「脱北者チーム」と「国際連携チーム」の役割~特命委の下で再始動
2006-11-14
11月14日、これまで自民党幹事長の下にあった「拉致問題対策本部」が、政調会長のもとに置かれる「拉致問題対策特命委員会」に衣替えし、初の会合が開かれた。そして、これまで拉致問題対策本部に設置されていた3つのチーム(「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」、「脱北者に関する検討チーム」、「国際連携推進チーム」)は、そのまま存続することになった。
このうち、「脱北者に関する検討チーム」と「国際連携推進チーム」は、それぞれ、この7月に新たに設けられたもので、私は、「脱北者に関する検討チーム」の事務局長に就いている。
この日の会合では、山本一太・対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム座長から、同チームにおける今後の検討内容についての説明があり、私からも、「脱北者に関する検討チーム」及び「国際連携推進チーム」が発足した経緯や、今後の課題について発言させていただいた。新たなチームを創設は、今年6月の、韓国への逢沢ミッション(当時拉致問題対策本部長)が契機だ。
それまで私は、「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」の一員、とりわけ、「北朝鮮人権法作成チーム主査」として、「北朝鮮人権侵害問題対処法」の策定に携わってきた。
逢沢ミッションの目的は、この法律の成立が確実になったのを受け、韓国の閣僚や与野党議員に、わが国の立場に理解を求め、協力関係を築こうとするもので、その経緯は、過去のコラムでも述べた。
そして、実は、そのミッションの過程で、恥ずかしながら、「目からうろこ」のような発見が2つあった。
1つは、「脱北者」の問題。
実は、韓国のウリ党政権は、北朝鮮による韓国人の拉致、いわゆる「拉北者問題」を、公式には認めていない。
しかし、与野党とも、「脱北者」を生み出す北朝鮮国内の人権侵害問題(収容所問題等)や、脱出先の中国国内で、「脱北者」が受けている人権侵害(強制送還、人身売買等)を極めて憂慮している。
「脱北者」というと、我々は、北朝鮮から逃れて日本に来た人達を、日本で保護するか否かという観点から考え勝ちだが、積極受け入れ策をとるか否かにかかわらず、脱北者に絡む人権問題をクローズアップすることで、北朝鮮や中国に対する国際世論を喚起していくことは十分可能だ。
2つは、「国際連携」の問題。
拉致問題の解決のためには、国際世論を喚起し、北朝鮮に対する国際的圧力を強めていくことが必須だ。
韓国の与野党議員との会談の中で、我々は、「脱北者問題」などを議題としつつ、すでに、国際的な議員の結びつきがある(わが国からは民主党のみが参加していた)ことを初めて知った。
わが国の与党も、このような議員外交の機会に積極的に関与し、国際社会の目を、「脱北者」だけでなく、「拉致問題」に向けていくことが必要だ。
そして、日本への帰途、逢沢・対策本部長、宮路・事務総長と私が協議し、拉致対策本部に、これまでの「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」に加え、「脱北者に関する検討チーム」と、「国際連携推進チーム」を加えることとなり、その後の総会で正式の了承を得た。
私自身は、「シミュレーチョンチーム」を抜け、「脱北者チーム」の事務局長、「国際連携チーム」のメンバーとなることになった。
さて、「国際連携チーム」の一員としての私の活動だが、既に過去のコラムでも述べたように、8月には、モンゴルでの「北朝鮮人権問題国際議連総会」に出席したほか、10月には、列国議会同盟(IPU)のジュネーブ総会で、北朝鮮の拉致問題や核問題の深刻さを訴えてきた。
今後は、組織的な国際連携をどのように進めるかということが課題となる。
加えて、よりホットな作業が必要なのは、「脱北者チーム」だ。
今も述べたように、まず、人道・人権上の観点から、例えば、北に渡った日本人妻が置かれている人権状況、中国における脱北者の人権侵害状況についてヒアリングを行うなどにより、北朝鮮に対する圧力となるような、実効的提言につなげていかなければならない。
ただ、それだけでなく、北朝鮮による核実験と、国際社会による制裁という現実を受け、我々としても、現在の北朝鮮の体制が相当程度不安定化したときに、新聞報道によれば、一説に数十万ともいわれる脱北者が、難民と称して、大挙して日本に押し寄せてくる事態も想定しなければならない(この場合、難民条約上、わが国にも一定の保護措置が義務づけられる。)。
今という平時だからこそ、不測の場面で、拉致問題が風化し、わが国の国民の安全・安心が侵されることのないよう、法制・予算面でも、必要な検討を進めねばならないわけだ。
このように、「脱北者チーム」には、①人権面と②危機管理面の両面からの検討課題がある。
この日の会議では、以上述べたような経緯と、今後の課題について発言・報告したが、私自身は、少なくとも、検討は急を要すると考えており、余り時を置かずに、冷静な検討を進めていきたい。