安倍総理への質疑が全国中継(2)~生活問題に真剣に取り組む
2007-3-9
数年前、わが国は、大きな雇用不安にあえいでいた。平成12年12月、4.9%と過去最悪水準に突入した完全失業率は、その後も、5%を超える水準で推移した。
これが、昨今の景気回復で、4.0%程度まで回復、ただ一方で、「雇用が増えても給与が上がらない」ことも指摘されている。
何故給与が上がらないのだろう。
民主党などは、大企業の労働分配率が下がっていることを挙げ、組合員の賃上げを主張した上、格差解消のため、最低賃金のほぼ倍増(時給千円)を求めている。
しかし、このような政策は、恵まれた大企業の労働者をさらに優遇しすることとなり、雇用増加に貢献しながら、利益を上げることができない中小企業を倒産に追い込む危険性も孕んでいる。
これでは、かえって格差は拡大してしまうような気がする。この数年の雇用拡大に最も貢献したのが、中小・中堅企業だ。
平成12年と17年を比較すると、資本金1億円未満の中小・中堅企業は、180万人の雇用を増やしているのに対し、資本金1億円以上の大企業は、リストラなどで、逆に、130万人の雇用を減らしている(大企業の労働分配率が低下するのは、ある意味で当然のことではある。)。
さらに、一人当たりの給与は、大企業が横這いないし微減なのに対し、中小・中堅企業は1割強の減、それでも、中小・中堅企業の労働分配率は増加傾向にある。
この数字は、中小・中堅企業が、自分の利益を削って、雇用の拡大に貢献しているものの、利益が薄いため、高い給与を払いたくても払えないことを意味しているのではないか。
この状況で、最低賃金倍増を導入したらどうなるか。
ただでさえ利益を減らしている中小企業は、倒産するか、労働者を解雇するか、いずれかを迫られることになる。
これでは格差は大幅に拡大する。結果として、表面的なウケを狙った無責任な主張と言われても仕方あるまい。
今我々がなすべきことは、大企業の労働分配率上昇を最優先にして、民主党の支持母体である大企業の組合員のための仕事をすることではない。
むしろ、大企業の利益を、下請けである中小・中堅企業に還元することを促したり、中小・中堅企業に対する優遇税制を充実させることで、これらの企業に儲けてもらい、もっと高い給与で、多くの雇用を吸収するよう促していくことだと思う。
予算委の質疑では、政府・与党が、まさにこのような観点から各種の施策を展開していることを、国民の皆さんに理解していただきたく、質問をさせていただいた。
次に、地域間格差という意味では、都市と農村の格差の問題も重要だ。
今、自民党では、今後の農業の担い手となる若い人に、賃貸借などで、一定規模の農地を集積し、集中的な支援を行う施策を打ち出している。
これを、民主党などは、「弱者の切り捨て」と批判、民主党の方では、逆に、(財源をどこからとってくるのか分からないが)、220万ある農家一戸当たり年50万円をバラマクとか、15兆円(現在は国費で年間3兆円)を農政につぎこむだとか、絵に描いたあめ玉を宣伝している。
でも、今自民党が育てようとしている「担い手」は、せいぜい数㌶の農地を耕し、年間400~500万円程度以上の農業収入を得ようというまじめな農家だ。収入からしても、これが「強者」であるはずがない。
しかも、今、農村は高齢化している。1㌶程度の農地で、65歳ではまだ若く、70歳位の方が耕地を支えている。でも、後継者はいない。実際、年収100万円にも満たない事業に魅力を感じろと言っても無理な話だ。
各戸平等に金をバラマクことは、今の高齢者農業を固定化することにはなる。ただ、高齢者の足腰が立たなくなってしてしまったら、10年、20年して、誰が農地を耕すのか。農地は荒地になる。
そして、一旦荒れた農地は、簡単には回復しない。
環境の問題、食糧安全保障の問題だけでなく、農村自体が崩壊してしまう。
そして、民主党の主張を実行すれば、多分、将来の農地、そして、農村は、荒れ放題になり、長期的には、地域間格差を拡大させてしまうことになろう。
将来を見据えた農村の活性化のためには、農地を守るチャレンジ精神のある人、他産業に従事しつつも、農村に住みながら地域活動に貢献する人、都市と農村の2地域居住をライフスタイルとする人などを織り込んだきめ細かな政策こそが大切で、バラマキ政策では、何も解決できないことを肝に銘ずるべきだ。
予算委の質疑では、まさに我々が取り組んでいる農政改革こそが、農村の活性化への王道であることを訴えさせていただいた。
自民党は、決して強者の味方ではない。
我々は、まさに、「頑張る普通の人」を応援している。
3月9日の安倍総理と我が同期生との昼食懇談会の席上、私は、次のような発言をさせていただいた。
「私の申し上げたいことは、先の予算委員会質疑で尽きています。
自民党は、頑張る中小企業、頑張る地方自治体、頑張る農家を応援しているんだ、これが生活格差の問題に対処する王道だということを、是非分かりやすく、国民に説明して下さい。
我々は、『一生懸命に生きる人たち』の味方なんだということを、国民の心に響くように、総理ご自身の言葉で訴えて下さい。」