コミュニティ基本法(仮称)の制定を目指す~自民党地方行政調査会
2007-5-27
5月23日の自民党地方行政調査会(会長・太田誠一元総務庁長官)幹事会。事務局長の私からの提案で、参院選後の臨時国会で、コミュニティ基本法(仮称)の制定を目指すことを盛り込んだ「地域社会の再生のために」という提言素案を了承。
必要な修正を施した上、5月30日の地方行政調査会に諮り、承認を得た上で、官邸や党3役に提言していくこととなった。
わが国は、もともと、町内会、自治会、集落、消防団、青少年育成協議会、スポーツ少年団、ボーイスカウトなど、それぞれの地域に根ざした、住民の発意による、自然発生的な、コミュニティ活動の伝統を持っていた。
そして、このような活動が、地域の教育力を支え、地域の絆を強固にし、公益を尊重する精神を育んできたと言っていい。
しかし今、都市・農村を問わず、地域に根ざしたコミュニティ活動は、危機に瀕している。実は戦後、例えば旧自治省、または各地方公共団体において、地域コミュニティ活動を支援する施策は、かなり行われてきた。
例えば、現在、都市・農村を問わず、「集会所」、「コミュニティーセンター」、「町内会館」、「集落センター」などの施設が存在するが、その建設費は、相当程度、公的補助により賄われている。
それにもかかわらず、今や、かつてわが国の社会が持っていた「地域の絆」の劣化は、止まるところを知らない。
かつて、都会のマンションがその典型と言われた「隣は何をする人ぞ」の世界は、今や、農村部も含め、全国的な傾向だ。
勿論理由はいくつかあろうが、2つだけ述べる。
まず、物質的に便利な世の中になったことがある。
「集会所」で宴会をやろうにも、後かたづけも面倒で、有り難がらない方も増えた。車社会になり、遠くのスーパーで買物をすれば、買物で隣人と顔を合わせることもない。葬式だって、葬儀屋に外注すれば、町内会のお世話になることはない。等々だ。
次に、いわゆる「個人主義のいきすぎ」の側面もある。
地域コミュニティ活動への積極的参加が、「当然のこと」だった時代は過去のもの、さらに、最近では、個人情報保護法のいきすぎた運用の問題もあるようだ。
例えば、個人情報保護法が厳格に運用される地域では、町内会や消防団は、誰に声をかけて新会員(団員)になってもらうのか、皆目見当がつかない場面もあるらしい。学校も、町内会に学童の「見守り」をお願いするものの、町内会への学童や不審者に関する情報の開示には消極的という、むしのいい面もあるらしい。
このような「地域の絆」の劣化に対して、政治は何をしなければならないのか。
私は、よくあるバラマキ施策で、「町内会等の運営費を、市町村が直接補助する」といった方策は、安易にとるべきではないと思う。
また、地域コミュニティ活動支援と称し、町内会等を、あたかも行政の出先機関として位置づけるのも、いかがなものかと思う。
やはり、住民の発意により、自然発生的に生まれた「地域コミュニティ活動」の自主性を、最大限尊重すべきではないか。
だから、今回の提言では、現存する地域コミュニティを、その規模の如何を問わず、「思いやりと協力」の場として位置づけ、行政や事業者が、コミュニティとしっかり「連携・協力」し、国民にも積極的な参加を呼びかけていこうという理念を、「コミュニティ基本法」(仮称)として明確にすることを第1に置いた。
予算の金額で勝負する世界ではなく、内容も、当たり前の理念を書いているだけに思われるが、実はこの立法、結構意味がある。
まず、このような立法は、個人情報保護法のいきすぎた運用の歯止めとなり得る。また、企業のCSR(企業の社会的責任)活動のメニューに加えてもらうことで、サラリーマンのコミュニティ活動への参加を促す一助にもなる。
また、法律で、行政(教育、消費者相談、消防、警察等々)と地域コミュニティとの「連携の促進」を謳うことで、従来は殆ど見られなかった、中・高校のカリキュラム内での地域コミュニティとの連携促進なども見込めようし、これらの連携・協力活動に着目し、今後、財政的な支援策を講じていくことができるようになる。
しかも、このような財政支援であれば、あくまでコミュニティの自発的活動に対する支援であり、その自主性を損なわずにすむ。
さらに、このような立法で、かつて「地縁組織」と言うと、「因襲」や「しがらみ」だらけと思われてきたイメージを払拭し、むしろ、今後の少子高齢化・人口減社会を生き抜くため、地域コミュニティの再生こそ急務というメッセージを、発信することができる。
これまでは、何かと、目新しいNPO法人の方が話題となり、「新しい時代を担う」存在としてクローズアップされてきた。
私は、NPOの重要性は十分認めるものの、NPOだけではオールマイティでないと考えている。
地域の教育力の向上、あるいは、高齢化社会における地域の相互扶助力の確保のためには、あまねく地域住民に門戸が開かれた地域コミュニティの活動の重要性が、少子高齢化・人口減社会というこれからの時代において、ますます高まってくるものと思う。
提言の内容は、この他、例えばITの活用等、さらに多岐にわたるが、いずれにせよ、昨年12月から、十数人に及ぶ有識者をお招きしてのヒアリングの成果を結実させたものだ。
今後も我々は、地域を元気づけるため、思いつきやパフォーマンスでない、実のある施策を展開していきたい。