
これと並行し、3月17日、社会保険庁の労組、「全国社会保険職員労働組合」(自治労系)が、平成16年までの7年間で、東京と大阪での「ヤミ専従」27人の存在を公表、給与約7億5千万円を返納する旨の記者会見を行い、「幕引き」を図ったフシがある。

社会保険庁の中間報告は、3月26日に取りまとめられ、ヤミ専従職員は29人と発表された。
しかし、その報告書や労組の記者会見だけでは、ヤミ専従がどういう手口で行われたのか、また、組織ぐるみだったのかどうか、皆目見当がつかない代物だ。
そこで、自民党としても、3月半ば、私も参画した調査班を設置、社会保険庁の担当課長に説明を求めたが、「調査中」などと、なかなか核心に触れる説明を得ることができなかった。
このため、かつて、詐欺事件捜査等を担当する県警捜査第2課長を務めたことのある私が司令塔となり、ヤミ専従職員の上司だった方たちを個々にお呼びし、当時の話をじっくり聴き、その聴取結果に基づき、社会保険庁に対し、関係資料の提出を求めていった。

4月14日の質疑で紹介したのは、その結果判明した、東京のある社会保険事務所における典型的なヤミ専従の手口で、具体的には次のような流れだ。

○「ヤミ専従」の組合幹部をヒマな事務所に計画的に配置
社会保険事務局(本局)総務課の人事係長は、前任からの申し継ぎにより、「ヤミ専従」の組合幹部を社会保険事務所に配置する場合は、比較的ヒマな事務所に配置する人事異動案を作成、その都度、上司である人事担当補佐や総務課長の承認を得ていたとのことだ。
人事異動内示直後、人事係長が、「ヤミ専従」配置先の社会保険事務所長に、「今度組合幹部がいくから」と電話、これが、社会保険事務所長に、「ヤミ専従」職員を押しつけるサインだったという。

○架空の出勤簿に押印、これに基づき給与・勤勉手当等を支給
「ヤミ専従」の組合幹部は、組合事務所(新宿)で常時勤務するが、月に一遍位、形式的に所属する社会保険事務所に出勤、1月分の出勤簿に、自らまとめて押印していたとのことだ。
社会保険事務所長は、この架空の出勤簿を確認(?)した上で、給与支給の手続きを行い、年金保険料から、組合幹部に対する給与や期末手当、勤勉手当等を支払っていたという。

○勤務時間外の「組合活動」には超過勤務手当を支給
「ヤミ専従」の職員が、勤務時間外に、「組合活動」を行った時間は、本局総務課の人事係長が集計して、社会保険事務所長に、「この職員は今月何時間の超過勤務」などと連絡していたとのことだ。
社会保険事務所長は、その連絡を踏まえ、社会保険事務所の予算の範囲内で、超過勤務手当(月数万円程度)を支給していたという。

○仕事をしなくても勤務評定「A」で給料アップ
仕事をしていなくても、国家公務員であるため、「ヤミ専従」組合幹部についても、毎年1回、勤務評定書を作成しなければならない(評定者は社会保険事務所長)。
「ヤミ専従」組合幹部は、東京だけで、常時10人程度いたが、そのうち数人は、勤務評定のランクが2番目に高い「A」で(「(年金係としての)仕事の結果」などもA評定)、何故か特別昇給の対象となったという。
参考だが、平成15年7月にA評定とされたある「ヤミ専従」組合幹部は、社会保険庁の仕事もしていないのに、その年の11月には、給与支給総額が4万2千円(約11%)もアップした。

これは、明かな組織ぐるみの年金保険料流用事件で、マア、怒りを通り越して呆れてくるが、組合と、社会保険事務局本局との、「ズブズブ」と言うべき癒着の構造が浮かび上がってくる。
この問題について、私は、質疑で、2つの問題点を指摘した。

1つは、社会保険庁の調査体制の問題だ。
現在、政府部内では、社会保険庁自ら調査を行っているが、私は、今のままでは、まともな結果は出てこないと思う。
組合と社会保険事務局本局との「ズブズブ」の癒着構造がある上、実際に、「ヤミ専従」などに関与していたと思われる本局幹部が調査班の中に組み入れられている。
これでは、「『泥棒』が『泥棒』を調べている」と見られても仕方がない。
2つは、この問題、単なる服務規律違反事案に止まるものではなく、明らかな刑事事件ではないかと言うことだ。
今回明らかになった「ヤミ専従」は、架空の公文書を作成・改竄し、国民の納めた年金保険料を詐取するという、極めて悪質な犯罪行為で、単に給与を返納すれば良いという性質のものではない。
彼らにとっては、自分の給与書類を改竄するくらいだから、ヒト様の給与や年金記録を改竄する位は朝飯前で、ここで処断の仕方を誤ると、私たちの年金が、未来永劫改竄される体質を温存してしまう可能性がある。

この日の質疑では、舛添大臣に、「『ブタ箱』に放り込むべきは彼らじゃないですか」と迫った上、調査体制を早急に再構築し、刑事告発も含めた厳正な対処を求め、大臣からは、前向の答弁を得た。
ただ、前向きの答弁を得たからといって、私は、この問題を、大臣や厚生労働省任せにするつもりはない。
わが党は今まで、組合こそ攻撃するものの、社会保険庁の官僚には甘い顔をしているように見られてきたが、これだけ組織ぐるみの実態が明らかになった以上、社会保険庁幹部を庇う必要は全くない。
私自身が司令塔になって、自民党として、さらに徹底した事実の解明を進め、国民の前に実態を明らかにし、社会保険庁のウミを出し切り、切除する作業を早急に進めていきたい。
この作業が、舛添大臣の取り組みと相まって、年金制度について、何とか国民の信頼をつなぎ止める一助になることを願っている。