政府は直ちに震災対策の追加補正予算編成に着手せよ~危機克服のための通年国会の必要性

2011-5-23

「震災対策の遅れが歯がゆい」という地域の声は大きい

3月11日の東日本大震災は、極めて多くの犠牲者を生むとともに、広範な地域に甚大な被害をもたらした。
私たちは、犠牲者の方々への深い哀悼の意と被災者の方々への心からのお見舞いの気持ちを胸に抱きつつ、この国難に立ち向かっていかなければならない。
このような観点から、野党である自民党も復旧対策補正予算の審議に協力、震災7週間後の5月2日、当面の復旧費用4兆153億円を計上した平成23年度第一次補正予算の成立を見た。
原発事故の初動対応のお粗末や、義援金が被災者に支給されず未だプールされたままという問題を見ても、菅民主党政権の震災対応は極めてお粗末で、私自身、即刻退陣を求めたい気持ちが強い。
ただ、それはそれとして、被災者支援は待ったなしで、1次補正成立後、政府が矢継ぎ早に必要な予算を編成し、国会審議を求めるのならば、たとえ頭が菅総理であっても、自民党は審議に協力すべきではないかと、私は考えていた。
しかし、5月2日以降、政府の追加予算対策は梨のつぶて。
聞くところによると、民主党は、6月22日までの国会会期を延長せず、閉会にしてしまう意向ということだ。

これでは、震災からの復興はますます遅れてしまう。
日々地域の方々の声を聞きながら、歯がゆい思いがつのるばかりだ。○まだまだ不十分な第一次補正予算
まず指摘しなければならないのは、5月2日に成立した第一次補正予算は、総額4兆円に上るものの、当面の対策を羅列したもので、緊急対策としても、極めて不十分なものということだ。
以下、3つほど指摘してみたい。
(1)緊急に必要な政策が抜けている
第一次補正予算では、津波等によるガレキ等の撤去費用3500億円を計上したが、例えば、福島県浜通りなどの放射能に汚染されたガレキについては触れられていない。
また、道路、港湾等のインフラ復旧費として1兆円を計上したが、例えば、第三セクターである三陸鉄道の復旧については手つかずとなっている。
他にも例を挙げればきりがないが、このように、まだまだ手つかずの緊急対策は多い。
(2)特別立法を伴わない予算は絵に描いた餅に終わる恐れ
例えば、ガレキの撤去については、当初、自治体負担を伴わない国直轄事業とするため、廃棄物処理法の改正も検討されたようだが、結局見送られ、補助事業として地方負担が残ることになった。
補助事業の場合、当然のことながら、自治体予算からの持ち出しが必要だ。
しかし、今は非常時。平時の補助率よりも、地方負担を極小化しなければならないところだが、これには法律の裏付けが必要だ。ところが、今の国会は、ようやく復興基本法の議論に入ったところで、きめ細かな議論に欠けている。
これでは、折角国の予算が成立しても、東北には財政力の弱い自治体も多く、復旧事業が進まない恐れが出てきてしまう。
(3)予算規模に制約された窮屈な予算
今回の予算は、新たな国債の発行を嫌ったため、年金財政から数兆円持ち出すなど、もともと、財源に限りがある中で編成されたものだ。
だから、(1)に述べたように、なかなか必要な対策に手が回らないし、(2)に述べたように、国の負担割合をアップすることも難しくなってしまう。
だからこそ、本来は、この窮屈な予算を通した後も、国会での議論を進め、必要な対策の網羅・国と地方の負担区分の工夫・財源の確保に、全ての国会議員が知恵を絞っていかなければならないはずだ。

○国会を閉会して第二次補正を先延ばしするのは背信行為
それにもかかわらず、現政権は、国会を6月22日の会期末で閉じる意向らしい。
しかも、第二次補正予算案の提出時期については、5月16日の衆議院予算委員会で、菅総理が、「被災地の自治体、県などが7月、8月に再建復興計画を出す。そういった意見も踏まえながら考える必要がある。拙速に過ぎるのは気を付けなければならない。」と述べ、8月以降への先送りを示唆した。
何を寝ぼけたことを言っているのか。
自治体の意見を聞かずとも、被災地の方々が、今すぐにでも手当して欲しいと思っている事業は山ほどあるはずだ。
岩手県の方々で、三陸鉄道の復旧を望まない方が1人でもいるのか。放射能に汚染されたガレキの処理を望まない方が1人でもいるのか。300万円まで支給される被災者支援金の支給(現在基金不足)を望まれない被災者の方が1人でもいるのか。
もしも財源や執行方法等の調整が必要なら、調整が整ったものから、順次補正予算案をとりまとめ、提出していけば良いではないか。改めて言う。国会を閉会して第二次補正を先延ばししようというのは、被災者の方をはじめとした国民に対する背信行為そのものだ。

○通年国会で政策をつくり、情報を公にすべき
実際のところ、補正予算は、何回編成しても良い。
今求められているのは。官僚や電力会社に対し、思いつきで変な指示を乱発するよりも、何か思いついたら、官僚らにも予算的な措置や具体的な政策を検討させ、多くの国民が「真に必要」と思うこのできる予算を組み、野党にも審議への協力を求めることではないか。
もとより国会審議の段階では、政府の原発事故や災害対応の問題点や、政策の必要性が俎上に上り、検証作業が行われることとなろう。
ただ、政府がそれをいやがっていては、正しい情報は国民に伝わることはない。
今年のような非常時は、まさに通年国会とし、スピード感をもって、夜間でも土日でも審議をすることで、政策をつくり、国民に対し、情報を公にしていくべきではないか。
菅政権が、今後も国会の早期閉会にこだわることがあるとしたら、原発や震災対応における総理自身の決定的なミスが公になるの恐れているのではと、勘ぐられても仕方あるまい。