国民に信頼される公務員制度を作らなければ~福田総理に緊急提言
2007-12-28
12月21日の内閣総理大臣官邸。私は、「公務員制度改革を断行する若手議員の会」を代表し、石田真敏、宮澤洋一衆議院議員とともに、福田康夫総理に対し緊急提言を行い、我々の公務員制度改革にかける熱い思いを伝えた。
公務員制度に対する国民の信頼は、今、大きく揺らいでいる。
かつて、我が国の近代化をリードした「官僚たち」は、ときに、「官尊民卑が鼻につく」と言われたりもした。
しかし、そうはいっても、「私利私欲がなく、かつ、とんでもなく優秀で、国家国民のことを真剣に想う」からこそ、ちょっと「いやな奴」だが、「彼らに任せれば」という安心感があり、ある意味で、尊敬される存在でもあった。
それが今はどうだろうか。
守屋前防衛次官の問題は、省庁のトップが、あそこまで「私利私欲」の固まりだったのかと、開いた口がふさがらない。
「宙に浮いた年金」問題を放置し、労働組合の言うがままの覚書を結んできた歴代社保庁長官は、お世辞にも「優秀」とは言えまい。
「薬害肝炎問題」の厚生官僚は、国家国民のことを真剣に想うというよりも、省益優先、自己保身のそしりは免れない。わが国は、かつてよく、「経済1流、政治3流」と言われた。
「経済1流」かどうかは少し疑わしいものの、政治の方は、残念ながら、多くの人に、「相変わらず3流」と思われ続けているように思う(勿論、「政治」を「少なくとも2流」位にするため、我々政治家自身は、必死に努力しなければならない。)。
ただ、たとえ「政治が3流」でも、今まで何とか国が持ちこたえ、発展してきたのは、公務員制度、すなわち、官僚システムに対する信頼感があった故という面も大きい。
その、公務員制度に対する不信がさらに増幅し、「政治」だけでなく、「行政」までもが「3流」になってしまったら、国民は、それこそ何を信じて良いのか分からなくなってしまう。
やはり、政治・行政への信頼の確立、わけても、公務員制度改革の断行が急務だ。
私たち「公務員制度改革を断行する若手議員の会」は、「私利私欲がなく、優秀で、国家国民のことを真剣に想う」公務員を育成する制度のあり方について、私の原案をたたき台に、11月来、真摯な討議を重ね、この日の総理への提言となったわけだ。
まず、公務員を「私利私欲」の世界から引き離し、その廉潔さを確保するため、私たちは、汚職事件等を犯し、水増し請求の容認など税金のムダ遣いに荷担した公務員に対し、退職金の返納に止まらず、損害賠償責任を負わせる制度の構築を提案した。
公務員版「株主代表訴訟制度」(背任事件等を犯し、会社に損失を与えた経営者に、株主が損害賠償を請求する制度)だ。
実は、現在、官製談合事件等については損害賠償の規定があるものの、国家公務員全体を規律する一般的な制度は存在しない。
「第2の守屋」を絶対に出さないためにも、厳しい制度を構築することが、国民の信頼確立のための第1歩だと思う。
次に、「優秀な人材」を確保するため、私たちは、現行のキャリア制度を廃止と新たな選抜制度の導入を提案した。
現在、採用時にⅠ種(かつての上級)試験に合格した者は、自動的に幹部候補とされ、しかも、評価は仲間うちで行われる。
キャリア制度が、「特権意識」や「なれあい=向上心の欠如」の温床と批判されるゆえんだ。
そこで、私たちは、
○「Ⅰ種試験(試験の名称は変える必要がある。)合格者」=幹部候補とするのでなく、採用後10年程度仕事をさせた時点で、その能力実績を厳しく評価、たとえ「Ⅰ種試験合格者」であっても、幹部候補として選抜するのは、例えば、そのうち6~7割程度とする。
○その一方、「Ⅰ種試験」合格以外の公務員や民間人を対象として、公平な「幹部候補登用試験」を実施、例えば、3~4割の幹部候補については外部から補充する。
制度を構築すべきとの提案を行った。
チャレンジ精神旺盛で優秀な人材を確保するためには、「特権意識」や「なれあい」を排した緊張感のある公務員制度の確立が急務だ。
さらに、「国家国民のことを真剣に想う」公務員を育てるため、私たちは、各省庁のエースを、各省庁の人事権から引き離し、内閣の人事権の下に置く「内閣官僚(仮称)」制度の創設を提案した。
現在、ある省庁で、ときに「天皇」などといわれる事務次官が出現すると、事実上は彼が人事権を持つため、平気で、自らをおびやかす有為の人材を退官させてしまったり、周囲におべっか使いばかりを配置したりする弊害が指摘されている。
これはひどい例としても、少なくとも各省庁の事務次官等は、省益でなく、国家国民全体の利益を考える存在でなければなるまい。
そこで、私たちは、公務員が、各省庁の課長クラスに達した段階で、各省庁のエースを選抜、各省庁の人事権から引き離し、省庁の垣根を越えて仕事をさせ、彼らの中から、各省庁の事務次官等を任命する制度を提案したわけだ。
この仕組みは、「省益」や「私益」のみを考えるような、悪い意味で「天皇」といわれる官僚の出現を阻止することに寄与しよう。
以上のような説明を、私から福田総理に対し、約10分程度行わせていただいたが、総理も、大変興味深く耳を傾けられておられた。
その後意見交換を行った上、総理からは、「具体的な検討を進めていただきたい」と、前向きの発言をいただいた。
来年は、損害賠償法制等々、さらに具体的な制度設計の議論に入っていくことになる。