国際テロ時代における核の脅威~極めて危険な北朝鮮の核実験
2006-10-10
10月9日、北朝鮮当局は、国際社会の警告を無視して、核実験を実施した旨の声明を発表した。翌日の10日には衆議院本会議で北朝鮮非難決議を採択。
今後、国連安全保障理事会における制裁決議の協議、わが国独自の経済制裁の実施などが、緊急の政治日程に上ってくることになる。
さて、国際テロ時代において、テロ支援国が、新たな核保有国となることは、極めて危険なことだ。
だから、国会議員も、1人1人が、口だけでなく、できることをやっていくことが大切だ。
私自身も、10月14日からジュネーブで開催される列国議会同盟(IPU)総会に出席することとなっているので、宣言起草委員会などの場で、各国の議員に対し、今回の核実験の危険性と、わが国の立場を説明し、その理解を求めていきたいと考えている。
そこで、今日は、改めて、北朝鮮の核実験の危険性について述べるとともに、わが国や国際社会がとるべき態度について書いてみたい。国際社会は、従来から、核兵器などの大量破壊兵器の拡散防止に、熱心に取り組んできた。
これは、人類が、自ら発明した兵器により、絶滅の危険にさらされていることを、多くの人々が自覚したからにほかならない。
ただ、米露英仏中の5カ国が核保有国となった後も、インドとパキスタンが核実験を実施したり、イスラエルや南アフリカが、核を保有しているのではないかと疑われるなど、核不拡散体制は、時に脅威にさらされてきた。
ただ、核の拡散が、人類に対する重大な脅威であることは勿論だが、兵器が主権国家の厳重な管理下にある時代は、核兵器などの大量破壊兵器が現実に使用される蓋然性は、必ずしも高くはなかった。
主権国家である以上、その兵器を使用した場合の利害得失について、一定の理性が期待されるからだ。
しかし、2001年の9.11の世界同時多発テロは、国家ではないテロ組織・犯罪組織が、核兵器などの大量破壊兵器を使用する意思と能力を有していることを証明してしまった。
これらのテロ組織・犯罪組織は、いわゆる「自爆テロ」も恐れない。だから、彼らに核兵器などがわたった場合には、実際に核兵器等が使用される可能性は、極めて高いと言わざるを得ない。
だから、9.11事件後、米国は、核保有国であり、かつ、イスラム国家であるパキスタンを、テロ組織側につかせないようにするため、「石器時代に戻すことになる」式の恫喝を織り交ぜ、あらゆる手段を講じてきたわけだ。
さて、今回の北朝鮮だが、従来から、中東諸国に対するミサイル技術の供与が取りざたされてきたのに加え、最近では、国際的な麻薬取引に手を染めている可能性も指摘されている。
そして、アルカイダ、タリバンなどのテロ組織(一面では国際犯罪組織でもある。)の主要な資金源は国際的麻薬取引と考えられており、これまで、北朝鮮との接触がなかったとは言い切れない。
このように考えると、外貨不足に汲々としている現在の北朝鮮が核保有国となることは、北東アジアのみならず、全世界の人類にとって、重大な脅威だ。
このような脅威に対してとるべき施策は、2つある。
1つは、わが国をはじめ、国際社会が断固たる態度をとり、北朝鮮に、今回のような暴挙が、割に合わないことを、はっきりと自覚させることだ。
わが国が独自の制裁を検討するのは勿論としても、テロとの戦争を戦い、かつ、北朝鮮を「テロ支援国家」と認定している米国が、北朝鮮の核保有国入りを容認できるはずがない。
多分、予想よりも、相当強い態度で臨むことになるのではないか。
加えて、国際社会が足並みをそろえるためには、中国や韓国の対応が鍵になってくる。
列国議会同盟の場でも、中国、韓国はじめアジアの国会議員と懇談する機会がセットされている。このような機会を捉え、私は、わが国の立場と、北朝鮮に対する圧力の必要性を説いてくることとしたい。
2つは、国内的に、テロ組織及び国際組織犯罪への対策を急ぐことだ。
このような事態に至った上は、今後、わが国としても、北朝鮮を通じて、核兵器だけでなく、他の大量破壊兵器が、テロ組織や国際犯罪組織にわたるという最悪自体も想定しつつ、国内的対策を講じていかなければなるまい。
だから、出入国管理体制の強化、国際組織犯罪防止条約の早期批准など、国際テロや国際組織犯罪に強い社会を作っていくことが急務だ。
その意味で、国際組織犯罪防止条約批准の要件である「共謀罪」の導入についても、運用に誤りなきよう必要な修正を施し、早期の成立を図るべきだ。
野党4党のように、修正協議をはなから拒否し、「共謀罪の新設自体に反対」する態度は、国際テロ・国際組織犯罪の矛先を、わが国に向けやすくし、国民の安全を損なうものであると言われても仕方があるまい。
今述べたように、北朝鮮の核実験は、まさに現実の脅威だ。
だからこそ、わが国の国民の安全を守るため、国会議員の立場として、できることは全てやっていきたい。