安倍総理への質疑が全国にテレビ中継(1)~日本は格差社会か

2007-3-8

安倍総理への質疑の模様

2月28日、朝の党の勉強会を終え、議員会館の事務所に出勤すると、机の上に、国会対策委員会から、「明日の予算委員会での質問項目を提出して下さい」という依頼文書がのっていた。
狐につままれたようで、聞いてみると、27日の夜に、3月1日に地域間格差等について、予算委員会の集中審議(総理出席、TV中継有)の開会が急きょ決まり、本人の知らないところで、私が、自民党を代表しての質疑者に指名されていたとのことだ。
与党議員にとっては滅多に巡ってこないチャンスで、有り難くお受けしたものの、その日はそれからが大変。
何せ、私自身予算委員でもないし、心の準備もできていない。
しかも、与党質疑者の場合、質問項目は昼まで、質問内容は夕方までに通告しなければならないという不文律があり(野党が深夜に通告してくる場合が多いため、事務方の負担を考えてのこと)、準備の時間は極めて少ない。
まあ、自民党も人使いが荒い。2月28日は、3月2日から始まる党の畜産・酪農対策小委員会(私が委員長)の準備を翌日に延ばし、資料収集と原稿作成に没頭、さらにパネルを用意するなどてんてこまい。
そして、ようやく3月1日の予算委質疑となったわけだ(内容は次をクリックhttp://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=33798&media_type=wb&lang=j&spkid=7004&time=00:08:00.5。
もっとも、「格差問題」については、私は、昨年の予算委でも小泉総理(当時)に質問し(TVなし)、また、韓国マスコミの取材を受けるなど、自分なりの意見を持っている。
その意見を、この日は、ぶつけさせていただいた。

質疑の冒頭は、まず現状認識。
私自身、現在のわが国における「格差」は、右肩上がり経済の高度成長期よりは、拡大していると思う。
しかし、高度成長期は、結果の平等を実現する「幸福なシステム」を持っていたのも事実だ。
まず、民間の社会において、1940年以降確立したと言われる年功序列・終身雇用の雇用慣行が広くいきわたった。
このため、よく働く若い世代には働きに比して低い給与を、物入りの要る中高年には比較的高い給与を支払うことで、世代間の結果の平等を実現できた。
しかし、若年層の減少、経済のグローバル化は、こうした慣行の継続を不可能にしてしまった。

次に、伸び続ける税収を背景とした潤沢な財政が地方への重点予算配分・公共投資を可能にした。
ただ、現在の国・地方通じての財政難を考えると、こうした方向性をとることはできない。

だから、当時ほど、結果の平等が実現できていないことは、残念ながら、ある意味で歴史的な必然という面もあり、この数年の構造改革の結果で格差が拡大したというのは、いささか暴論のように思う。

勿論、障害者等の物理的弱者のことを念頭に置くなど、適切なセフティネットは、しっかりと確立しなければならない。
その上で、我々政治家の責任として、より多くの人たちに、より多くのチャンスを提供することで、国民に夢を与え、格差の問題に取り組んでいかなければならないのではなかろうか。
日本人は、おしなべて優秀な民族だ。
みんながチャンスをいかして頑張れば、必ず未来は開けると思う。
それを、「日本は世界で最も格差のある国」(某党代表の言)と認識し、結果の平等ばかりをいいつのれば、かえって、頑張る人は報われなくなってしまう。
さらに、そもそも、日本人って、そんなに弱々しい民族だったのかなという気になってしまう。某党の代表は、日本人のことをバカにしているととられても仕方がないのではないか。
質疑では、ここらへんの認識を安倍総理に質した。

さて、先にも紹介したが、世間には、格差の問題を、小泉構造改革の負の遺産であるかのように喧伝する向きもある。
また、現在の経済情勢を、「実感なき景気回復」と揶揄する向きもある。
しかし、確実に言えることは、5~6年前は、財政出動をし続けても、失業率5%を超えるなど、「実感を伴う景気後退」だった。
これを、今は、誰もが(儲けている人は「自分が儲けてる」とは言わない。)、「実感なき景気回復」と言えるようになったわけだ。
私は、その間の、「官に頼らなくても、日本人は大丈夫だよ」と言い続けた小泉構造改革の成果を、決して低く評価すべきでないと考えている。
そして、格差の問題に対処する王道は、現在の経済を、地方においても、中小企業においても、「実感を伴う景気回復」にしていくことだ。
頑張る普通の人が報われるようにしていくことだ。
そのための道筋として、野党の皆さんが言うように、改革を止めて結果の平等・財政出動路線に先祖帰りする方が良いのか、あるいは、これまでの構造改革路線を加速する方が良いのか、私には、結論は明らかだと思う。
この日の質疑は、このような観点から、格差問題に真剣に対処するための各論に入っていった。