安定的政権交代のための憲法改正~国民が「民主党政権」に感じたであろう不安

2005-9-26

9月11日の総選挙は、ふたを開けてみれば与党が衆院の3分の2を超える圧勝。

H17.2.憲法調査会での意見表明

だから、当選御礼のあいさつで地元を歩いていても、私が、憲法改正論議に熱心に取り組んでいたことを知っている人からは、必ず、「いよいよ憲法改正が現実のものになりましたね」と声をかけられる。
そして、9月22日の衆議院本会議で、国民投票法案の審議などのため、衆院に憲法調査特別委員会を設置することが議決され、私も、その委員に任命された。
今回の与党の圧勝は、何か、政権交代の可能性を吹き飛ばしてしまったかのように見えるが、私自身は、実は、将来安定的な政権交代を実現するためにも、憲法改正が必要という立場だ。
その意味で、民主党には、是非積極的に参加して欲しいと思う。国民にとって安心できる政権交代を実現するためには、本気で政権を担おうという政党が、憲法について異なった見解を持っているという状況は、極めて不幸なことである。

自社2大政党の55年体制当時、わが国が自衛のための軍事力を持つことができるかどうか、自社両党の考えは、180度異なっていた。
そして、もしもこの時点で政権交代が起こっていたら、わが国の安全保障政策は大きく変更され、国際的な信用を大きく損なうこととなったであろう。
もっとも、その反面、当時の国民には、戦後憲法の「平和主義」の基本を変えないで欲しいという意識もあった。
だからこそ、有権者は、社会党を始めとした野党に、憲法改正を阻止できる3分の1以上の議席を与えつつ、自民党から他党への政権交代には、常にNOの答えを出し続けてきた。

時代は変わって、前々回の平成15年総選挙で明確になったのは、自民・民主の2大政党化への流れだ。

私自身、現職議員として、各論の政策面でも、民主党の政権担当能力の無さを実感することが多かったが、憲法論議との絡みでは、当選直後の自衛隊のイラク派遣問題に、安定的政権交代の基盤が整備されていないと感じたことを覚えている。

自衛隊のイラク派遣については、本来、国の戦略論として、どのような形態での派遣が真に国益にかなうものか、冷静に判断し、政策論をつめていくことが必要だ。
ところが、当時の管民主党代表は、衆院本会議で、自衛隊をイラクに派遣するためには、「まず憲法を改正することが必要」と主張してしまった。
そもそも、法律論の問題としては、「自衛隊」を「合憲」と解する以上は、「戦争状態」が終結した地域に対する、「占領軍」とは関係のない「人道支援」のための派遣に、「違憲」の要素はない。
勿論、これらの要件を満たしているのか否か、個々の事実関係については検証は必要だ。

しかし、当時の民主党の議論は、「テロが現に発生した場所は戦争状態→自衛隊派遣は違憲」の一点張りで、委員会で議論を聞いていても、その論法では、「地下鉄サリン事件が発生した東京は戦争地域なのか」という感想を持ったほどだ。
当時の民主党は、多分党内に根強かった自衛隊違憲論におもんばかって、自衛隊派遣が、「違憲か否か」を論点としたのだろうと思うが、これでは、冷静な戦略論を戦わせることは難しいし、国民も、そのへんの危うさを、民主党に対して感じてきたのではないか。
この冬にも予想される派遣期間の延長問題については、是非実質的な議論をお願いしたいものだ。

このように、今回の与党の圧勝は、国民の、政権交代に対する不安を示したものともいえる。これは、裏を返せば、わが国の政治状況の未成熟さを示したということもでき、政治の世界に身を置く者として、手放しで喜んではいられない。
だからこそ、今回の選挙結果を契機に、与党だけでなく、野党においても、安定的政権交代を準備するための憲法改正論議を前向きに進めることが大切なことと思う。

なお、この論点については、本年2月24日の衆議院憲法調査会で、私から、次のような発言を行っているので、参考までに付け加えておく。

「しかし、二十一世紀において、自民党が未来永劫政権の座にいられる保証はどこにもありません。
いつ何どき、従来の政府解釈、すなわち憲法の法的安定性、継続性を無視して、自衛隊の装備も徴兵も集団的自衛権も集団的安全保障も無制限で認められるという勢力が政権につき、一挙に憲法解釈を変えてしまう危険性も否定できません。

私は、戦後六十年、日本国民は、日本人としての意識の中で、民主主義と平和主義という原理を既にしっかりとした内在的規範として持っていると思います。
今こそ、我々の子孫のためにも私たちの進むべき方向性を具体的な合意を持って示していくことが必要です。

私は、国家に、近世中国北宋末期の新法党と旧法党の党争に見られたような対立による停滞でなく、前進と活力を生み出し得る安定的政権交代のためにも、殊に平和主義などの項で、何とでも読める現行憲法のあいまいさを払拭することが必須と考えています。」