憲法改正国民投票法案が実質審議入り~与野党の調整が本格化へ

2006-10-28

NHKで全国中継された答弁風景

10月26日の衆議院憲法調査特別委員会。
NHKの国会中継も入り、先の通常国会から継続審議となっている「憲法改正国民投票法案」が実質審議入りした。
予算委員会が開かれる衆議院の第1委員会室で、私も、提出者の1人として、いつもは閣僚が座る席(私の席は、麻生外務大臣の席)から、答弁に立つことになった。
この日の私の答弁の分担は、おおむね、「憲法改正国民投票法制が、何故いま必要か。」ということと、「どのようにして国民に対する周知を図っていくか」などという点。
民主党の古川元久議員、共産党の笠井亮議員、社民党の辻元清美議員、国民新党の糸川正晃議員の質問に答えた。憲法は、いうまでもなく、国会でなく、国民が作るものだ。
だから、憲法改正手続きについての法制度は、本来は、1946年の現行憲法公布時に整備しておくべき性質のものだったと思う。
しかし、当時及びその後の状況を考えると、1955年の自民党の綱領こそ、「憲法の改正」と謳ってはいたものの、国会で、例えば閣僚が、「憲法はこういう点がおかしい」などと言おうものなら、それこそ首がとぶという時代が、長く続いてきた。
「憲法のあり方」について触れることが、国会においても、あるいは、国民の間でも、ある意味でタブー視されてきたわけだ。
だから、例えば30~40年前に、内閣が、「憲法改正国民投票法」を議論しようと表明したら、それこそ、その内閣が吹っ飛ぶぐらいの騒ぎになっていたのではないか。

ところが、この日、私の答弁の前に、自民、公明、民主3党の法案提出者(自公と民主は、内容は近似しているが、別の法案を提出。)から、3党の憲法改正についての考え方が開陳された。
自民党は、昨年11月に憲法改正草案も発表しているように、「改憲」の立場。
公明党は、現行憲法の意義を評価し、これを基礎として必要な条項を加えるという「加憲」の立場。
民主党は、かつては、「創憲」という、新たな時代に即応した憲法を主張してきたが、この日は、(党内事情もあるのか、)憲法を改正するか否か、時間をかけて議論していこうという、現時点では「論憲」の立場を表明。

テレビ中継も入った委員会の場で、個人的見解としてではなく、憲法について、公党の公式見解として、これだけ踏み込んだ考え方が表明されたのは、戦後初めてのことで、まさに大きな様変わりだ。
この背景には、憲法を変えようとする側からも、また、憲法を守ろうとする側からも、最近ようやく、タブー視することなく、憲法について論議を深る雰囲気が醸成されてきたことがあると思う。
そして、このことには、1995年の自民党新綱領での「論憲」路線の採用、2000年の衆参両院の憲法調査会の設置が、大きな役割を果たしたと考えられるが、いずれにせよ、このような雰囲気が生まれてきたのは、ほんのこの10年程度の話だ。

でも、このような雰囲気ができてきた以上、立法府は早急に動かなければならない。
私は、答弁の中で、このように、憲法について論議を深めようという国民の声が、改憲の側からも、護憲の側からも、近年高まりを見せている中で、その国民の議論の結果をいかす仕組み、いいかえれば、国民の英知を具現化する仕組みを、我々国会議員が、今用意することができなかったら、それは立法府として、怠慢のそしりを免れないと、主張させていただいた。
また、この国民投票法案について、私は、共産党の笠井議員の質問に対し、改憲のための手続法である一方、護憲のための手続法でもあると申し上げた。
すなわち、もしも国会が誤った改憲の方向性を打ち出せば、国民がこれをストップさせることができるからだ。
だからこそ、この手続きは、特定の憲法改正案とは切り離して、技術的に、公正中立な制度としていくことが重要だ。
だから私はこの日、できれば与野党一致して作っていきたいという意見を述べさせていただいた。

実際、6月のコラムでも述べたが、自公案と民主党案、中身の差違はそれほど大きくない。
ところが、民主党が小沢代表体制になり、「与党案には抵抗する」場面が多くなり、この数ヶ月、国民投票法案も店晒しの状態が続いてきた。
しかし、「憲法について議論を深める」ことを主張する民主党が、国民主権の具体化方策である国民投票法をお蔵入りさせてしまうのは、まさに自己矛盾だ。
法案提出者である枝野憲法調査会長など、民主党の心ある方々も、勿論そのことに気付いていた。そして、ここにきて、民主党内でも、やっと時計の針が回り始めた。
期待するところ大だ。

この日の委員会では、憲法改正国民投票法に関する小委員会の設置が議決され、私も委員に指名された。
この小委員会が、今後の与野党案すりあわせの舞台となる。
勿論、共産・社民の委員にも入っていただいたが、精力的に議論を進め、国民主権の具現化のための、いい制度を作っていきたい。