社会的弱者に光を当てる仕事(1)~カネミ油症PTの一員として

2007-5-2

カネミ油症被害者救済PTに臨む

統一地方選も終わり、世の中はゴールデンウィーク、国会日程も立て込まず、1年のうちでも最もほっとする時期だ。
今年は、年初来、国の背骨をつくる仕事~憲法問題(国民投票法案の提出者)、国の贅肉を落とす仕事~行政改革(中央省庁改革委員会主査)、そして、国土の美しさを守る仕事~農業問題(畜産・酪農対策小委員長)、さらには、国民の命を守る仕事~北朝鮮問題(1月のAPPFへの派遣、主査として北朝鮮人権法改正に取り組む)などに、積極的にかかわらせていただいた。
いずれも、作業量や拘束時間も膨大だが、これからの国づくりに欠かせない重要な課題だ。
でも、私は、政治家の仕事として同時に重要なことは、とかく杓子定規な行政の発想を離れたよりきめ細かな視点で、社会的弱者に、暖かい目を注ぐ制度を構築していくことだと考えている。
この国会でも、2つほど、そんな仕事をすることができそうだ。

1つは、カネミ油症被害者救済の特別立法、2つは、振り込め詐欺被害者の被害回復のための特別立法だ。まず、カネミ油症の被害者救済問題だが、私は、昨年5月、約10人からなる与党プロジェクトチームで検討を行ってきた。
カネミ油症事件とは、1968年、製造過程でポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入したカネミ倉庫(北九州市)製の米ぬか油を食べた人たちが、皮膚炎や手足の痛み、内臓や神経の疾患などを訴えた食中毒事件だ。
その後、ダイオキシン類のポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)が主因とわかり、現在、認定患者は約1300人が生存している。
実は、これらの患者さんの一部は、法律上、国に対して、多額の借金を抱えており、その弁済期限が、2007年に迫っていたた。
このため、昨年来、問題が急浮上したわけだ。

さて、何故、門外漢とも思える私が、この問題にかかわることになったかというと、これは、殆ど知られていないことだが、患者さん達が抱える借金は、農林水産省畜産部に対するものだからで、その意味で、昨年・今年と、自民党の畜産酪農対策小委員長を務め、党における畜産政策の責任者である私は、まあ、門内漢の立場だ。

1968年年初、油症被害が報告される前、九州地方で、カネミ倉庫製食用油の副産物であるダーク油を配合した飼料を食べた養鶏場の鶏40万羽が、大量死する事件が発生した。
そこで、春には、農林水産省も、カネミ倉庫などへの立ち入りを行ったが、会社側から、「食用油とは無関係」と説明され、厚生省への通報まではしなかったという。
これが「行政の不作為」として問題とされ、2審は、国(農林水産省)に損害賠償を命令、農水省が、「仮払金」として、830人の患者さんに、27億円を支払った。
ただ、最高裁では、審理の経過から「農水省にそこまでの責任は問えない」という雲行きになり、患者さん側の敗訴が確実な情勢となったため、1987年、被害者が国への請求を取り下げ、その結果、「仮払金」を国に返さなければならなくなったわけだ。

ところが、患者さん方の経済状況は、推して知るべし、治療費や生活費に費消してしまった方も多く、現在、債権管理法などによる「無資力による履行免除」、「分割払い」などの適用を受け、国に返還されていない借金は、約500人、計17億円に上り、履行免除の期限が、いよいよ今年訪れる。
私もいろいろ勉強させて頂いたが、大変悲惨な状況なのは事実だ。

これらの問題には、もともと、公明党の坂口力・元厚労相らが熱心に取り組まれてきており、本当に敬意を表したいと思う。
そして、私も、与党PT立ち上げ後、現行の法制度との整合性も考えつつ、できるだけ被害者の立場に立った方向を模索してきた。
また、検討の過程では、民主党が、原因企業がはっきりしているのにもかかわらず、カネミの患者さんに国が年金的な給付をしろなどという、企業のモラルハザードを招きかねないような法案を提出したことも話題となった。

PTにおける私の意見の方向性は次の2点だ。
○まず、債務免除については、これまで20年間支払うことができなかったという事情を考えると、個別具体的に「無資力」を見るのでなく、行政の杓子定規的発想を離れ、「患者さんの殆どが無資力」と構成し、幅広く認めてあげても良いのではないかということ。
○次に、患者さんへの給付に関しては、民主党案は論外として、これもギリギリの措置として、国として、単年度事業ではあるが、例えば、「カネミの記憶・記録」といった成果物を作成し、これに対する取材協力謝金を、患者さん方に支給することを考えても良いのではないかということ。

そして、おおむね私の意見が反映され、本年4月10日には、
○殆どの患者さんに対する国の債権放棄(既に弁済済み方との均衡を考慮し、年収千万円以上の方には、やはり借金を弁済して頂く。)
○平成20年度に調査事業を実施し、認定患者全てに1人20万円の協力金を支給。
という処理案をPTで決定、私も、小杉隆・河村建夫と2代の座長を通じた古参(?)のPTメンバーとして、記者会見に参加した。
勿論、今国会中での立法を目指すことになる。

後で聞くと、記者会見の模様は、関東では報じられなかったが、患者さんを多く抱える九州の地方紙には、私の写真付で、大々的に報じられたとのことだ(まあ、票にならない仕事も大切。)。