政府資産圧縮・政労交渉はオールマイティではない~行革推進法で質疑

2006-4-9

4月6日の行革特委で質問に立つ

現在審議中の行政改革推進法は、今国会の最重要法案だ。
中身は、特別会計改革、政府資産改革など盛りだくさんで、マスコミからは、「小泉改革の総仕上げ」とも言われている。
もっとも、この法案自体は大いに評価できるものの、私は、それだけでは決してオールマイティではないことを、国民に対してきちんと説明していく必要はあると考えている。
最近の報道を見ると、ときに、「数百兆円に上る政府資産を圧縮すれば、財政赤字は大幅減少する」とか、「公務員の身分保障を撤廃して労働基本権を与えれば公務員給与も民間並になる」などの、ちょっと甘めの、誤解とも思える見出しが踊ることがある。
でも、改革は、そんな生やさしいものではない。
このような誤解を排し、国民に対し、今後も、「痛みを伴う構造改革の継続が必要」という、ある意味で辛口のメッセージを発信していくことが、政治家の責任として大切と思う。
4月6日の衆院・行政改革特別委員会で、私は、党の行政改革本部幹事・公務員給与断行議連の事務局長の立場から、いくつか注文をつけた。昭和50年代半ば、中曽根康弘行政管理庁長官、渡辺美智雄大蔵大臣の下、「増税なき財政再建路線」が進められた。
しかし、今回の行政改革に、当時と同じ結果を求めるとなると、方向性を見誤ることになる。
当時とは、財政赤字の状況も、人口の高齢化の状況も、桁違いに異なるからだ。

政府資産の圧縮といっても、国土・環境保全を考えると、例えば、国有林や河川、堤防、ダムを売却できるわけでもない。
だから、敢えて増税とは言わないまでも、行政改革と並行して、給付と負担の均衡の問題という、ときに痛みを伴う辛口の課題について、引き続き、国民とともに考えていくことが重要だ。
私は、与謝野経済財政担当大臣に対する質疑で、国民に対し、正しいメッセージを発信すべきことをお願いした。
与謝野大臣からも、「今回の行政改革の主眼は、あくまで社会システムの効率化に資するもの、財政再建の問題が解決できると考えるとしたら、大きな誤解」であると、明確に答えていただいた。

公務員制度改革についても、実は誤解がある。
「お役人天国」の話題が、週刊誌に必ず取り上げられるなど、今、公務員定数・公務員給与を含む総人件費は、国民の厳しい目にさらされている。
だから、「公務員の給与・定数決定も民間並に厳しく律すべき。」という意見に、私も賛成だ。
ただ、ときにその具体策として出てくる、「公務員の身分保障を撤廃するかわりに、現在著しく制限されている公務員の労働基本権(スト権など)を与え、給与は民間のように労使協議で決めればいい」という議論、すなわち、「身分保障と労働基本権のバーター論」には、首をひねらざるを得ない。

まず、わが国の公務員の労働基本権は、諸外国と比べて、「著しく制限されている」わけではない。実際、諸外国も、公務員については、一定の制限を課している。
また、公務員法と労働基準法を比較すると、「公務員の身分保障」は、「民間労働者の身分保障」と比べ、著しく手厚いわけではない。だから、公務員の身分保障を撤廃しても、簡単にクビを切れるわけでもなく、実態はそれほど変わらない。
私は、公務員に身分保障があると信じられてきたのは、民間労働者と公務員との労働法上の位置付けの違いからというよりも、「国や自治体は倒産しない」という理由によるところが大きかったと考えている。

したがって、今、「公務員の身分保障」を撤廃し、「労働基本権(スト権など)」を付与したら、どういうことが起きるか。
倒産のない会社での労使協議は、一般に労働者の方が強くなる。場合によっては、「お役人天国」を加速させるだけではないか。

公務員の総人件費改革に関連し、労働基本権の問題についても話し合う政府側と連合との政労交渉が、連休明けからも本格化することが予想される中、私は、この点について、中馬行政改革担当大臣に念を押し、中馬大臣には、このような「バーター論」には乗らない旨、明確に答えていただいた。

今回の行政改革推進法、「構造改革の総仕上げ」と言うよりは、むしろ、「構造改革の一里塚」と言う方が正しいように思う。
今後も、気を引き締めて、歳出・歳入の一体的改革などに取り組まねばなるまい。