社保庁改革待ったなし~「宙に浮いた年金問題」解決のため必須

2007-6-3

労組が延命を主張する社会保険庁

今、「宙に浮いた年金」の問題が、国民的課題となっている。
事の発端は、平成8年、当時の厚生省(菅直人大臣)が、厚生年金・共済年金・国民年金等の各制度ごとにバラバラだった年金番号(転職や結婚で、各制度を移り、複数の番号を持つケースがあり、年金番号の総数は約3億口あった。)を、1人1つの基礎年金番号に統一することを決定したこと。
併せて、厚生省は、複数の番号所有の有無を葉書等で確認する具体的方法も定めたが、説明の字も小さく、文章も専門的で、極めて分かりにくいものだったという。
このため、社会保険庁への未回答が多数発生、さらに記録の転記ミスもあり、膨大な年金番号が基礎年金番号に統合できず、この、「未確認の年金番号」が、現在、5000万口もある。
これらについては、年金額裁定時等に、「未確認の年金番号」に対応する年金加入履歴の申し出があり、記録が訂正されれば、正当な年金が支給されることとなるが、余りにも手続きが面倒、結果として、訂正を申し出ないままに年金を受給される方など、大量の未給付が発生してしまった。
まさにとんでもない話だ。○信じられない社保庁とその職員の怠慢

基礎年金番号への統合は、民間の金融機関でいう、何口かの口座を1つに統合する、「『預金口座』の名寄せ」に当たり、民間の金融機関ならば、早期に「名寄せ」を完了させなければ、担当者の責任問題だ。
ところが、社保庁は、この10年、積極的「名寄せ」に消極だったばかりか、以前徴収事務を担当していた市町村とのオンライン化の努力を怠っている間に、市町村等における納付記録の保存期限切れ廃棄を放置してしまうなど、対応はまことにお粗末なものだった。
この間の、菅直人氏をはじめとした、与野党の歴代厚生大臣、さらに、歴代社保庁長官の責任は重大だ。
そして、さらに大きな問題として公務員労組の存在がある。
彼らは、市町村とのオンライン化の促進や基礎年金番号照会業務負担の増加などに断固反対、社保庁幹部から、信じられない有利な(仕事をサボれる)労働条件の覚書を勝ち取り、公務員の身分保障を謳歌してきた。まさに「親方日の丸」の典型だ。

○未給付根絶には、「一旦全員解雇」・「まじめな職員を再雇用」の荒療治が不可欠

そして今も、社保庁の窓口には、身分保障のある公務員が居座っている。だから、年金記録の訂正を申し出た加入者があっても、職員自ら必要な調査をする労をとることなく、話も聞かず、「30年前の領収書がなければ門前払い」といった横柄がまかり通るわけだ。
これでは、国民の年金制度への不信をますます増幅させよう。
不信の払拭のため、少なくとも、基礎年金番号と未確認の年金番号の突合作業を、1年間程度で完了させることが必要だ。
私は、作業の加速のためには、社保庁の解体・改革こそが必要と考えている。
組織が今のままでは、組合もそのまま、成績主義や労働強化に反対し、自らの「無謬性(正しさ)」を信じてきた組合幹部が、贖罪(?)に熱心なはずがない。
だからこそ、与党は、今から2年半後までに、現在公務員である職員を、一旦「全員解雇」し、その上で、国民の信頼の得られるまじめな職員を、「非公務員」として「再雇用」する改革案を提出した。
私は、これにより、これからの勤務状況を精査し、例えば、
・労組が勝ち取った覚書を墨守し、45分働いた後に必ず15分休憩する職員
・自ら必要な調査もせず、申請者に30年前の領収書を求めるだけの横柄な職員
・業務負担増に断固抵抗し、年金番号の突合作業をサボる職員
などに「去っていただく」ことを明確にさせることが、これまで公務員の身分保障を謳歌し、とかく「腐っている」と悪評の高かった社保庁職員(勿論大半は真面目)にチャンスを与え、その革命的意識改革を図る唯一の方法と思う。
そして、このような「荒療治」があって初めて、年金番号の「名寄せ」の飛躍的な加速が可能になる。

なお、中には、領収書のない方や、かつて勤めていた事業所が倒産してしまった方もおられよう、そういう方については、(自らのミスの発覚を恐れる故に対応が消極的な)社保庁の職員が判断するのでなく、公平な第3者委員会が、申請者の主張が合理的かどうか、判断する仕組みも必要だ。
さらに、未給付から5年を経過してしまった方にも、正規の年金を支払うため、時効を停止するといった緊急の措置も必要で、だからこそ今、与党は、釈迦力に、救済策の具体化を進めている。

○民主党も、労組の肩を持つのでなく、是非救済策に協力を

もっとも、解せないのは民主党の主張。
安倍総理は、政府の認識の甘さへの批判を真摯に聴き、また、昨年来の民主党の追及を率直に評価、問題解決に、大きく舵を切った。
でも、民主党は、政府・与党の救済策は「付け焼き刃、選挙目当て」で、社保庁改革など言語道断、年金記録を散逸させないためには、公務員の組織を当面温存することが必要と主張される。
参院選もあり、どの党も票が欲しい。だから、支持母体の全厚生労働組合などが、「国は雇用責任を果たすべき」として、社保庁改革に徹底抗戦している以上、民主党が労組の肩を持つ事情は分かるらないでもない。
ただ、民主党が、「宙に浮いた年金問題の解決後でなければ公務員組織を変更してはならない」と主張すればするほど、多分、労組をはじめ、公務員の身分にしがみつきたい方々だけが喜び、「サボタージュをすれば公務員組織の延命ができる」という事態が起こることで、結果として、宙に浮いた年金問題の解決は、遅々として進まないということになりかねないのではないか。

だからこそ、民主党の方々には、こと、「宙に浮いた年金」の救済問題については、党利党略による反対は一旦横に置き、是非国民の立場に立ち、社保庁改革の必要性を再認識し、互いに協力しながら、国民の信頼を確保していくことを望みたいものだ。